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放射線被ばく

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-29
浅利 靖 (北里大学医学部救命救急医学教授)
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  • ■治療の考え方

    放射線被ばくは,福島第一原子力発電所事故のような原子力災害時や,核分裂し臨界反応を起こす可能性のある核燃料物質などを扱う原子力事業所での労災事故,さらに放射性同位元素(臨界反応は起こさない)を扱う医療機関や非破壊検査などで発生する。

    傷病者を診療するときには,体に放射性物質を付着している汚染と放射線を浴びた被ばくとを区別して対応することが肝要である。

    放射線被ばくでは,線量が高いほど大きな障害が発生する。その影響は,数週間以内に生じる早期影響と,数カ月から数年後に生じる晩発影響にわけられる。前者では,悪心・嘔吐,下痢,骨髄障害,皮膚紅斑,脱毛,不妊など,後者では癌などがある。

    また,ある線量(しきい線量)を超えると発生しはじめる確定的影響()と,癌のようにしきい値がなく線量が高くなると発生確率が高くなる確率的影響がある1)2)

    01_60_放射線被ばく

    ■病歴聴取のポイント

    被ばくについての情報:①放射性物質の種類,放出されている放射線の種類(α線,β線,γ線,X線),②線源からの距離および被ばくしていた時間,③体に付着したか,吸い込んだか,④放射線管理区域内での傷病か,放射性物質が浮遊する環境であったか,⑤原子力施設などで放射線管理担当者がいる場合は同行を依頼し,被ばく線量,汚染の有無,対応する医療者への推定二次被ばく線量,などを聴取することが重要である。

    病歴:①放射線管理区域内での傷病,②原因不明の下痢,嘔吐,発熱,脱毛,頭痛,意識障害,唾液腺の腫脹・圧痛,皮膚の紅斑,のいずれかに該当する場合は放射線被ばくを考慮する1)

    ■バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    少量の放射線被ばくでは,急性期にバイタルサインや症状の出現はない。1Gy以上の全身急性被ばくは,骨髄,皮膚,口腔粘膜,消化管,心血管系,中枢神経に,被ばくした線量に応じて影響が生じる1)。これを,急性放射線症候群(acute radiation syndrome:ARS)と言う。

    【身体診察】

    ARSの病期と症状:病期は前駆期,潜伏期,発症期,回復期にわけられる。前駆期は被ばく後48時間以内の時期で,一過性に嘔吐,下痢,発熱,頭痛,意識障害,唾液腺の腫脹・疼痛・圧痛などが認められる。その後,比較的無症状の潜伏期を迎えるが,被ばく線量が高いほど潜伏期は短い。1Gy以上の放射線被ばくでは,前駆期,潜伏期が終わるまでの間に専門治療施設に患者を移送する。

    重症度の推定:被ばく後に出現した症状とその出現時間の関係から大まかな被ばく線量と重症度が推定できる。10分以内に嘔吐,1時間以内に下痢が出現したら8Gy以上の致死的状態で,嘔吐が10~30分なら6~8Gy,30~60分では4~6Gyの重症と判断できる。

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