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脊髄小脳変性症, 多系統萎縮症など

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-16
松島理明 (北海道大学大学院医学研究院神経病態学講座神経内科学分野)
佐々木秀直 (北海道大学大学院医学研究院神経病態学講座神経内科学分野教授)
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  • ■疾患メモ

    わが国において脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)と多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)を併せた運動失調症患者数は平成26(2014)年度医療受給者証の交付数によると4万人を超えた。

    わが国の運動失調症の1/3は遺伝性で,残り2/3は非遺伝性である。

    遺伝性の多くが常染色体優性遺伝で,ジョセフ病(Machado-Joseph disease:MJD/spinocerebellar ataxia 3:SCA3),SCA6,SCA31,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy:DRPLA)の頻度が高い。

    非遺伝性の約2/3はMSAであり,残り1/3が臨床的に皮質性小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy:CCA)と診断されている。後者には小脳症候を主徴とするMSA,家族歴の明確でない遺伝性SCD,二次性SCDなども含まれており,均一な疾患ではない。

    いずれの疾患においても小脳性運動失調症状を呈し,病型によっては小脳症候以外の神経症状が加わる。

    MSAは最も多い運動失調症で,小脳性運動失調,パーキンソニズム,および自律神経障害を中核症候とする。進行すると,声帯開大不全等による突然死も生じうる。2014年の特定疾患登録患者数は約1万2741人である。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    SCDでは,小脳症候(構音障害,注視眼振,四肢協調運動障害,運動失調性歩行)を認める。病型によっては末梢神経障害,ミオクローヌスなどの不随意運動,てんかんや認知症を伴うものもある。

    MSAの基本症候は,小脳性運動失調,L-ドパ反応性不良のパーキンソニズム(筋強剛,振戦,運動緩慢),および自律神経障害(起立性低血圧,排尿障害,便秘,勃起障害など)である。

    MSAの臨床病型としては,わが国においては小脳性運動失調優位の病型(MSA-C)が多く,欧米ではパーキンソニズム優位の病型(MSA-P)が多い。進行期には声帯開大不全や睡眠時無呼吸を呈することもあり,突然死をきたすことも稀ではない。

    【検査所見】

    SCDの脳MRIでは小脳萎縮を認めるほか,病型によっては脳幹萎縮など他の部位の萎縮を認める。SPECTやPETでは小脳を中心に血流低下,糖代謝低下などを認める。

    MSAでは脳MRIにて小脳と脳幹の萎縮を認め,橋にhot cross bun sign,被殻後外側に鉄沈着による異常信号がみられることがある。

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