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【識者の眼】「児童思春期精神科専門管理加算の見直し」本田秀夫

No.5109 (2022年03月26日発行) P.57

本田秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)

登録日: 2022-03-02

最終更新日: 2022-03-02

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2022年度診療報酬改定に関する中央社会保険医療協議会答申資料が発表された。この中で、通院・在宅精神療法の児童思春期精神科専門管理加算の見直しが行われた。

現行の診療報酬では、特定機能病院または児童・思春期精神科入院医療管理料に係る届出を行った保険医療機関等において、イ)16歳未満の患者に通院・在宅精神療法を行った場合は初診から2年以内は500点、ロ)20歳未満の患者に60分以上の通院・在宅精神療法を行った場合は初診から3カ月以内の期間に行った場合に1回に限り1200点の加算がつけられている。今回の改定では、イ)の部分に、初診から2年を超えた場合に300点の加算をつけることが追加された。

今回の改定は、児童青年精神科の外来診療において、2年以上診療が継続しているケースが多いという実態をふまえたものである。筆者の大学病院の外来も、二次的な問題の重畳した神経発達症(発達障害)、不適切な養育による情緒の問題、不登校に伴う不安・抑うつなどの占める割合が多いため、2年以内で治療が終結するほうが珍しい。診察では、子どもの面接と行動観察だけでなく、保護者との面接や学校などの関連機関との連絡調整も行うので、初診では1時間以上、再診でも20〜30分を要する。約2/3は薬物療法を行っておらず、通院・在宅精神療法のみである。

これまでは、初診後2年を過ぎると児童思春期精神科専門管理加算がつかなくなるため、再診料と通院精神療法(30分以上400点、30分未満330点)のみとなっていた。今回の改定によって病院の不採算部門の汚名が返上できるわけではないが、一歩前進であることは確かである。

とはいえ、今も全国的に深刻な医師不足が続く児童青年精神科領域の医師確保のためには、さらなる検討が必要と考える。特定機能病院等以外の多くの医療機関は児童思春期精神科専門管理加算の対象にそもそもなっていない。この場合、20歳未満の患者に対して350点の加算が認められているが、期間は初診から1年以内である。また、小児科医も神経発達症や情緒の問題への診療を行っており、小児特定疾患カウンセリング料(医師による場合は月の1回目500点、2回目400点、公認心理師による場合は200点)が算定されるが、これは初診後2年以内である。これらに対する変更は、今回の改定には含められなかった。

ニーズに対応した児童青年精神科の医療体制を整備していくためには、今後も診療報酬の見直しを進めていくことが必要である。

本田秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)[診療報酬改定][児童思春期精神科]

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