No.5022 (2020年07月25日発行) P.58
三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)
登録日: 2020-07-10
最終更新日: 2020-07-10
今回は費用対効果の4つの分析方法について解説致します。
同種同効薬剤を比較し、いかに費用を削減するかの解析に用いられます。たとえば先発品と後発品の比較で効果や副作用対応がほぼ同じであれば、薬価が低い後発品の有効性を示すものです。その他、治療選択において、内服剤と注射剤の比較や異なる手術方法の比較の分析にも使用されます。具体的評価として既存薬Aに対して、新薬Bが効果小で費用が大きい場合には新薬Bは却下されます(dominated)。また既存薬Aに対して、新薬Bが効果大で費用が少ない場合はそのまま選択されます(dominant)。一方、既存薬Aに対して、新薬Bが効果大で費用大あるいは効果小で費用小の場合には費用最小分析を用いて解析されます。
医療分野が異なり、効果も異なる医療行為に対する分析です。例えば、肺癌に対する抗癌剤と肝臓癌に対する抗癌剤の患者の生存年を比較検討する方法です。生存年という同じ尺度で比較検討します。
この分析は生存年だけではなく、患者さんの生活の質(QOL)を含めた評価になります。前号(No.5017)で述べた、質調整生存年(quality adjusted life years:QALY)を使い、1QALY(1年間健康に生きた単位)を得るために医療費がいくら掛かったかをICER(incremental cost-effective ratio)として各医療行為を比較検討する方法です。臨床効果が異なる疾患間で比較検討が可能な方法です。
医療費に労働損失削減効果を加えた評価です。医療で得られた生存年数に、その間に働いた(家事労働等も含む)生産性金額を足したものです。一般的な経済効果分析に相当します。
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これからの医療の最終目標は、患者主体評価(patient reported outcome:PRO)すなわち患者の幸せ度の向上を目指すものであるため、真の費用対効果分析は3)費用対効用分析、さらに可能であれば4)費用対便益分析であると考えます。
三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬点数]