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進行性多巣性白質脳症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
三浦義治 (がん・感染症センター都立駒込病院脳神経内科医長)
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  • ■疾患メモ

    進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy:PML)とは免疫低下を契機としてJCポリオーマウイルス(JC polyoma virus:JCV)が脳白質に脱髄を引き起こす中枢神経系感染症である。

    PML発症の基盤となる基礎疾患はHIV感染症(AIDS)である場合(HIV-PML)とそうでない場合(non HIV-PML)で大きく2つに分類される。non HIV-PMLはさらにPMLの発症誘発に関連した使用薬剤がモノクローナル抗体製剤(モノクローナル抗体関連PML)か否かに分類される。

    近年のわが国では,血液疾患,悪性腫瘍,膠原病,自己免疫疾患,臓器移植,多発性硬化症を基礎疾患とするnon HIV-PMLの割合が増加してきている。また,最近,多発性硬化症の再発予防薬であるナタリズマブやフィンゴリモド使用中に発症したPML症例が報告され,注目されている。

    わが国でのモノクローナル抗体関連PMLではリツキシマブ使用によるPML発症症例が報告されている。

    発症頻度は人口100万人に対して1人以下の稀な疾患であるが,HIV感染者では1000人に1~3人程度である。近年,欧米で報告されているナタリズマブ使用中の多発性硬化症患者では1000人に3~4人と,やや高頻度である。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    主な神経症状は,認知症状,構音障害,片麻痺や四肢麻痺,半盲など視力障害,失語症,脳神経麻痺などである。

    亜急性に進行する神経症状が特徴的であり,自然経過では数カ月の経過で無動・無言の状態となり,死亡する。小脳失調や脳幹部の症状から発症することもある。

    【検査所見】

    一般的血液検査では炎症所見はみられない。抗JCV抗体価(index value)を算出する試みもあるが,現在のところ診断的価値は持たない。

    脳髄液検査は細胞数や蛋白は正常な場合が多いが,近年,髄液蛋白上昇や髄液細胞数の増加などを示す症例が増えてきている。

    脳脊髄液のJCV-PCR検査にてJCウイルス特有の遺伝子配列を確認することが診断上重要である。感度80%,特異度99%程度である。

    脳MRIでは, T2強調画像,FLAIR画像,拡散強調画像で大脳白質に高信号域を示す左右非対称性の大小不同の多巣性不整形脱髄病巣がみられる。この病巣は通常は脳浮腫やmass effectを伴わず,造影剤増強効果もない場合が多い。

    PMLの病理所見は皮髄境界から皮質下白質を中心に大小様々な脱髄斑が多数,融合性にみられることが多い。HE染色ではJCVの封入体を意味する両染性の腫大核を持つオリゴデンドログリア細胞が特徴的である。近年,病理学的検査も重要な位置を占めている。

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