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大動脈炎症候群(高安動脈炎)[私の治療]

No.5143 (2022年11月19日発行) P.42

石井智徳 (東北大学病院臨床研究推進センター特任教授)

登録日: 2022-11-18

最終更新日: 2022-11-16

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  • 高安動脈炎は,特発性大型血管炎に分類される炎症性疾患である。大動脈およびその一次分枝に血管の狭窄や拡張が起こり,多彩な症状が出現する。潰瘍性大腸炎の合併例が多いことが知られている。近年,トシリズマブが承認され治療戦略が大きく変化している。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    炎症による全身症状が出現する。こうした全身症状には,発熱,関節痛など,病的状態を疑いやすい症状がある一方で,だるさ,めまい,ふらつき,胸部違和感など,不定愁訴とされ見落とされやすい症状もある。炎症がある血管に,局所的な疼痛などが生じることがあり,頸部血管痛などはその代表である。

    初期から起こる症状に加え,血管病変が進行すると血管の狭窄あるいは拡張による症状が出現してくる。幅広い血管に狭窄が生じ,病変の生じた血管の支配領域により異なる臨床症状が発生するため,多彩な症状が出現する。最も頻度が高い症状は上肢乏血症状で,血圧左右差,脈なし,冷感,また上肢の挙上困難もありうる。頸部血管の症状として,上方視での脳虚血症状が特徴的とされている。拡張性病変としては,予後に大きな影響を与える大動脈弁閉鎖不全症が最も重要で,心不全などの症状も出現しうる。

    【検査所見】

    非特異的な血沈亢進,CRP陽性などの炎症所見,さらに慢性炎症による貧血などの所見も出現するが,疾患特異的な尿,血液所見はなく,診断にはCT,MRI,エコー,PETなどの画像診断が必須である。重要な所見は,血管の狭窄,拡張などの変形および動脈壁の肥厚である。特に初期の変形前の壁病変検出は重要で,造影効果が動脈壁で認められ,重要なポイントとなる。PETでは活動期に動脈壁への取り込みが認められ,炎症性疾患では唯一保険診療が認められている。

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