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【識者の眼】「『非日常』から『新しい日常』への移行」関なおみ

No.5164 (2023年04月15日発行) P.57

関なおみ (東京都特別区保健所感染症対策課長、医師)

登録日: 2023-04-03

最終更新日: 2023-04-03

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「ロジスティクス(logistics)」という単語には、「商品の原材料調達・生産・販売までの過程で発生する物流を管理・合理化すること」という意味のほかに、「戦場の最前線に武器・食料などの物資を供給するための戦略のこと」という意味もある。

この単語を二つ目の意味として初めて聞いたのは、医学生の頃に参加した、当時設立されたばかりの「国境なき医師団 日本事務局(Medecins Sans Frontieres Japan Association)」が開催した勉強会であり、その次は、臨床研修修了後に参加した、JICA国際緊急援助隊医療チームの導入研修だった。つまり、これまで「ロジスティクス」とは、非日常である緊急時の医療救護派遣などにおいて必須とされる部門として認識されていたのである。

感染症との闘いにおいて、我々医師をはじめとした専門職は、前線に立つ兵士と同等の、いわゆる戦闘要員であるが、その本来の能力を最大限に生かして闘うためには、専門職とは別に、物品や予算、システムを管理するロジスティクス部門が必須である。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応を戦争に例えるのはウクライナのことを思うと不謹慎かもしれないが、兵士の数より戦略が重要という意味において、元の軍事的意味合いに近くなるのはいたしかたない。

特に今年の春は、5月8日からのCOVID-19の5類定点把握対象疾患移行も踏まえ、今後の組織体制を検討していかなければならず、その上で、このロジスティクス部門の人員や体制をどう強化するのかが非常に重要である。医療機関においてもこの機会にぜひ、医師・看護師だけでなく、事務職員の採用・増員や、インターネット環境の整備、システム導入といった、ロジスティクス強化もご検討いただきたい。

また、これまで管理職として実感したのは、人事の原則は「定期的な人員の交代」ということだ。これは職員や組織を属人的な問題で潰さないために必須である。専門職であれ、事務職であれどんなに惜しいと思う職員でも一定期間で異動させるのが管理職の役割である。業務分担が可能な規模の組織であれば、ぜひ職員のローテーションをご検討いただきたい。

ある意味、誰もが待ち望んだ5類定点化ではあるが、3年にも及ぶ非日常から新しい日常への体制移行に不安が尽きない状況は何処も同じだ。それを押し殺し、今後の新興・再興感染症発生にも耐えうる弾力性のある組織体制にしていくことが求められている。

関なおみ(東京都特別区保健所感染症対策課長、医師)[新型コロナウイルス感染症][5類移行][体制整備]

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