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感染対策における医療環境の役割とは?

No.5141 (2022年11月05日発行) P.48

岡本 耕 (東京大学医学部附属病院感染症内科特任講師)

金森 肇 (東北大学大学院医学系研究科総合感染症学分野講師)

登録日: 2022-11-02

最終更新日: 2022-11-01

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  • 感染対策における医療環境の役割についてご教示下さい。
    東北大学・金森 肇先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    岡本 耕 東京大学医学部附属病院感染症内科特任講師


    【回答】

    【汚染された医療環境が微生物伝播や医療関連感染に重要な役割を担っている】

    医療施設において様々な環境表面,医療器具に関連した院内感染事例が世界中で生じていることから,感染対策における医療環境の役割がよりいっそう重要視されています1)2)

    多剤耐性菌は長期間,環境表面で生存することが可能であり,病室の汚染された環境表面は多剤耐性菌の伝播の媒介物となります。最近の研究では,微生物および有機物が不均一に蓄積した乾燥バイオフィルムが医療環境表面に存在することが報告されており3),環境表面の清掃・消毒を困難にさせる1つの要因である可能性が指摘されています。

    また,薬剤耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,バンコマイシン耐性腸球菌,多剤耐性アシネトバクターなど)に感染,あるいは保菌していた患者の病室に新たな患者が入院する場合,薬剤耐性菌を獲得するリスクが増加することが知られています。水回りの環境や水を使用する器具の汚染は微生物の温床となり,シンクや排水管に関連した多剤耐性菌のアウトブレイクも生じています4)。感染あるいは保菌した患者から医療者の手を介して別の患者に微生物が伝播するだけでなく,環境表面や医療器具の汚染を介して,直接的あるいは間接的に微生物が伝播することがあります。このように,汚染された医療環境が患者への微生物伝播に非常に重要な役割を担っていると言えます。

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