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【識者の眼】「新たな学術大会の風を感じて」草場鉄周

No.5029 (2020年09月12日発行) P.63

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2020-09-01

最終更新日: 2020-09-01

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8月30日、第11回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(大会長:田妻進)が閉会した。本来は5月に予定した広島での大会が、コロナ禍で完全Web開催に移行し、7月23日からのオンデマンドでの視聴開始から、8月29〜30日のライブ配信を経るという異例の展開となった。そこでは、今後の学術大会のあるべき姿が垣間見える経験を得た事もあり、簡単に総括したい。

まず、学術大会が持つ旧知の仲間との出会いや近況を報告し合う機会はWebではかなり難しい。そして、会場を歩きながらふと思わぬ人と邂逅したり、発表後に演壇まで駆け寄って思いを伝えたりという機会がない。こうした偶然性がもたらすワクワク感を得ることは期待できない。これは、旅することで非日常にあるという要素も無視できない気がする。研究発表であれ、実践報告であれ、非日常性ゆえに生まれる偶然性は対面開催に勝ることはできないだろう。

その一方で、諸外国と異なり、比較的短期間で様々なセッションが集中的に開催される日本の学術大会のあり方を考えると、Web開催によってオンデマンドで様々な教育講演に自由に参加できる点、そして、口演発表・ポスター発表も関心ある内容について時間の制限なくふれることができる点は非常に大きなメリットであった。本学会は1カ月のオンデマンド視聴期間を設定したため、特にその効用は大きかった。そして、2日間はライブ配信に集中することができた。ライブの面白さがある特別講演やシンポジウムを聞きながら、疑問があればQ&A機能で落ち着いて質問を考え、伝えることができ、講演者やシンポジストから的確な回答を得られる相互交流の場を実現できた。

本学会は来年5月に福岡で第12回大会が開催されるが、こうした2つの側面を踏まえて、ハイブリッドさせるための工夫を考えていくこととなるだろう。対面交流で活きる企画はライブ・現地で、情報量が多く網羅的に把握することに意義がある企画はオンデマンド・Webで。学術と実践が交差する学術大会は、今後は更に躍動感のある内容へと深化するだろう。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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