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全身性エリテマトーデス[私の治療]

No.5145 (2022年12月03日発行) P.44

田中良哉 (産業医科大学医学部第1内科学講座教授)

登録日: 2022-12-03

最終更新日: 2022-11-30

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  • 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は,妊娠可能年齢の女性に好発する全身性自己免疫疾患である。皮膚,関節,腎臓,漿膜,脳神経,血管など全身の多臓器を侵し,多彩な臨床症候を呈する。男女比は1:9~10で,患者数は約10万人と推定される。

    ▶診断のポイント

    診断には,2019年の欧州/米国リウマチ学会SLE分類基準が使用される。

    【症状】

    発熱,倦怠感,多関節炎などの全身症状で初発することが多い。顔面蝶型紅斑などの特徴的な皮膚所見を約80%に伴い,紫外線曝露を契機に増悪する。また,多臓器病変を併発し,腎病変(ループス腎炎),中枢神経病変を高頻度に伴う。

    【検査所見】

    持続性蛋白尿や細胞性円柱を高頻度に伴う。腎生検組織所見が重要である。汎血球減少,赤沈亢進,低補体血症を呈する。抗核抗体は全例で陽性,抗Sm抗体は約25%,抗ds-DNA抗体は約70%で陽性であり,抗体価は疾患活動性と関連する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療目標は全身症状や臓器障害のない寛解である。治療の必要性,副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬や生物学的製剤の適応や初期治療量は,疾患活動性,臓器障害,病型分類,感染症や心疾患等の合併症等を総合評価して決定する。疾患活動性は,英国SLE評価指数(British Isles Lupus Assessment Group:BILAG)やSLE疾患活動性指数(SLE disease activity index:SLEDAI)などの総合的指標で評価される。

    ヒドロキシクロロキンは標準的基本薬として,禁忌事項を有さないすべてのSLE患者に推奨される。疾患活動性や重症臓器病変があれば,大量副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬の併用療法を速やかに開始し,治療抵抗性症例には生物学的製剤を使用する。寛解導入後には,合併症と薬剤の副作用を最小限にして臓器障害と再燃を回避する。寛解維持後には副腎皮質ステロイドを休薬し,QOLを最適にして長期生存をめざす1)2)

    【治療上の一般的注意&禁忌】

    注意:ネフローゼ症候群,急性糸球体腎炎,腎不全,中枢神経障害,肺胞出血,肺高血圧症,著明な血小板減少症,全身性血管炎・血栓症などを重症臓器障害と判定する。ループス腎炎はISN/RPS(International Society of Nephrology/Renal Pathology Society)組織分類でⅢ~Ⅴ型を重症と分類する。臓器病変を認めない症例では,ヒドロキシクロロキン単剤,または対症療法や無治療での経過観察も可能である。

    禁忌:臨床症候がなく,検査値が安定している患者には,治療は推奨されない。免疫抑制薬は,妊婦には禁忌であることが多い。

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