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多毛

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
和泉俊一郎 (東海大学医学部産婦人科教授)
宇田優貴 (東海大学医学部産婦人科)
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  • 疾患メモ

    多毛症は5~10%の女性に起こり,美容上の深刻な悩みとなって来院するケースが多い。

    男性化徴候のひとつと考えて,原因の究明(鑑別診断:表1)と治療の可否を決定する。

    多毛の重症度は,欧米ではFerriman-Gallweyスコアで9点以上が治療対象とされるが,日本女性では総じてスコアが低く,患者本人の「困惑度」も考慮する。



    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    ヒトの体毛は,細く短く色素の少ない軟毛(毳毛)と,頭髪や陰毛のように太く色素の濃い硬毛(終毛)に分類される。
    ①硬毛の発育過剰による多毛症(hirsutism,多硬毛症)が,アンドロゲン(androgen:A)過剰分泌による男性型多毛症で,治療対象である。
    ②hypertrichosis〔(多毳毛症),体質的多毛症〕は,Aの非影響下で起こるうぶ毛の増加であり,治療対象ではない。

    多毛症と男性ホルモン値との関係は理解しておきたい。
    ①生理的Aには,テストステロン(testosterone:T),デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone:DHEA),アンドロステンジオン(androstenedione:AD)などが含まれる。
    ②A受容体(androgen receptor:AR)のリガンドとして最も生理活性が高いのはTで,DHEAやADはTの1/5以下の活性である。
    ③女性のTは約25%が卵巣で,さらに25%が副腎で,残りの約50%が末梢組織で産生,供給されているが,血中のTは,ほとんどが性ホルモン結合グロブリン(sex hormone binding globulin:SHBG)と結合して運搬されている。
    ④SHBGに結合していない遊離Tが実際の生理活性を持つため,血中Tの上昇がなくとも,SHBGの濃度低下や結合能低下により,遊離Tが上昇してA作用は増強される。

    多毛症への毛囊における代謝の関与も重要である。
    ①血中の遊離Tは,毛囊に存在する5α ─ 還元酵素(αR)によってジヒドロT(dihydrotestosterone:DHT)に変換され,局所で最強のAとなる。
    ②DHTによって,毛の性状は柔らかい軟毛から,太く硬く色素の濃い硬毛へと変化する。
    ③多毛の程度は毛囊で変換されたDHT量を反映しており,その量は血中遊離T濃度と局所のαR活性によって決まる。
    ④Tの血中濃度が正常値であっても,αRの活動が増えればTのDHTへの過度な変換による多毛症が引き起こされる。なお,毛囊はほかにDHEAとADをTに変化させる酵素も持っている。

    原疾患で多いものに,多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)がある(☞「§20-5参照)。
    ①PCOSの複雑な病態の中で本症に関連する部分に,黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)の上昇,耐糖能異常がある。
    ②LH高値により,卵巣内でLHレセプターを持つ莢膜細胞でのA産生が促進される。また,耐糖能異常により代償性高インスリン血症は,下垂体に作用しLH産生を増加させるとともに,肝臓にも作用しSHBG産生を抑制することで,遊離T濃度を上昇させる。

    【検査所見】

    多毛の状態を9つの部位で評価するFerriman-Gallweyスコアで採点して重症度を評価する(表2)。欧米では9点以上を治療対象とするが,日本女性ではまず4点以上で男性化徴候疑いとして鑑別をすることが推奨される。

    ホルモン産生腫瘍を鑑別するために,副腎や卵巣の超音波画像検査を行う。

    卵巣機能を評価するため基礎体温(basal body temperature:BBT)を測定し,時期に応じてホルモン採血を行う。

    男性ホルモンも測定するが,SHBGの測定は困難であるため遊離T濃度を,T濃度と比較して代用する。

    低用量エストロゲン(estrogen:E)・プロゲスチン(progestin:P)配合薬(LEP)または,低用量経口避妊薬(LOC)が第一選択(first line)として,月経不順を合併する多毛症に使用される。

    PCOSと断定できない月経不順に合併した多毛症は日常診療でしばしば見受けられるが,この場合でも,LOCは有効な治療となりうる。

    Eは,LHを低下させ,卵巣由来のAを抑制するだけでなく,SHBGを増加させて遊離T濃度を抑制する。

    ヤーズ®(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール配合)は,系統の違うドロスピレン(第4世代)を配合しており,唯一抗男性ホルモン作用を持ち,理論上の効果が期待されるが,現在のところその優位性は証明されていない。おそらくE含量が20μgで上述のSHBGなどへの作用がほかのLEPより減弱するため,と考えられる。

    硬毛の発育の半減期を考慮して,効果がみられるまでは6カ月が必要と考える。また,投薬を中止すると数カ月で再燃してくることを説明する必要がある。

    6カ月で効果がないか不十分であれば,スピロノラクトンを追加する。本剤はアルドステロン拮抗薬であるが,ARでAと拮抗し,また同時に末梢の5α─還元酵素活性をも阻害するため,多毛症には効果的な薬剤である。



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