【質問者】
小川昌宣 九州大学環境発達医学研究センター
【超音波による非侵襲的評価法】
血圧は最も基本的な生体パラメータであり,成人や小児を扱う医療者にはしごく当たり前の概念ですが,胎児を医療の対象とする産科医にとってはそうではありません。これまでは子宮の中にいるヒト胎児の血圧を計測する方法がありませんでした。もちろん胎児にも血圧があるでしょうし,それは胎児の状態評価に役立ちそうな予感がありましたが,そもそも「胎児血圧」という概念が存在しなかったのです。
このたび筆者らは,超音波によって非侵襲的に胎児血圧を評価する方法を開発しました。脈波を記述するwater-hammer式によると,血流(=流速:V)は駆出圧(P)に比例し脈波伝播速度(pulse wave velocity:PWV)に反比例して変化します。すなわちP=ρ・PWV・Vです〔ρは血液密度(1.05 g/cm3)〕。超音波を用いて胎児大血管の血流速度とPWVを高精度で測定できれば血圧を計算できることになります。
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