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レプトスピラ症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
古川恵一 (聖路加国際病院内科感染症科部長)
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  • ■疾患メモ

    レプトスピラ症は急性の発熱をきたす疾患であり,Leptospira interrogansによる人畜共通感染症である。

    軽症型のレプトスピラ症は発熱,頭痛,筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈す。重症型は黄疸,腎障害,出血傾向などを起こし,ワイル病Weil's diseasesという。

    東南アジア,中南米など熱帯,亜熱帯地域に多くみられる。海外で感染した輸入感染例と国内感染例がある。集団感染もあり,2000年にボルネオで密林の川を泳いだ競技者158人中の68人(44%)が発症した事例がある。

    わが国では2003年11月から2011年4月までに170例の報告がある。夏から秋にかけての発生例が多く,沖縄八重山地方の河川などでの感染例が約半数を占めるが,全国から散発例があり,東京都で21例あった。ドブネズミのいる環境での作業者などの発症例が報告されている。輸入感染例の感染地はマレーシア・ボルネオ島,インドネシア・バリ島,タイ,フィジーなどがある。

    予後は全体の90%は軽症ないし中等症で自然に治癒する。重症型のワイル病における死亡率は4~15%であるが,肺出血などを合併した重症例では52%に至る。

    レプトスピラ症はわが国では感染症法の4類感染症に定められており,診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要がある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    平均10日(2~26日)の潜伏期後に,急に発熱,悪寒,筋肉痛,頭痛などのインフルエンザ様の症状が75~100%の例で出現する。吐き気,嘔吐,下痢が50%にみられ,咳もみられる。肺出血を合併すると血痰,喀血,呼吸困難がある。

    身体所見は,重症型では数日後から黄疸が93%に,眼球結膜充血が62%,下肢などの筋肉の圧痛が92%にみられる。

    【検査所見】

    末梢血白血球数10000以下が多いが,ワイル病では白血球増加と核の左方移動がしばしばみられ,時に血小板減少がみられる。肝障害が40%に,CPK上昇が50%に,クレアチニン・BUNの上昇,尿蛋白,白血球尿,硝子様円柱などがみられる。

    血液,尿,髄液などのコルトフ培地などを用いた培養検査やPCR検査,顕微鏡下凝集試験法(MAT),ELISA法などによる血清抗体検査を行う。わが国では国立感染症研究所などに検査を依頼する。

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