インクレチンの生理機能を解明するなど糖尿病治療における長年の功績が認められ、昨年、米国内分泌学会“International Excellence in Endocrinology Award”をアジア人で初めて受賞した。2009年以降、インクレチン関連薬が相次いで上市されるなど、2型糖尿病治療を大きく進歩させる牽引役を担ってきたが、その道のりは平坦ではなかった。
1967年に京大卒業後は、学園紛争の影響で大学が封鎖され尼崎病院塚口分院に勤務した。日本の糖尿病患者が80万人に達したとの当時の新聞記事から、将来は患者が爆発的に増加するだろうと糖尿病研究に取り組むことを決意。同院では患者のインスリンやホルモン測定、糖負荷試験を行い、「内科の先生の協力で莫大なデータ収集ができました」。解析の結果、日本人のインスリン分泌能が白人の半分しかなく、肥満になる前でも糖尿病を発症する事実を突き止めた。また糖を経口投与した場合、静脈投与よりインスリンが多く分泌することも判明。これをきっかけに消化管ホルモンであるインクレチンの研究に足を踏み入れた。
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