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胞状奇胎

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
松井英雄 (東京女子医学大学産婦人科学講座主任教授)
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  • ■疾患メモ

    胞状奇胎とは,遺伝学的異常を伴った一種の異常妊娠であり,40歳以上の高齢妊娠での発生頻度は生殖年齢に比較して30~40倍高頻度となる。

    胞状奇胎は,病理学的に全胞状奇胎(全奇胎)と部分胞状奇胎(部分奇胎)に分類され,全奇胎では胎児を認めず,すべての遺伝子が父親由来(雄核発生)である。

    一方,部分奇胎は2精子受精による3倍体となり,胎児を認めることもあるが,妊娠中期を超えることは少ない。

    全奇胎/部分奇胎掻爬後に,約10~20%の症例では絨毛性腫瘍(侵入奇胎・絨毛癌)を続発する可能性があり,定期的にhCG値を測定し,管理する必要がある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    無月経:胞状奇胎は妊娠であり,全例に認められる。

    不正出血:茶褐色の出血が全奇胎の90%で認められるが,部分奇胎では半分以下である。

    妊娠悪阻:胞状奇胎ではつわりが重篤であるとされるが,全奇胎でも20~30%程度である。

    【検査所見】

    超音波断層法:典型的な全奇胎,部分奇胎の所見を図1図2に示す。図1のようなvesicular patternを確認できれば全奇胎の診断は容易であるが,妊娠早期では全奇胎でもvesicular patternが明らかではなく,診断に苦慮することも多い。部分奇胎では図2のようにvesicular patternが明瞭ではなく,流産,ことに水腫様流産との鑑別が困難なことがあり,術後病理診断で部分奇胎と診断されることも多い。

    21_11_胞状奇胎

    21_11_胞状奇胎

    hCG測定:全奇胎では掻爬前hCG値が部分奇胎に比較して高値であるとされるが,比較的低値を示す全奇胎もあり,hCG値から全奇胎/部分奇胎の鑑別は困難である。

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