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【識者の眼】「二つの国葬とAdvance care planning」松村真司

No.5140 (2022年10月29日発行) P.52

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2022-10-07

最終更新日: 2022-10-07

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安倍晋三元首相の国葬を巡り、様々な立場からの議論が行われている。議論の焦点は、国葬の法的根拠や公費支出の是非に当てられることが多いようである。この問題について唯一の正答があるわけではないし、意見には一定の幅があるだろう。それぞれの立場から活発な議論が行われることは、今後同様な事態が起こったときのことを思えば健全なことだと考える。

一方、この国葬に関しては9月19日に執り行われた英国女王エリザベス二世の国葬との対比も行われた。英国女王は96歳というかなりの高齢での逝去ということもあり、ある程度事前の予測のもと準備がなされていたのだろう。葬儀の最後に流されたバグパイプによる哀悼曲の演奏は、女王自身の希望によるものだったとの報道もあるように、入念な準備が行われ、その計画の立案の一部には女王自身の生前の意思が反映されていたとのことである1)

エリザベス英国女王の葬儀では、国葬が執り行われた後に、家族による礼拝が行われ、その後埋葬されたとのことである。一方、わが国の国葬は、既に私的な葬儀が終わったあとに行われたこともあり、その対比についても考えさせられるところである。安倍元首相の場合、突然の逝去であったという、最期に至る状況が異なっているものの、改めて行われた大規模な国葬は、一体誰のため、何のために行われたのか。これからも議論が行われるだろう。しかし、個人的には、この国葬に、どの程度本人、そして近しい家族の意思が反映されていたのかが気になるところである。

2022年4月に行われた診療報酬改定において、在宅療養支援診療所の施設基準の見直しが行われ、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(2018年3月改訂)」等の内容をふまえた「適切な意思決定支援にかかる指針」の作成が義務付けられた2)。この9月30日をもって経過措置が終わり、すべての在宅療養支援診療所においてこの指針作成を行ったという届出が改めて必要となっている。

この機会に、この指針がめざすものは何か、そしてその背景にあるAdvance care planningの概念、そしてそれに伴う臨床における実践について、改めて考えを深めたい。

【文献】

1)BBCニュース:エリザベス英女王の葬儀, 本人のリクエストも反映.

   https://www.bbc.com/japanese/62922970

2)厚生労働省保険局医療課:令和4年度診療報酬改定の概要 在宅.

   https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000920430.pdf

松村真司(松村医院院長)[在宅療養支援診療所]

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