株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

新型コロナ禍で日本の医療崩壊を防いだファクターXは 民間病院の存在であった[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.16

加納繁照 (日本医療法人協会会長/社会医療法人協和会理事長)

登録日: 2021-01-01

最終更新日: 2020-12-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナ感染拡大の警戒が続く中、日本は医療崩壊が起きず持ちこたえている状況にあります。その要因、ファクターXとなったのは多くの医療法人立の民間病院の存在でした。

海外では多くで医療崩壊が引き起こされました。特に欧米では集約化が進められた結果、急性期医療は巨大病院が担う構造となっており、通常時でも救急車で搬送された急性期患者がトリアージされたとは言え、その後はERの通路でストレッチャーに乗せられた状態で列をなして並び、受診順番待ちをするのが日常的光景となっています。その巨大病院に新型コロナの重症、中等症、軽症の患者が次々と搬送されたのですから、たちまち院内感染が発生し、医療崩壊が引き起こされたことは想像に難くありません。

一方、日本では公的病院と一部の民間病院が新型コロナの対応を行いました。特に新型コロナの重症患者を受け入れた病院では、一般救急を遮断してECMO等を使用した新型コロナの重症治療に専念しました。反して、多くの民間病院ではマスクやPPE(個人用防護服)等が不足し、一般患者さんや医療従事者を守るために、一部の民間病院を除き新型コロナ対応を見送らざるをえなかった代わりに、一般救急患者は院内感染防止対策を徹底して、できる限りの受け入れに専念し地域医療を守ったのです。救急搬送数は一時全国で激減し、大阪市でも4月が前年比で▼25%、その後は少し回復し5月▼18%、6月▼13%となりました。減少したと言っても、月間約1万5000件から1万7000件が救急搬送されました。そのうち新型コロナ患者の救急搬送は1割弱にすぎず、逆に約9割を占める新型コロナ以外の一般急性期患者を、民間病院がしっかりと受け入れたことで医療崩壊を防いだのです。

今後日本は「人生100年時代」に入り、地域の高齢者は「輪廻転『床』」、すなわち発症、治療、リハビリ、社会復帰を繰り返しながら人生を楽しむことになります。地域包括ケアを守るのは、やはり新型コロナ禍と同じく、小回りが利く地域密着型、二次救急、ケアミックスタイプの中小民間病院で十分で、巨大病院は都道府県に数箇所あればよいと考えます。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top