近視(myopia)とは,無限遠方からきた平行光線が,無調節状態で網膜前方へ焦点を結ぶ状態である。凹レンズで矯正でき,遠視や乱視とともに屈折異常のひとつである。屈折度数が−0.5 diopter(D)以上−3.0D未満を弱度,−3.0D以上−6.0D未満を中等度,−6.0D以上を強度近視と分類する。症状としては,弱度近視では遠見の視力障害,強度近視では,近見の視力障害がこれに加わる。
強度分類とは別に,単純近視と病的近視に分類することがある。単純近視とは,眼鏡等による屈折矯正で良好な矯正視力が得られるもので,いわゆる学童近視が含まれる。病的近視とは,強度近視を主体とし,網脈絡膜の萎縮性変化や後部ぶどう腫を伴うものを指す。また,調節緊張や斜位近視など,一時的に近視状態を示すものを偽近視と呼ぶ。
診断には,視力検査,自覚的屈折検査(レンズ交換法,赤緑試験),他覚的屈折検査(自動レフラクトメータ,検影法)が行われる。正確な診断や度数の評価には,調節麻痺薬点眼後に屈折検査を行う場合がある。
近視は完全矯正が原則であるが,老視や眼内レンズ挿入眼などで調節力の低下がみられる症例や近見時に内斜位を示す症例では,低矯正眼鏡,累進屈折力眼鏡,多焦点コンタクトレンズなどを考慮する。
学童に近視眼鏡を処方する際,眼鏡を低矯正で処方することによって近視進行を遅らせることができるというエビデンスはない。裸眼視力または眼鏡視力が0.7(教室の後ろの席では黒板の文字が見えにくい)を下回れば,眼鏡処方または眼鏡再作(度数アップ)を考慮すべきであろう。
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