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訪問薬剤管理指導と服薬管理

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
大澤光司 (メディカルグリーン 大澤調剤薬局代表取締役社長)
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  • ■考え方

    ここでは,薬剤師における訪問薬剤管理指導(介護保険での名称は,居宅療養管理指導,介護予防居宅療養管理指導)および服薬管理について述べる。

    在宅療養患者の多くは複数の薬を使用していることから,服薬管理をしっかり行うことが重要であり,かつ,独居高齢者,高齢者夫婦のみの世帯,認認介護など管理の難しいケースが増加している。しかし,薬剤師による在宅業務が進んでいるとは言えない状況で,在宅の薬剤管理を訪問看護師やヘルパー等が行っているケースは少なくない。

    ある調査によると,訪問看護師の業務時間の3割程度が服薬管理業務となっていた。看護師は薬の専門家ではないため,薬の管理業務は思った以上に負担だという意見を聞くことがある。また,本来の看護業務に支障をきたす恐れもある。

    薬剤師が初めて患者宅を訪問した際に発見される薬に関する問題点としては,医薬品の管理状況が不適切(冷所保存の医薬品が常温で保存されていた等),飲み忘れなどが挙げられる。

    ■制度面の知識

    薬剤師による訪問薬剤管理指導のポイントは,大きく①服薬状況の確認と改善,②薬剤による副作用の発見と改善,の2つにわけられる。

    【服薬状況の確認と改善】

    日本薬剤師会が平成20年に行った後期高齢者の服薬状況に関する調査によると,飲み残しの薬は1年間で500億円弱にも上ると推計され,医療費の観点からは無駄であると言える。それ以上に,服薬しないことによる病態の悪化,また,正確に薬を服用しているものと医師が考えていた場合,診断にも悪影響を与える可能性がある。

    同調査によれば,残薬の発生理由は,飲み忘れが重なった(67.6%),自分の判断で飲むのをやめた(21.5%),新たに別の医薬品が処方された(21.5%),飲む量や回数を間違っていた(6.8%),であった。

    もし薬剤師が関与できていれば,残薬の発生理由を確認し,それぞれのケースに応じて対応策を検討し,改善に結びつけられる可能性が出てくる。残薬を発見した場合,単に整理するだけではなく,薬学的知識に基づき,薬の重複(特に複数科受診時),相互作用や併用禁忌の確認を行うことができる。

    また,服薬支援として一包化を行う場合には,吸湿性等,医薬品の安定性の確認を行う。確認の結果,処方内容に変更等が必要な場合には,医師に疑義照会を行う。服薬支援には,一包化以外にも,お薬カレンダーの活用や,剤形変更,1日の服用回数の変更など,様々なケースがある。

    薬剤師の訪問を導入すると,薬剤師側から医療機関側に対して,訪問に関する報告書等による情報提供や電話等による疑義照会が行われるケースが少なくないが,いずれも在宅患者の服薬状況を改善するために必要なものであり,適切に対応して頂くことが重要である。

    【薬剤による副作用の発見と改善】

    "薬(くすり)はリスク"と言われることもあるように,医薬品に副作用はつきものである。複数の疾患を持つ高齢者は,服薬医薬品数が増加し薬物の代謝機能も衰えているため,若年者に比べて副作用のリスクが高くなりやすい。

    薬剤師は,薬学的視点から患者のADLやQOLに薬が悪影響を与えていないかを確認する。確認方法は様々だが,1つの例として,食事,排泄,睡眠,運動と認知症状から薬の影響を確認する『体調チェック・フローチャート』(日本薬剤師会)がある。こういった確認結果も,薬剤師からの報告書として医師にフィードバックされるとともに,処方の変更が必要と考えられる場合には疑義照会が行われることがある。

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