アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は,主に喘息患者の気道内にアスペルギルス・フミガーツスなどの真菌が定着し,それに対するⅠ型,Ⅲ型アレルギー反応が生じることで,気道内に好酸球に富む粘稠な粘液栓が形成され,発症する。
喘息の有無,血液検査(末梢血好酸球数,血清総IgE値),血清学的検査(真菌に対する特異的IgE/IgG/沈降抗体),微生物学的検査(真菌培養,気道粘液栓内の糸状菌菌糸の有無),画像診断(中枢性気管支拡張,粘液栓,高輝度粘液栓)を組み合わせた2019年の診断基準1)2)により,高い精度で診断可能である。原因真菌としてはアスペルギルス属のほかにスエヒロタケなどの真正担子菌(キノコ類)も含まれるが,カンジダなど酵母状真菌が検出されても原因真菌とは判断しない。
ABPMの標準治療は経口ステロイドもしくはアゾール系経口抗真菌薬の単剤投与,または両者の併用療法である。喘息症状の悪化を伴う場合には経口ステロイドを優先的に選択するが,併存症や薬剤相互作用などの患者背景も考慮して抗真菌薬を選択する。抗真菌薬による治療効果発現は経口ステロイド治療と比しやや遅いが,副作用は低いとされる。気道内粘液栓による不可逆的な気道構造改変(気管支拡張)を避けるために,症状に乏しくとも治療を検討する。いずれの薬剤を用いても治療終了後の再燃率は40~50%と高率である。再燃を繰り返す症例では,重症喘息に対する抗体医薬(抗IgE抗体,抗IL-5/IL-5受容体α鎖抗体,抗IL-4受容体α鎖抗体)や少量長期マクロライド療法などが有効であったとの報告もあり,考慮する。
治療薬の減量あるいは終了によって高頻度に再燃するため,経口ステロイド,抗真菌薬いずれも長期投与を余儀なくされることが多い。長期投与した場合,経口ステロイドでは一般的な副作用(骨粗鬆症など)に加え,合併する気管支拡張により緑膿菌や非結核性抗酸菌を原因とする慢性下気道感染症を合併するリスクが高いこと,抗真菌薬ではアゾール耐性真菌の出現リスクがあることに注意する。抗体医薬についてはABPMに対する保険適用はない。
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