腟内および外陰部皮膚での真菌(カンジダ)の増殖により,瘙痒感や帯下異常をきたす疾患である。腟内の正常細菌叢が破壊される抗菌薬治療後や妊娠中に多く,再燃しやすい。原因菌の大部分はCandida albicans(C. albicans),Candida glabrata(C. glabrata)である。菌の検出のみではなく,自他覚所見を有して初めてのカンジダ外陰腟炎と診断される1)。酒粕様の特徴的な帯下と臨床症状から診断は可能であるが,混合感染なども考慮する必要がある。
外陰部皮膚を採取しKOH処理後に検鏡することで直接的にカンジダを確認することもできるが,C. glabrataは仮性菌糸体を形成しないため,注意を要する。サブローブドウ糖寒天培地でも腟内,外陰部の培養でC. albicans,C. glabrataが検出されるが,簡易培地として,MT培地®,CA-TG培地®,カンジダ培地F®があり,3日で結果が出る2)。
特徴的な帯下,臨床所見から強く外陰部腟カンジダが疑われた場合でも,トリコモナスや混合感染の可能性を考慮し,検鏡を行う。菌糸体を確認できない場合,他の細菌が多くみられる場合,再発例では,培養検査を追加する。
カンジダ外陰腟炎の大部分は初回治療で治癒するため,通院の簡便さから週1回投与の腟錠を選択することが多い。しかし,連日投与の腟錠を用いるほうが治療効果は優れており,通院可能な例では連日投与を行っている。連日投与の場合に,腟錠を処方し患者に自己挿入させる方法を用いることもあるが,挿入方法や治療期間について十分な指導が必要である。また,生活指導として局所の清潔を保つように勧めるが,石鹸などの頻回な使用により炎症が悪化することは,しばしば経験される。
また,2015年よりわが国でもフルコナゾールの内服治療が保険適用となった。国内臨床試験の成績では改善率も高く,重篤な合併症も認められなかった。しかし,2%弱で下痢,悪心の報告があり,併用禁忌や併用注意の薬剤も多く,局所療法を現時点では第一選択としている。また,妊婦や授乳婦では禁忌となっている。妊娠中のカンジダ腟炎は早産のリスクと相関するとの報告や,頻度は低いながらも新生児カンジダ血症の要因となった報告も散見され,自覚症状に乏しい場合も培養で認められた場合には積極的に治療している。
90%以上は初回治療で改善するが,再発を繰り返す症例も存在する。このため,初診時にも再発間隔や回数の確認が重要である。再発例の治療においては,前回治療と異なる薬剤選択や投与期間の延長を行っている。特に,年間4回以上再発する例はrecurrent vulvovaginal candidiasisとされ,海外ではフルコナゾールの6カ月間投与も行われており,慎重な治療が必要である3)。頻回な再発例では,パートナーからの感染が原因となっていることもあり,パートナーも含めた治療を勧めることもある2)。
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