Clostridioides difficile(C. difficile)は,1935年に健常新生児の糞便から分離されたのが最初で,培養が困難であったことから“difficile”と名づけられた。1978年に抗菌薬関連の偽膜性大腸炎の原因菌として報告され,現在でも抗菌薬関連腸炎の原因のひとつとされる。治療は原因抗菌薬の中止であるが,必要に応じて非重症例にはメトロニダゾール,重症例にはバンコマイシン,再発リスクが高い場合はフィダキソマイシンが投与される。
1日3回以上の下痢が存在(軟便または水様便)し,便からのトキシン産生C. difficileの検出,もしくは便中C. difficileトキシンが陽性である場合,もしくは内視鏡あるいは病理組織による偽膜が証明された場合に診断される。便中C. difficileトキシンの迅速検査法としては,イムノクロマトグラフィー法が一般的であるが,感度は75~95%と幅があることが知られている。近年では,毒素遺伝子を検出する遺伝子検査であるNAAT(nucleic acid amplification test)も保険適用となり,より精度の高い診断が可能となっている。しかしながら,下痢症状が乏しい場合等においては過剰な診断につながることがあるため,いずれの検査を用いた場合においても,臨床症状をふまえた診断が重要である。
なお,重症例では,稀にほとんど下痢を認めずイレウスや腸管拡張のみの症状を呈する場合があることに留意する。
まずは原因・リスクとなっている薬剤の投与中止を検討する。C. difficile感染症(CDI)のリスク因子としては,高齢,基礎疾患,抗菌薬の使用,経鼻経管栄養の使用,制酸薬の使用等が挙げられるが,可能なものは中止する。
次にCDIの重症度を評価する。重症度に関する定義は多々あるが,国内外で統一された重症度分類はない。米国感染症学会(IDSA)が提唱するガイドラインでは,白血球数1万5000/μL以上および血清クレアチニン値1.5mg/dL以上(もしくは通常より50%以上の上昇)の場合に重症と判断される。一方,Zarらの基準では,いくつかの臨床項目をスコアリングして重症度が評価される。
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