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重症妊娠悪阻

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
正岡直樹 (東京女子医学大学八千代医療センター母体胎児科・婦人科教授/診療科長)
田代英史 (東京女子医科大学八千代医療センター母体胎児科・婦人科)
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  • ■疾患メモ

    妊娠によって起こる消化器症状を主徴とするつわりの症状が悪化し,栄養障害をきたし,体重減少のほか,種々の症状を呈して治療を必要とする状態になった場合を悪阻という1)

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    嘔気,嘔吐により体重減少,脱水,胃酸喪失によるアルカローシス,電解質異常をきたす。進行すると,飢餓によるアシドーシス,腎機能障害,肝機能障害がみられるようになる。さらに重症になれば脳神経障害をきたす2)

    妊娠5~6週頃より症状が出現し,多くは妊娠12~16週までには軽快する,したがって,妊娠17週以降,とりわけ20週以降になっても症状が続く場合には,消化器症状をきたすほかの疾患を鑑別する必要がある3)

    【検査所見】

    脱水があれば,皮膚や口唇の乾燥,顔面蒼白,頻脈が認められる3)

    尿ケトン陽性,重症例では尿蛋白が認められる。

    血清蛋白,アルブミンの減少,貧血,AST,ALTの増加,BUNの増加,唾液腺由来のアミラーゼの増加,代謝性アルカローシス,アシドーシス,ケトーシスなどを呈する。

    hCGがTSH(thyroid stimulating hormone)様作用も同時に示すため,甲状腺機能の一過性の亢進を呈して,TSHの減少,free T3,free T4の一時的増加をみることがある。

    【鑑別疾患】

    甲状腺機能亢進症,肝機能障害(ウイルス性肝炎),中枢神経疾患(脳腫瘍,ウェルニッケ脳症),消化器疾患(食道炎,胃腸炎,胆嚢炎,炎症性超疾患,胃癌など),尿路・生殖器系疾患(尿路結石,卵巣腫瘍の捻転など),代謝性疾患(糖尿病,アジソン病など)などとの鑑別を行う。

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