マラリアはハマダラカによって媒介される原虫症である。日本国内からは1960年代に排除され,現在は海外旅行者に年間50人前後の患者届出(4類感染症)がある。その約80%がサハラ以南のアフリカで感染した熱帯熱マラリアである。適切な治療が行われない場合,発症から3日程度で意識障害や急性腎障害等が出現することがある。特に高齢者と妊婦で致死率が高い。
アフリカ中央部や西部等の流行地に居住・滞在歴のある発熱患者にはマラリアを常に疑う。流行地を離れて1カ月以内の発症,血液検査で血小板減少やビリルビン高値を認める場合,蓋然性が高い。高熱や頭痛を認めるほか,身体所見に特徴的なものはない。末梢血塗抹標本の鏡検により,マラリア原虫の存在を証明し,原虫種を同定する。
抗マラリア薬を速やかに投与することが治療の要点である。熱帯熱マラリアで臓器障害を認める場合には,全身管理を適切に行う必要がある。
日本国内で承認されている抗マラリア薬は,いずれも内服薬である。このため,患者に臓器障害の徴候を認める,患者が嘔吐して内服できない場合には,注射薬を保管する熱帯病治療薬研究班の薬剤使用機関(表)に患者を紹介することが望ましい。
原虫種を同定して,三日熱および卵形マラリアと診断した場合には,再発防止のため,肝内の休眠原虫に対する治療(根治療法)を急性期治療に続いて行う。
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