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鉄芽球性貧血

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
藤原 亨 (東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座血液・免疫病学分野講師)
張替秀郎 (東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座血液・免疫病学分野教授)
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  • ■疾患メモ

    鉄芽球性貧血は,ミトコンドリアに鉄が異常に沈着した環状鉄芽球の出現を特徴とする貧血である。鉄芽球性貧血症は,遺伝性(先天性)と後天性に大別され,さらに後者は骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)に代表される特発性と,抗結核薬投与やアルコール常飲など明らかな原因のある二次性に大別される(1)。鉄芽球性貧血のほとんどはMDSに伴う鉄芽球性貧血であり,遺伝性・二次性は稀である。

    09_04_鉄芽球性貧血

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    臨床症状の多くは血球減少に基づくもので,特異的なものはない。顔色不良,全身倦怠感,易疲労性などの貧血症状が中心である。MDSに伴う鉄芽球性貧血の場合は,血小板減少を伴う例では出血症状も初発症状となりうる。

    【検査所見】

    鉄芽球性貧血の検査所見の特徴は,貧血(男性Hb<13g/dL,女性Hb<12g/dL),骨髄における環状鉄芽球の出現(15%以上)である。さらに,種々の程度で鉄過剰所見を認める。

    〈末梢血液所見〉

    鉄芽球性貧血においては,ほぼ例外なく貧血の出現を認める。MDSに伴う鉄芽球性貧血症では,貧血とともに白血球減少・血小板減少も伴うことがあり,また貧血は平均赤血球容積(mean corpuscular volume:MCV)が100fLを超える軽度大球性であることが多い。一方,ALAS2遺伝子変異に伴う遺伝性鉄芽球性貧血では小球性貧血となるのが特徴である。

    〈骨髄所見〉

    骨髄における環状鉄芽球の出現が,遺伝性・後天性を問わず鉄芽球性貧血の診断において重要である。

    MDSはもともと造血幹細胞レベルの異常により引き起こされる病態であるが,そのうちの一部の病型で鉄芽球を認める。WHO分類によると,MDSのうち骨髄赤芽球中に環状鉄芽球を15%以上認めかつ芽球が5%未満で1),赤芽球系のみの異常にとどまるものはrefractory anemia with ringed sideroblasts(RARS)2),2系統以上の血球系列の血球減少および異形成を認めるものはrefractory cytopenia with multilineage dysplasia and ringed sideroblasts(RCMD─RS)と分類される。環状鉄芽球以外に,低分葉好中球(偽ペルゲル核異常)・無顆粒好中球・微小巨核球の出現は,MDSを特徴づける異形成所見として重視される。

    〈その他〉

    MDSでは赤芽球の骨髄内破壊(無効造血)により,しばしば血清鉄や体内の貯蔵鉄量を反映する血清フェリチン濃度が増加している。さらに無効造血を反映して,血清LDHの上昇,ハプトグロビン低下,間接ビリルビン軽度増加も認める。

    遺伝性鉄芽球性貧血の診断には遺伝子検査が必須であるが,家族歴の有無が重要な情報となる。また,遺伝性鉄芽球性貧血のうちALAS2遺伝子変異に伴う症例では,鉄過剰所見も認める。

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