子宮腺筋症は,子宮内膜類似の組織が子宮筋層内に浸潤性に発育する疾患で,病理学的には良性である。月経痛,過多月経,下腹部膨満感などが症状としてみられる。また,不妊症,不育症の原因ともなる。症状,病巣のサイズ,挙児希望の有無などを総合的に判断して治療方針をたてる。
ほとんどの場合,外来診察時に行う問診・内診と経腟超音波検査で診断可能であるが,MRI検査を併用するとより正確で詳細な診断ができる。特にMRI検査は,子宮腺筋症に合併することの多い子宮内膜症,子宮筋腫の診断に優れる。
現在挙児希望はないが,今後に挙児希望がある患者においては,ホルモン製剤による薬物療法が主体である。各種ホルモン製剤の使いわけのポイントは,以下の通りである。
ジエノゲスト:子宮のサイズが10cm以下で貧血のない症例が適している1)。
低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤:喫煙なし,肥満なし,40歳未満といった血栓症のリスクがない症例に適している。
GnRHアゴニスト:子宮のサイズが大きい症例,ならびにジエノゲスト,低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤に反応が悪い症例に適している。
GnRHアンタゴニスト:GnRHアゴニストの対象に加えて,貧血のある症例に適している。
重症例においては,GnRHアゴニストもしくはGnRHアンタゴニストを4~6カ月使用し,引き続き長期間にわたりジエノゲストもしくは低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤を使用するシークエンシャル療法が適している。
レボノルゲストレル子宮内放出システム:子宮のサイズがほぼ正常の症例に適している。
ホルモン製剤による薬物療法の効果が不良な場合は,手術療法である子宮腺筋症切除術を行う。既に挙児希望がない症例では,子宮全摘術が根治療法となる。ただし,子宮温存を希望する患者に対しては,今後に挙児希望がある患者に準じて治療を行う。
GnRHアゴニストとGnRHアンタゴニストは,ジエノゲスト,低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤より効果が強いが,低エストロゲン状態をもたらすため,更年期症状などの副作用が強い。なお,GnRHアゴニストとGnRHアンタゴニストは,子宮腺筋症に対する保険適用はないが,子宮腺筋症にしばしば合併する子宮内膜症もしくは子宮筋腫に対して適用がある。
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