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風疹

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
多屋馨子 (国立感染症研究所感染症疫学センター室長)
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  • ■疾患メモ

    風疹は風疹ウイルスによる急性感染症で,飛沫感染,接触感染で感染伝播する。感染後約2~3週間の潜伏期を経て発症するが,稀に脳炎や血小板減少性紫斑病を合併する場合がある。風疹は全数届出疾患であり,診断後7日以内(できるだけ24時間以内)に最寄りの保健所への届出が義務づけられている。一方,妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると,胎児にも感染して,白内障,先天性心疾患,難聴などを主徴とする先天性風疹症候群の児が生まれる可能性がある。

    わが国では早期に先天性風疹症候群の発生をなくし,2020年度までに風疹を排除することが目標に掲げられている1)。風疹ワクチンの定期接種制度の違いから,昭和54年4月1日以前に生まれた男性は風疹ワクチンを受ける機会がなく20~25%が抗体陰性のままであり,予防が求められている。

    女性は妊娠前に2回のワクチンを受けておくことが奨められている。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    発熱,発疹,リンパ節腫脹が3主徴であるが,3つすべてそろわない場合が多く,不顕性感染が約15~30%存在する。

    カタル症状,眼球結膜の充血を伴うことが多い。成人では一過性の関節炎を伴うことがある(5~30%)。

    脳炎(4000~6000人に1人),血小板減少性紫斑病(3000~5000人に1人)を合併し入院が必要になる場合がある。

    【検査所見】

    ウイルスの排泄期間は発疹出現前1週間および後1週間とされているが,解熱すると排泄されるウイルス量は激減し,急速に感染力は消失する。

    血清学的な検査診断が最も多く実施されており,発疹出現後4~28日に風疹特異的IgM抗体価を測定する(健康保険適用あり)。風疹以外の疾患で弱陽性になる場合があり(偽陽性),長期間風疹IgM抗体価の弱陽性が続く症例があり注意が必要である。

    赤血球凝集抑制法(HI法)または酵素抗体法(EIA法)等により,急性期と回復期のペア血清で,抗体価が陽転あるいは有意上昇(HI法:4倍以上,EIA法:2倍以上)することにより診断することも可能である。

    発疹出現から1週間以内に,咽頭ぬぐい液,血液,尿からRT-PCR法あるいはリアルタイムRT-PCR法を用いた風疹ウイルス遺伝子の検出あるいは,風疹ウイルスの分離が実施されることもあるが,2016年12月現在,実施可能な機関は一部の研究所や大学等に限られている。

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