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眼瞼下垂

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-24
渡辺彰英 (京都府立医科大学眼科学教室)
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  • ■疾患メモ

    眼瞼下垂は,開瞼時に上眼瞼が十分に挙上しない状態を言う。大きくは先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂に分類される。

    先天性眼瞼下垂では挙筋機能不良な例が多い。後天性眼瞼下垂は様々な要因によって引き起こされる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    眼瞼下垂では,上方視野の狭窄による視機能低下をきたす。眼瞼下垂があると,上方視野を得るための代償性眉毛挙上や顎挙上が認められることが多い。

    【検査所見】

    眼瞼下垂の評価は,MRD-1(margin reflex distance-1)による程度分類と,挙筋機能(levator function)の測定にて行う。

    MRD:角膜反射(瞳孔中央)と上眼瞼縁の距離を示すもので,2.7mm以上が正常,1.5~2.7mmが軽度下垂,-0.5~1.5mmが中等度下垂,-0.5mm以下が重度下垂と分類される1)図1)。

    17_10_眼瞼下垂

    挙筋機能検査:眉毛を固定し,下方視時の上眼瞼縁の位置を0として,上方視時の上眼瞼縁が何mm挙上したかを計測する(図2)。8mm以上でgood,4~7mmでmoderate,3mm以下でpoorとする。しかし,挙筋機能検査は見かけ上の機能検査であり,実際にはpoorな症例であっても術中に上眼瞼挙筋機能が良好な例も存在する。挙筋機能が0であればほとんどの症例で吊り上げ術が適応になるため,挙筋機能があるかないかの判断は重要である。また,眼瞼下垂では日内変動の有無も重要な問診事項であり,重症筋無力症の可能性に留意する。

    17_10_眼瞼下垂

    〈眼瞼下垂の分類〉

    先天性眼瞼下垂:単純先天性眼瞼下垂,Marcus Gunn現象,瞼裂狭小症候群,general fibrous syndromeに分類され,単純先天性眼瞼下垂の頻度が最も高い。単純先天性眼瞼下垂の多くは片側性で,遺伝素因なく発症することがほとんどである。また,先天眼瞼下垂ではほとんどの症例で挙筋機能は0であり,挙筋短縮術では良好な開瞼が得られないばかりか,閉瞼障害を生じる可能性が高いため,前頭筋と上眼瞼を連動させる吊り上げ術が適応になる。

    後天性眼瞼下垂:加齢性眼瞼下垂の頻度が最も高く,ついでハードコンタクトレンズの長期装用に伴う眼瞼下垂,白内障などの内眼手術後下垂が多い。その他,動眼神経麻痺,重症筋無力症,ホルネル(Horner)症候群,外眼筋ミオパチー,外傷による眼瞼下垂などがある2))。いずれも,眼瞼を挙上する働きのある上眼瞼挙筋(動眼神経支配)およびミュラー(Müller)筋(自律神経支配)の単独もしくは両者の機能低下や解剖学的変化による。後天性眼瞼下垂では挙筋機能がよいことが多いが,動眼神経麻痺や外眼筋ミオパチーなど挙筋機能がほとんどないこともある。

    17_10_眼瞼下垂

    偽眼瞼下垂:顔面神経麻痺による眉毛下垂や上眼瞼皮膚弛緩症は,しばしば眼瞼下垂と混同しやすい。前頭神経麻痺により眉毛下垂となったり,加齢に伴い上眼瞼皮膚が弛緩したりして眼瞼縁を越えると,見かけ上眼瞼下垂となる。しかし,眉毛下垂や皮膚弛緩症のみで視野狭窄をきたす場合もある。

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