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「新型コロナウイルス」関連コメント〜【識者の眼】より〜

[緊急寄稿]新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の院内感染防止対策─全入院患者にPCR検査が必要

菅谷憲夫(慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)
掲載日時:2020年6月18日

世界保健機関(WHO)は,本年3月11日にSARS-Coronavirus-2(SARS-CoV-2)のパンデミックを宣言した。日本国内では4月7日に,東京,神奈川,千葉などに緊急事態宣言が出された。5月に入り,日本の流行第1波も終息傾向が見られ,緊急事態宣言は5月25日に解除された。今この時期にこそ,秋または冬に予測される第2波の対策を立てるべきである。本稿では,これからの院内感染対策について検討した。

 1. 死亡例の1/4は院内感染

日本のSARS-CoV-2による死亡例の,少なくとも24%は院内感染によるものであった(毎日新聞,6月7日)。今,日本の死亡者は1000人の大台に近づいているが,その4分の1までもが院内感染によることは深刻な問題であり,SARS-CoV-2院内感染対策の根本的な見直しが必要であることを示している。報道によれば,入院中にSARS-CoV-2に感染した患者数は1028人で,このうち205人が死亡しており,院内感染患者の死亡率は20%ときわめて高率であった。
日本の院内感染死亡はすべて入院患者の死亡であり,欧米のように医療従事者の死亡例は報告されていない。一方で,日本の医療従事者の感染例が1590人報告され,その内,6割が看護職であることも報道された(読売新聞,6月4日)。「医療現場の感染リスクの高さが改めて浮き彫りとなった」とされ,日本の全感染例の9.6%(1590人/1万6558人,5月31日時点)が医療従事者となる。

 2. 受診患者数の減少

これだけ院内感染例が報告されれば,日本国民がSARS-CoV-2感染を恐れて病院受診を控えるのは当然である。定期的な受診が必要な患者までもが受診を控え,全国の病院,クリニックの受診者数が減少したことで,医療機関の莫大な赤字が問題となっている。これは院内感染対策が不十分であることを国民が感じ,受診すると感染する可能性があり,また入院中にSARS-CoV-2に感染すると生命の危険が高いと理解しているからである。風評被害というよりも,日本国民の常識的な判断と言えよう。

 3. SARS-CoV-2に対して従来の感染対策は不十分

SARS-CoV-2の院内感染対策は,手洗い,マスク,ガウン着用などの標準予防策を基本として,主要な感染経路遮断のために,飛沫と接触感染予防策がとられてきた。しかし現状を見れば,このような対策では不十分であることは明らかである。
SARS-CoV-2の院内感染対策が困難な最大の理由は,無症状患者の存在である。無症状患者(asymptomatic patients)とは,RT-PCR検査で陽性であるが,発熱,咳嗽,倦怠感などの臨床症状がなく,原則として,胸部レントゲン写真やCTでも所見がない症例のことである1)。RT-PCR検査で陽性で,その時には無症状であるが,後に発症する潜伏期の患者も含まれる(pre-symptomatic patients)2)。感染制御の基本は,早期に診断して感染経路を断つ事であるが,無症状患者は訴えがなく,受診や検査対象にならないので,診断はきわめて難しい。しかも,SARS-CoV-2の無症状患者は,肺炎等の所見のある患者と同程度の感染性,感染力があることがわかっている。またSARS-CoV-2の肺炎患者も発症数日前から感染性が出てくるので,発症した患者を早期に隔離しても,院内感染防止は容易ではない。

 4. SARS-CoV-2の無症状患者は高頻度

SARS-CoV-2のPCR陽性患者のうち,米国小児の報告では13%3),同じくシアトルの高齢者施設の報告では,半数が無症状患者であった4)。一方,日本の報告では,中国武漢からの日本人帰国者では30.8%1),ダイアモンド・プリンセス号では17.9%が無症状患者であった5)。したがって,SARS-CoV-2患者では,かなり高率に無症状患者が存在すると考えられる。
有症状患者では,発症数日前から周囲への感染力があるが,無症状患者でも,感染後早期から感染力を有すると指摘され,無症状患者がPCR検査陽性から陰性化するまでの中央値は9.5日で,最長21日と報告されている6)。PCR検査陽性の無症状患者は,10日~14日間の隔離と,2回連続の陰性確認が必要である。
SARS-CoV-2患者には無症状患者が高頻度に存在し,無症状患者から周囲に感染することは間違いないが1)7),SARS-CoV-2患者の中で,無症状患者からの感染と考えられる症例の割合は明らかではない2)

 5. 院内感染防止は全入院患者のPCR検査から

有効な院内感染防止策は,PCR検査を充実させることである。すべての入院患者は,入院時にSARS-CoV-2のチェックを必須とすべきである。原則はRT-PCR検査である。最近,承認された抗原検査キットの実際の感度は明らかではないが,PCR検査に比べて,一定以上の感度,特異度があれば,30分以内で結果を判定できることや,コストの面から有用性はある。しかし,疑陰性の場合,患者や医療機関への影響はインフルエンザよりもはるかに大きい。そのため,緊急検査としては有用であるが,PCRによる最終的な確認が多くの場合で必要と考えられる。
日本感染症学会などから「院内感染を予防するための水際対策として,SARS-COV-2の症状が明らかではない患者さんに対しても手術(挿管を伴うもの),分娩,内視鏡検査,透析医療あるいは救急医療などの診療実施前にSARS-COV-2のPCR検査を行うことは医療崩壊を防ぐために必須であり,このための公的補助を強く要望する」との声明文も出ている8)9)
慶應義塾大学病院など,いくつかの有力な病院では,全入院患者にSARS-CoV-2のPCR検査は実施されている。しかし,SARS-CoV-2院内感染発生は大学病院や大規模な病院に限らず,中小規模の病院や,さらにはSARS-CoV-2患者の受け入れを行っていない精神科病院やリハビリ病院でも発生し,そこでも多くの入院患者死亡例が出ている。

 6. 医療従事者のPCR検査も実施

医療従事者が無症状患者となり,院内感染の発端者になり,感染を拡散するケースもあるので,医師や看護師など入院患者と接する医療スタッフも,月に数回,スクリーニングとしてSARS-CoV-2のPCR検査を受けることが重要である。これは患者を院内感染から守るためと同時に,SARS-CoV-2を家庭に持ち帰ることを心配する医療従事者にとってもメリットが大きい。現在,日本のほとんどの病院ではSARS-CoV-2感染者がどこにいるか分からないので,医療従事者は,病院勤務は一定の危険があることを承知しており,院内での感染を警戒している。

 7. SARS-CoV-2の検査は病院経営にも有用

医療従事者でさえSARS-CoV-2の感染を恐れているので,国民が病院受診を控えるのは当然である。病院経営が悪化したために,政府が病院に対して経済的に助成するのも必要な施策ではあるが,一義的には,病院の院内感染対策を徹底し,患者が安心して受診できる環境を提供することが,はるかに重要である。妊産婦も含めて,患者全員の入院時のSARS-CoV-2のPCR検査(あるいは抗原検査)と,医療従事者全員の定期的なPCR検査によるスクリーニングには,政府による経済的支援,検査機関の拡充など,全面的なバックアップが必須となる。最高レベルの院内感染対策の確立があってこそ,病院に再び患者が戻り,世界に誇る日本の医療が再生すると考えられる。

 8. おわりに

SARS-CoV-2パンデミックに伴った院内感染は,多数の重症者,死亡者が発生し,深刻な問題である。現状の感染対策のままで,これから起きる第2波に臨めば,再び多くの病院で院内感染が発生し,肝心の病院機能が大幅に低下する危険性がある。それを防ぐには,ワクチンや治療薬の開発にも期待がかかるが,今,日本で望まれることはPCR検査の徹底である。プロ野球やJリーグの選手が試合前にSARS-CoV-2のPCR検査を受けるのであれば,様々な困難はあるが,全入院患者のPCR検査,そして全病院職員のPCR検査によるスクリーニングを国主導で,是非,病院のルーチンにすべきである。今年の秋か冬に来ることが予測されている第2波は,インフルエンザの流行と重なる可能性があるが,病院のSARS-CoV-2検査体制が確立しないままにインフルエンザの流行を迎えると,医療現場は混乱し,感染制御は一段と困難になると思われる。

【文献】
1) Gao Z, et al:J Microbiol Immunol Infect. 2020 May 15.
2) CDC. Interim Clinical Guidance for Management of Patients with Confirmed Coronavirus Disease (COVID-19). 2020 June 2.
3) Dong Y, et al:Pediatrics. 2020;145(6):e20200702.
4) Roxby AC, et al:MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(14):416-8.
5) Mizumoto K, et al:Euro Surveill. 2020;25(10):2000180.
6) Hu Z, et al:Sci China Life Sci. 2020;63(5):706-11.
7) Bai Y, et al:JAMA. 2020;323(14):1406-7.
8) 日本外科学会「全身麻酔管理下外科手術における新型コロナウイルス核酸検出の保険収載に関する要望書」(4月9日) [http://www.jssoc.or.jp/aboutus/coronavirus/info20200416.pdf]
9) 日本内科学会, 日本感染症学会合同声明文(4月21日) [http://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=149]

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新型コロナウイルス感染症:味嗅覚障害は誰に発症しやすいか?
岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)
掲載日時:2020年5月29日
新型コロナウイルス感染症の重要な初期症状として味嗅覚障害が早くから注目されている。発熱、呼吸困難といった全身症状に先行して発生するといわれ、通常はあまり見られない症状であることから対策上も重要である。こうした特異な症状は、ネット上で公開された情報だけでもおおまかな頻度や傾向を知ることができる。東京に次ぐ感染者が出た大阪府は、4月3日(この時点での感染者数累計347人)までは感染者の詳細な症状の出現状況を公表していたので、データが得られる319人について分析したところ興味深い傾向がみられた(4月4日以降は、重症、軽症等の程度のみの公表となり、詳細な症状は公表されなくなった)。319人中、無症状は37人(11.6%)で、何らかの症状を有する282人がのべ751の症状を示していた(平均2.7、最大7)。出現率でみると、最も多かったのは発熱(84.0%)で、次いで咳(50.0%)であった。味嗅覚障害はのべ34人(有症者の12%)に出現していたが、味覚障害に限って年齢階級別にみると、最も高かったのは20代で20.0%(13人/有症者65人)、次いで30代13.6%(6/44)であった()。逆に70、80代はいずれもゼロだった(30人中ゼロ)。興味深いことに性差はなかった(男9.3%[15/162]vs. 女9.2%[11/120])。ちなみに韓国大邱医師会による調査(Yunghyun Lee, et al:J of Korean Medical Society. 2020;35(18):e174.)では味嗅覚障害の出現率は15.3%で、若い患者に頻度が高い、という点で筆者による分析結果とほぼ一致している。ひとつ異なるのは、韓国での調査では明らかな性差がみられ、女性の方に頻度が高かったということだった。

わが国のコロナ対策は保健所による詳細な疫学調査が強みであり、蓄積された膨大な疫学情報を世界に発信すれば有用なエビデンスを提供できると期待される。

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緊急寄稿:日本の新型コロナ対策は成功したと言えるのか─日本の死亡者数はアジアで2番目に多い

菅谷憲夫(慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)
掲載日時:2020年5月20日

  1.    SARS-Coronavirus-2(SARS-CoV-2)の日本の流行

世界保健機関(WHO)は,本年3月11日に新型コロナウイルス〔SARS-Coronavirus-2(SARS-CoV-2)〕のパンデミックを宣言し,日本国内でも,2020年3月から流行が本格化した。4月7日に,東京,神奈川,千葉など7都府県に緊急事態宣言が出て,4月16日には,宣言が全国に拡大された。5月に入り,日本の流行も終息傾向が見られるようになった。Social Distancingや休校の効果が出てきたものと思われる。

  2.    緊急事態宣言解除の影響

これからの問題は,休校,外出やイベントの自粛,飲食店の休業,テレワークなどの対策が解除されると,流行が再燃する可能性が大きいことである。今,欧米諸国では,ロックダウンの解除,reopeningが課題となっている。国によって差はあるものの,5月中旬から徐々に厳しい外出禁止措置が解除されつつある。これがどのような影響をもたらすかは注目されるところである。ロックダウン期間中に人々が免疫を獲得したわけではなく,またSARS-CoV-2が完全に消失するとは考えられず,単に厳しい外出制限により人と人の接触が減ったので,患者数が一時的に減少したに過ぎない。夏になると,気候により流行が下火になると期待する向きもあるが,インドやフィリピンの流行状況を見ると,インフルエンザほどの季節性は望めないのではないかという意見もある。

  3.    日本のSARS-CoV-2対策は優れていたか

政府を中心に,日本の死亡者の絶対数が欧米に比べて少ないから,日本のSARS-CoV-2対策は優れていたとか,成功したという論調が,最近多く聞かれる。ところが,アジア諸国は欧米諸国に比べて,感染者数も死亡者数も圧倒的に少ない事実がある。そして,アジア諸国間で,人口10万人当たりに換算した死亡者数を比較すると,日本は,フィリピンに次いで2番目に多く,日本の対策が優れていたとは言い難い(表1)。

 

欧米諸国での人口10万人当たりのSARS-CoV-2感染者数は,アジア諸国に比べて10倍から100倍以上も多い。スペイン,イタリア,フランス,英国での感染者数は,10万人当たり275〜492人にもなるが,インド,中国,日本,韓国,台湾では,10万人当たり1.9〜21.5人に過ぎない。日本は,10万人当たり感染者数では,シンガポール,韓国,パキスタン等に次いで,5番目に位置する。シンガポールでは,最近,外国人労働者の宿舎で集団発生が起きたために,例外的に感染者数が488人と急増した。

現時点での日本の感染者数は1万6203人,死亡者数は713人である(5月16日)。致死率を計算すると,4.4%(713/1万6203)と,かなり高率である。日本の例年の季節性インフルエンザの致死率は,1000万人のインフルエンザ患者数で,5000人の死亡者が出ていると仮定すると,0.05%(5000/1000万人)程度であるから,その約100倍の致死率となる。いずれにしろ,日本の感染者数は,国際的にも批判されたが,RT-PCR検査数が異常に少ないことが影響し,信頼できる数値とは言えない。

  4.    世界各国のSARS-CoV-2致死率

世界各国の致死率(死亡者数/感染者数)は,欧米諸国では極めて高く,英国,フランス,イタリア,スペインなどでは,12〜15%となる(表1)。これは,1918年のスペインかぜの欧米の致死率1〜2%をはるかに超えて,驚くべき高値である。不明の点も多いが,欧米での高い致死率は,長期療養施設での流行により,多数の高齢者が死亡したためとも報道されている。

アジア諸国の致死率は,インドネシアとフィリピンは6%台と高いが,中国が5.5%,日本は4.4%である。韓国が2.4%,台湾が1.6%と低い。表1を見ても,アジア諸国の致死率は,欧米諸国よりも明らかに低い。

欧米よりもアジア諸国の死亡者数が少ないという現象は,スペインかぜの経験とは真逆であり,説明が困難である。例えば,スペインかぜの死亡者数は,アジア全体で1900万から3300万人で,欧州全体で230万人と報告されている(表2)。1918年当時は,アジアに比べて欧州諸国が社会経済的に圧倒的に優位だった影響と説明されてきた。社会経済的な格差は大幅に改善されたとはいえ,現在も欧州諸国が優位であると考えられるにもかかわらず,アジア諸国の死亡者数が少ない理由は説明がつかない。

  5.    人口10万人当たりSARS-CoV-2の死亡者数

欧米諸国とアジア諸国での,SARS-CoV-2流行のインパクトの違いは,10万人当たりの死亡者数で比較すると,一段と明確となる(表1)。スペイン,イタリア,フランス,英国での死亡者数は,10万人当たり40〜60人にもなる。欧米諸国の中で,流行を徹底的に抑え込んだと高く評価されるドイツでも,10万人当たり死亡者数は9.5人であるが,対照的に,アジアで最も死亡者数の多いフィリピンでも,10万人当たり0.77人に過ぎない。インド,中国,日本,韓国,台湾などでは,10万人当たり0.03〜0.56人となる。欧米諸国とアジア諸国との差は明らかである。

日本とドイツの人口10万人当たりの死亡者数を比べると,0.56人対9.47人で17倍差があり,特に多くの死亡者が出ているスペインと比べると,0.56人対58.75人で,実に105倍となる。まさに,欧米諸国ではSARS-CoV-2流行のインパクトは桁違いに大きい。
欧米とアジアとの死亡者数には,100倍の違いがあるが,原因は不明である。可能性として考えられるのが,①人種の差,②年齢構成の違い,すなわちアジア諸国では若年層が多い,③BCG接種の影響,④欧米諸国では,高い感染力を持ち病毒性の強い,アジアとは別のSARS-CoV-2流行株が出現した─等が考えられる。

  6.    日本の死亡者数はアジアでワースト2

欧米諸国と比べて死亡者数が少ないというだけで,日本のSARS-CoV-2対策が成功したという報道は誤りである。人口10万人当たりの死亡者数をアジア諸国で比べると,1位はフィリピン,2位が日本であり,日本は最も多くの死亡者が発生した国の一つである。注目されるのは,医療崩壊した武漢など,SARS-CoV-2の発生源とされた中国を上回っている点である(表1)。最も死亡者が少ない国・地域は台湾で,感染者数440人で死亡例はわずかに7人である。台湾の人口は2370万人なので,この割合を日本に当てはめると,患者数2350人,死亡者数は37人と驚異的な低値となる。日本では700人以上の死亡者が出たが,対策によっては,まだまだ多くの命を救えた可能性がある。

  7.    今季は大規模なインフルエンザ流行が予測される

2019/20年シーズンの日本のインフルエンザ流行は,例年よりも数週早く,11月中に各地で注意報が出て大流行が懸念されたが,結局,A/H1N1pdm09による流行のみで,A/香港型(H3N2)の流行はなく,2020年1月には終息した。また,2018/19年シーズンに流行がなかったB型インフルエンザも出現せず,2年連続して流行がなかった。約700万人程度の患者数と言われ,小規模の流行に終わった。したがって,2020/21年シーズンは,A/香港型(H3N2)とB型による,大規模な混合流行の可能性が高い。

  8.    おわりに

日本では,欧米と比較してSARS-CoV-2死亡者数は少ないことは事実である。しかし,それは日本の対策が成功したとか,優れていたわけではない。アジア諸国の感染者数,死亡者数は,欧米に比べて,圧倒的に少ないのであり,その中では,最大級の被害を受けているのが日本である。今,第2波の問題が世界のトピックとなっているが,日本を含めたアジア諸国では,第2波は,欧米諸国と同じような激甚な流行となる危険性もある。そのため,日本の第2波対策は,欧米の被害状況を詳しく分析して,慎重に立案,準備する必要がある。特に今季は,A/香港型とB型の大規模なインフルエンザ混合流行が予測され,インフルエンザとSARS-CoV-2の同時流行にも備える必要がある。

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ファビピラビル(アビガン®)を使いたいけど、使えないのは何故?─早期投与の評価を
中山哲夫 (日本臨床ウイルス学会幹事会有志代表)
掲載日時:2020年5月12日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が止まりません。ファビピラビル(アビガン)をはじめとした抗ウイルス薬の臨床試験が行われていますが、臨床現場では簡単に使用できません。4月28日に「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第2版」が日本感染症学会から示されました1)。その中で、抗ウイルス薬の対象と開始のタイミングとして5項目の参考基準が挙げられています。抗ウイルス薬の投与を検討する時期としては以下のように要約されます。

60歳以上の患者さん、または基礎疾患を有する患者さんでは継続的な酸素投与が必要となった段階

60歳未満で基礎疾患もない患者さんでは酸素投与下でも呼吸不全が悪化傾向にある段階

5月7日に承認されたレムデシビル(ベクルリー)以外には現在、COVID-19に適応を有する薬剤はなく適応外使用となることから、投与に際しては各医療機関の倫理委員会の承認を得る必要があります。一般的に倫理審査の段階でこの「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第2版」を遵守することが要求され、初期の肺炎患者さんには投与できない現状が続いていることが想定されます。

COVID-19は新しい感染症ですので、治療開始時期に関しては今までの臨床経験から類推することしかできませんが、抗インフルエンザ薬、抗ヘルペス薬といった抗ウイルス薬の投与は、ウイルス増殖を抑制するという薬理作用から、一般的に発症早期でなければ有効性は期待できません。中国政府の下で行われた臨床試験で得られた結果2)や、わが国の症例報告で、早期投与の有効性が期待されています3)。ファビピラビルの早期投与開始の有効性と安全性を適切な手法により評価することを提言します。

遺伝子診断に基づき、高齢者、基礎疾患を有する患者さんだけでなく、遺伝子診断されCOVID-19が強く疑われる臨床症状(発熱、咳嗽、味覚嗅覚異常等)を認め、肺炎像がある患者さん達にも重症化を予防するために、早期投与が必要と考えます。

病原体診断に時間がかかっている現状では、早期投与できる症例が限られるため、遺伝子検査の拡充も望むものです。

【文献】
1)日本感染症学会「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第2 版」(2020年4月28日)
  [http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200430.pdf]
2)Cai Q, et al:Engineering. 18 March 2020.
3)ミクスonline 2020年4年20日「日本感染症学会・新型コロナWebシンポ」
 [https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69134]

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それほど専門家ではない専門家がテレビに出ている件
倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
掲載日時:2020年5月8日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、正しい情報を発信している医師はたくさんいる。個人名を出すと失礼になるかもしれないが、北海道大学の西浦博教授や国立国際医療センターの大曲貴夫先生・忽那賢志先生などがそうである(他にもたくさんいらっしゃるが割愛する)。SNSではその信頼度はもはや神様のお墨付きレベルなのだが、なぜだろう、テレビ番組に頻繁に出ている人の中に、あれれ?と思う人がいらっしゃる気がする。もちろん、全員とは言わない。

COVID-19患者を1人も診ていない医師がしたり顔で最前線の医療従事者を批判したり、新型コロナウイルスのPCR検査について誤ったコメントをしていたり、よくもそこまで断言できるなぁと感心する。一人の人間として「感想」を述べるのはかまわないのだが、「世の中のみなさん、こうですよ」と間違ったことを流してしまうのは、ちょっとメディアリテラシーが問われる案件だ。

COVID-19に関して言えば、Twitterはデマも多いが、インフルエンサーによる真実の流布も相応に多く、情報を集めるツールとしてはとても良かったと思う。しかし、テレビについては、出ているコメンテーターによってはひどいものがあったし、総合得点ではSNSをはるかに下回っている。

今回の騒動により、メディアに対するSNSの下克上が進んでいくのではないだろうか。

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新型コロナウイルスが存在する中での小・中学校再開に向けての3つの提言
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
掲載日時:2020年5月7日
緊急事態宣言の下で小・中学校の全国的な休校が行われている。今後は、徐々に再開が目指されている。本稿では、新型コロナウイルスが存在する中での小・中学校の運営について3つの提言をしておきたい。

1. 都道府県により生活圏での流行状況を見える化する
小・中学校の再開にあたっては、過去2週間程度の生活圏における感染拡大の状況を確認することになる。しかしながら、本来は都道府県において地域ごとの過去2週間、過去1週間といった期間の感染者数を示していれば市町村の教育委員会なども参考にして判断できるが、まだまだこうしたデータを示している都道府県は少ない。今年の1月頃からの累積のデータを示していることもあるが、これでは判断ができない。都道府県では患者の居住地などのデータを持っているので、そうしたデータを参考に作成できる。もちろん、個人情報には留意し、かつ、その地域が差別偏見の対象にならないようにしなければならない。

2. 感染者が出た場合の手順や休校の目安を示す
感染者が出た場合にどうするかの学校の手順が必要である。教員は自分自身の体調管理に特に留意して、発熱または感冒症状、下痢などの症状があれば休めるように、他の教員との連携が必要である。また、生徒においても体調不良者が増えた場合、教室内で1名が診断された場合、さらに複数診断された場合などにどうするかなども決めておく必要がある。

地域での流行として高齢者施設や医療機関での感染があった場合には感染経路がわかっているが、その場合にその地域の学校をどうするかなどの判断も求められるであろう。また、同居の親が濃厚接触者などの場合の子供の対応なども決めなければならない。

3. 冬場を考慮してオンライン授業の充実を
これまでも、インフルエンザによる学級閉鎖は早ければ9月ぐらいからあった。冬場に向けて発熱やかぜ症状のある者は増える傾向がある。そこに新型コロナがあると現場は難しい判断が求められる。こういう状況を想定すると冬場の登校はかなり厳しくなる可能性を想定する必要がある。今後も年単位で続く可能性があることからオンライン授業の充実ならびに、生徒のテストなどの評価についても検討を求められている。

おわりに、小・中学校の再開については、賛成も反対も含めて議論がある。しかしながら、できる対策も多い。今後、子供の感染者が全く出ないということはないであろう。そのため、各学校が感染対策を充実させつつ、もし子供達の重症化リスクに関するエビデンスが得られたり、地域での流行拡大があれば休校にするという判断を含めてできるようにする必要がある。学校医や関わりのある医療関係者はそうした判断への支援を行う必要がある。

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COVID-19重症患者の多くが敗血症に陥っていると推定
松嶋麻子 (名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学教授)
掲載日時:2020年4月30日
2020年春、世界は新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)のパンデミックに見舞われています。影響は5月に及び、日本では最も気候がよく、お出かけ日和となるゴールデンウィークも緊急事態宣言の下で外出自粛が続いています。連日、多くの患者がCOVID-19と確定され、医療機関では日夜、感染症への対応に追われています。

今回のパンデミックでは、感染拡大の比較的早期から、重症患者に医療資源を投入すること、医療崩壊を防ぐことが強調されてきました。これは過去の新型インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行後に出された解析から、患者の予後に最も影響する因子は基礎疾患や年齢より、医療資源だったことが判明したためです。患者の急増により人工呼吸器やICU病床が不足し、院内感染により医療従事者が最前線から離脱すると、十分な医療を提供できなくなります。その結果、通常であれば救えた患者の命を救えなくなる、という意味ですが、今回はこの「医療崩壊」を防ぐため、早期から行政や専門家が一般市民に向けて対策への協力を呼び掛けています。その効果もあってか、ヨーロッパや北米と比較し、日本ではCOVID-19の患者数、死者数とも低く抑えられ、何とか医療を維持しているという現状です。

では、重症化するCOVID-19の中に、敗血症患者はどのくらいいるのでしょうか。米国・シアトルからの症例の解析報告では、肺炎による呼吸不全以外に、肝機能障害は約40%、循環作動薬を要する循環不全は約70%の症例に認められたと報告されています1)。また、中国からの報告では、肝機能障害は15%、腎機能障害も15%、凝固障害は34%、心筋障害は72%の症例で認められたと報告されています2)。重症のウイルス疾患はウイルスの直接的な影響と宿主の免疫反応により全身の臓器に影響を及ぼすことがこれまでも報告されていますが、COVID-19においても重症化する患者の多くが敗血症に陥っていることが推定されます。COVID-19に対する抗ウイルス薬とワクチン開発が進む中、それら病原体特異的な治療とともに、敗血症を呈する重症患者に対応する人材の育成やICU病床を始めとする医療資源の確保が求められています。

【文献】
1)Bhatraju PK, et al:N Engl J Med. 2020 Mar 30.
2)Guo T, et al:JAMA Cardiol. 2020 Mar 27.

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中規模民間病院における新型コロナウイルス対策
伊藤一人 (医療法人社団美心会黒沢病院病院長)
掲載日時:2020年4月30日
2020年4月27日現在の群馬県内の新型コロナウイルスの感染症数は117人と増加傾向で、人口比では0.006%と、東京都の0.028%と比べて感染者率は低くなっています。車社会の群馬県は人との接触頻度が東京の約1/5である結果と考えます。しかし県内感染症指定医療機関のベッドは逼迫しており、公立病院を中心に受け入れ体制拡充中ですが、対応困難な事態が間近に迫っています。

当院は病床数130床の中規模民間病院で、透析患者200人以上を抱え、泌尿器科と脳外科を中心に急性期を維持し、病棟担当内科医は少ない現状です。ICTが院内感染対策にあたっていますが、行政より中等症以下の肺炎症例の入院要請を受ける可能性があり、民間病院として以下のような問題に直面し、限界も感じています。

①陰圧室3室の隔離ベッドが現状での物理的・人的見地からの最大限、②感染症専門家が不在のため、より慎重な環境整備が必要:例えば専用看護ステーション設置、遠隔バイタル監視装置導入と監視カメラ新規設置による不要な患者接触の回避など、③院内感染拡大リスク回避のため専属医療チーム選任と家庭内感染予防のための住居準備、④人工呼吸器管理が困難な現状を踏まえ、入院時に倫理規定に沿った、重症化の際の対応に関する意思確認のための同意説明文書の準備、⑤感染症専門家・保健所による物理的・人的整備指導、⑥実施中の発熱外来の体制維持のためのPPEの公的補助依頼、⑦入院受け入れ時の大幅な他疾患診療制限による経営状況悪化に対する公的資金補助、⑧新型コロナウイルス感染症診療に携わる医療関係者の危険手当、感染時の重症度に応じた公的保証、⑨アビガン使用準備(臨床倫理審査委員会の承認手続き)─など問題が山積です。

民間病院の経営悪化による地域医療崩壊に陥らないため、行政からの入院要請と同時に保証は必須です。また、自己防衛は重要で、日々激変する状況ですので、即断が必要な検討課題があれば感染対策委員会を随時開催(現在週3〜4回)し、万全の対策をしています。

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COVID-19の三大死因の一つに血栓症が加わった
坂本二哉 (日本心臓病学会初代理事長)
掲載日時:2020年4月30日
2020年4月中旬、アメリカのテレビでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死因の一つとして治療抵抗性の血栓症が問題視され始めていた。アメリカの二大主要新聞の一つであるWashington Post誌(4月22日)には、Clinical-care surgeonのCraig Coopersmithが同僚との共同記載で、彼らの患者の20〜40%で血栓(blood clots)が致命傷であったとの記事が掲載された。その中には妊婦も2名含まれている。

現在、American College of Cardiology発行のJournal of the American College of Cardiology(JACC)に近々掲載予定の論文には、4月15日の時点で、Bikdeli B, Madhaven MVほか44名の共同著者による多施設研究成績がある(COVID-19 and thrombotic or thromboembolic disease:Implications for prevention,antithrombic therapy,and follow-up)。すなわち、静脈系や動脈系ともに、激烈な炎症、血小板活性化、内膜機能不全、血流停滞などによる血栓症が死因に直結する問題であると言う。高齢者に死亡例が多いのは、高血圧、糖尿病、心疾患例が少なくないためと思われるが、そのような例では既に抗血栓療法下にあるものが多く、新型コロナウイルスの感染はその治療を複雑化する。この論文はこの点を詳述している。

最近、日本でもCOVID-19症例が肺炎以外に、家庭などで待機しているうちに急激に悪化したり、突然脳症状で倒れる例が目立ってきている。孤独死例も増えている。入院中に死亡して初めてそれに気付く例もあると報じられるようになった。明らかに肺炎死ではない。専門家はその理由の解明に迷っているようであるが、血栓症あるいは播種性血管内凝固症であれば納得できる。したがって症状の軽重を問わず、血小板、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とプロトロンビン時間(PT)、フィブリン分解産物(FDP)を検討する必要があろう。全症例にできれば(あるいは積極的に)アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)やD-ダイマーの増加をチェックすべきだろう。

抗血栓剤の有効性は低いが、今後の治療法開発が待たれる。またCOVID-19では高血圧、糖尿病、心疾患合併例が死亡増加に関係すると言われているが、それに対し、ACEやARBの積極的投与の有効性が、4月3日、Bavishiらにより示唆されている(COVID-19 infection and renin angiotensin system blockers. JACC April 16, 2020)。それにしても、この物質-生命体の中間体であるウイルスに対し、本質的に有効な薬剤やワクチンの開発が喫緊の課題であることに異論はない。

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新型コロナウイルスへの対応からみる医療機関の病床機能と病床数
小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)
掲載日時:2020年4月28日
日本では病院の開設者が民間(医療法人ほか)であるものが全体の7割前後を占めており、一施設あたりの病床数は民間において少ない傾向にある。また、一施設あたりの病床数が200床未満である病院が全体の半数を、300床未満の病院が8割を占めている。その一方で、国立大学法人や私立学校法人、国立高度専門医療研究センターの一施設あたり病床数は500〜700床規模である。

地域における医療機関の病床機能については、医療法で定める「一般病床」「療養病床」「精神病床」「感染病床」「結核病床」という病床分類や、地域医療構想でいう「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」という4種の病床機能だけでなく、病院の病床数規模がその施設で担うことができる診療機能に影響するものと考える。実際、より高度な医療を行うにあたっては、先進的な医療機器の整備とともに、それを取り扱う医療従事者の数が多く必要になる。しかし、本邦では、病床数(患者数)あたりの医療従事者数は、一施設あたりの病床数が100〜150床で最も少なく、医師の常勤比率も200床未満では70%を切っている。その理由として、日本の医療保険制度では、中小規模の医療機関への診療報酬手当が比較的低く設定されていることがある。また、中小規模の病院は民間施設であることが多く、設備投資などには慎重であるほか、対象とする診療領域においても採算性を優先する傾向が強いということもある。

平時であれば、高度急性期の診療は病床数が多くICUのある公的医療機関で行い、回復期治療はリハビリ施設で、療養的な対応は中小規模の慢性期施設でといった機能分担が可能である。しかし、今回の「新型コロナウイルス感染症」のように、基礎疾患の重症度等でなく感染症への集中管理需要が問題となると、病床数が少ない施設では対応が困難である。その結果、大規模病院で本来担うべき高度急性期需要に十分対応できず、院内感染などとも相まって、いわゆる「医療崩壊」という様相をきたしやすい。

一般に感染症患者には個室管理やコホーティング対応が望ましいが、中小規模の病院がその役割を担うには、大規模病院等からの人的派遣が必要となる。ただし、民間の中小規模病院では直近の安定経営も重要であることから、必ずしもその種の役割を担うことはできない。現在、ホテルでの軽症・無症状患者への対応が進められているが、一定のリスクを背負いつつ、無限ではない医療従事者を分散させる結果ともなっている。

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新型コロナウイルスと精神科医療(2)─クラスター発生事案が増えている
平川淳一(平川病院院長、東京精神科病院協会会長)
掲載日時:2020年4月27日
4月に入り、精神科病院でのクラスター発生事案が増えてきている。閉鎖病棟に入院している患者の多くは、高齢で糖尿病や喫煙によるCOPDなどの合併症を抱える。精神症状も重く、手洗いやうがい、咳エチケットなど清潔保持もなかなかできない。他患に感染しないように自分の部屋にいるように説明してもすぐに出てきて歩き回ってしまう。このようなところに感染者が出れば、病棟丸ごと汚染し、大変なことになってしまう。また、医師の数も少なく、1人の医師が多くの病棟に出入りするため、医師の感染は病院すべてをレッドゾーンにする。そもそも精神科医の多くは点滴もできないほど身体的な管理は苦手であるため、感染防御については学生並みで、1から教育が必要である。さらに、精神科病院は病院ごとに、検査室、CTやXPなどの設備や人員配置がまちまちで機能に大きな幅があることも課題であり、1つのマニュアルでは対応できない。

このようにリスクの高い病棟が敷地内にある中で精神科救急をやらなければならない。先日、某県で措置入院した患者が、入院後に発症しクラスターが発生したと報道された。感染源は警察官の可能性が高いという。暴れている患者に複数の警察官で対応する場合、ソーシャルディスタンスは難しい。簡易のビニールカッパでは引きちぎられる。取調室などは3密(密閉、密集、密接)そのものであり、警察から病院までの移送も3密である。

また、入院経過の中で感染するため、入院時には検知できない。措置入院は県の指定病院が当番制で引き受ける仕組みになっているが、指定病院は脅威を感じ、拒否しはじめている。路上で倒れていて発熱しているようなケースは、恐ろしくて受け入れられない。もし、強く疑われる入院患者が出ても保健所はなかなかPCR検査をしてくれない。やっと検査してもらっても、結果は数日かかるため入院を継続させざるを得ない。数少ないN95マスクや防護服は1日で消えてしまう。また、結果待ちの間に症状悪化した場合の搬送は、救急車には断られ、保健所も陽性にならないと搬送しないため、どうにもならなくなる。さらに陽性の場合は精神疾患があるということで受け入れ先の病院は見つからない。そのうえ、措置入院の場合は地方自治体がその責任を持つため、逐一、行政の指示を待たなければならない。法的にも、精神保健福祉法での隔離拘束にも感染症法との齟齬があり、命と人権のどちらが優先するか苦慮する。

一方、濃厚接触したスタッフは自宅待機になるが、家族から拒否され、ホテルは断られ、自家用車に車中泊をしている人もいる。地獄である。我々のように還暦も過ぎ、生殖能力に無関係な人間には素早くアビガン投与ができるようにならないかと願うものである。

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PCR検査をめぐる再混乱─集団的同調圧力で決めてはいけない
岩田健太郎 (神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)
掲載日時:2020年4月23日
日本は世界の中でも新型コロナウイルス感染症に対する検査数を抑えていた。全例を把握しようとはせず、むしろ重症例やクラスターに的を絞って検査を行い、感染を抑え込みつつ医療崩壊を防ごうというわけだ。

患者数が少なかった時期にはこの方法はうまく行っていた。が、患者数が増えるとむしろこの方法こそが医療現場を疲弊させ、崩壊寸前にまで至らしめてしまった。検査基準を満たさぬと検査を断る保健所。検査を求めていくつもの医療機関をハシゴする患者や救命救急士たち。行き来する保健所と医療機関の折衝の電話。さっさと保健所を介さずに検査できていれば回避できていた混乱である。

患者数が増えてPCR検査のニーズも増えた。当初は一部の「専門家」の失笑すら買っていた韓国のドライブスルーも「実は便利だよね」ということでなし崩しに導入された。それはいい。

しかし、「なし崩し」にどんどんものが決まっていくパニッキーな現在の雰囲気をきわめて危ういと考えている。PCR検査はやらなければよいものでも、やればよいものでもない。検査は適切な患者に適切に行う。それだけだ。検査医学の原則をEBM的に学んでない医者が多い日本では、検査の誤用がきわめて多い。PCR検査に限った話ではない。

京都府立医科大学附属病院と京都大学医学部附属病院は共同で無症候患者に対するPCR検査の保険適用を要求した(https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/press/20200415.html)。

無症状の人を検査して、陽性者はどうすればいいのか。今、特に多い要求は分娩前妊婦や術前の「ルーチン」のPCR検査である。外科医たちの院内感染を防ぎたいというのだ。

しかし、(執筆時)現在の日本ではPCR陽性者は自動的に入院患者となる。自宅にて療養、というオプションが全国的に確立されていないからだ。加えて4月22日、埼玉県で自宅療養していた感染者がそのまま急死する事態が起きた。大多数の感染者が自然治癒するこの疾患で、重症化の徴候もないまま自宅で急死するというのは稀な事象だ。が、稀な事象を一般化して対応するのは日本の「あるある」な失敗のパターンだ。大学でもこのパターンの失敗は多い。例えば稀な研究不正が発覚すると、全研究者に毎年「研究不正はいたしません」という効果も不確かな誓約書にサインさせるというペーパーワークが増えたりする。今後、安定したPCR陽性者の多くは自宅やホテルなどで療養すべきだが、「稀な事象の一般化対応」のためにこれが困難にならないか危ぶんでいる。

無症状の妊婦や術前患者をどんどん検査すれば、感染者が増加している日本ではさらに新たな感染者が見つかるだろう。ヤブを突けば蛇が出てくるのだ。その感染者は入院患者となり、病棟管理を圧迫する。すでにたくさんの院内感染が日本各所で起きている。感染管理策がきわめて難しいのが本ウイルス感染の特徴だ。院内感染が起きれば感染した医療者はさらに入院の対象となり、濃厚接触者は自宅待機となる。マンパワーを失った病棟は感染者で膨れ上がり、疲弊した医療者の間でさらに感染が起きやすくなるという悪循環が起きる。まさに「医療崩壊」だ。

ルーチンのPCR検査、無症状の人に対するPCR検査がどういう結末を医療現場にもたらすのか、長期的視野で熟考するのが大切だ。パニックを起こして衝動にかられて集団的同調圧力で決めるべきことでは絶対にない。

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新型コロナウイルス感染対策と鼻うがい
堀田 修 (認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長)
掲載日時:2020年4月16日
昨今の世界情勢を見る限り、新型コロナウイルス感染の封じ込め政策は残念ながら失敗に終わり、結局のところ、新型コロナウイルスと人類の共存が残された道のように感じる。そこで、これから先は、これまで以上に一人ひとりの感染をいかに防ぐかという点に焦点をあてる必要がある。

わが国におけるクラスター感染が生じた背景の検証や、新型コロナウイルスがエアロゾル化した状態で数時間にわたり生存することが証明されたこと等から、新型コロナウイルスの感染様式としてエアボーン感染、つまり空気媒介感染がきわめて重要であることが広く認識されつつある。これに伴い、新型コロナウイルス感染対策として、従来の手洗い、マスク、社会的距離(個体距離)に加え、施設や乗り物における換気の重要性が最近では強調されている。

肺炎を発症するまでの新型コロナウイルス感染症の諸症状は、「のど風邪」の原因ウイルスとして知られる従来のコロナウイルス同様、「急性鼻咽腔炎(急性上咽頭炎)」の症状に矛盾しない。それ故、体内に入った新型コロナウイルスの最初の感染部位が上咽頭を中心とする鼻咽腔粘膜であることは疑う余地がない。

新型コロナウイルスの潜伏期間は平均5日間(4〜7日)で、インフルエンザ(1〜2日)に比べてかなり長く、ウイルスのエンベロープが鼻咽腔の細胞膜と融合して細胞内に取り込まれ、感染が成立するまでに比較的時間的猶予があるといえる。そこで、空気を媒介して鼻咽腔に侵入した新型コロナウイルスが、粘膜上皮細胞に取り込まれる前の段階で洗い流してしまえば、ウイルス感染を未然に防ぐことができるのではないか、という推論が成立する。

それを簡単に可能にする手段が鼻うがいである。今でも「鼻うがいは痛い」という先入観を持っている人は少なくないが、実際には0.9%等張食塩水を用いれば、鼻うがいを不快感なく簡単に実施できる。さらに、塩化ナトリウムに重曹を加えて弱アルカリ化すると、細胞の繊毛機能が向上するという報告もある。

現在、使い勝手のよい、数種の鼻うがい器具が既に市販されている。使用する洗浄液は自身で調製することも可能だが、鼻うがい一回分に分包された塩化ナトリウム粉や重曹入塩化ナトリウム粉が市販されており、それらを活用すると便利である。

新型コロナウイルス感染症は人類初の経験であり、鼻うがいのエビデンスはどこにもない。しかし、今後、有効なワクチンが登場する数年先まで、個人のレベルでこのまま、手洗いとマスク以外に何もしなかったら、この先も困難な状況が続くことは自明である。毎日1〜2回の鼻うがいという新型コロナウイルスに対する積極的感染防御の習慣が国民に広く定着することにより、新たな地平が拓かれることを期待したい。

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新型コロナウイルス感染症:抗体検査を一刻も早く確立せよ!
浅香正博 (北海道医療大学学長)
掲載日時:2020年4月13日
4月7日、日本政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して緊急事態宣言を発した。しかしながら感染者数はその後も東京を中心に急激に増え続けてきている。COVID-19のような治療薬のない未知の感染症と闘うのに最も重要なことは診断法の確立である。現在、わが国でCOVID-19に対して用いられている診断法はPCR法のみである。PCR法はウイルスの遺伝子を増幅して測定するもので高い感度を有しているが、鼻咽頭粘膜など検体採取部にウイルスが存在しない場合、感度をいくら上げても陰性と出る可能性がある。したがってCOVID-19の診断法がPCR法のみというのは現場の医師にとっては相当心許ないと思われる。

最近、世界中で注目を浴びつつあるのが抗体測定法である。新型コロナウイルス感染が生じると感染者の体内でウイルスに対する抗体ができてくるのでかなり有力な診断法となる可能性がある。感染後、数日でIgM抗体を生じ、かなりの時間が経ってから中和抗体であるIgGが生成され、感染は終結に向かう。したがって新型コロナウイルスに対するIgM抗体を測定することにより、感染が現在生じているのかどうかが明らかとなり、IgG抗体が陽性であれば、すでに感染を克服している可能性が高いことがわかる。

このようにCOVID-19の診断にとってその病期までわかる抗体検査は有用で必須なものと考えられるが、最大の問題点はその精度である。IgM抗体測定で診断できる最も有名な疾患はA型ウイルス肝炎である。その臨床的意義は十分に確立されており教科書にも記載されている。しかし、COVID-19の場合はIgM抗体測定の意義がまだ十分に解明されていない。測定キットは中国や米国などから提供されているが、抗体測定の有用性に関する評価可能な論文はまだ報告されていない。それ故、一刻も早く新型コロナウイルスに対する抗体測定の臨床的意義についてわが国をあげて確立してほしいと願っている。特に感染診断におけるIgM抗体とPCR検査との相関性については早急に検討願いたい。これはCOVID-19対策に従事する医師へのきわめて強力で重要な武器になる可能性が高い。抗体検査は血液採取により短時間で結果が得られることより、一挙に数万、数十万件の処理が可能になる。COVID-19に対する有効な治療法とワクチンのない現状では、診断法の確立によってCOVID-19への対策の幅が明らかに広がっていく。英国、米国でもすでに検討が始まっているが、感染爆発や医療崩壊に結びつけないためにも、わが国での検討を期限を決めて大急ぎで行うべきと考える。

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新型コロナウイルス感染症:感染ピークを抑えている?
岩田健太郎 (神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)
掲載日時:2020年4月2日
「新型コロナウイルス感染対策は封じ込めのフェーズは終わった、これからは感染のピークを下げて、ずらす方向にシフトすべきだ」という専門家会議の見解を耳にした。

この大方針は概ね、正しい。急激な、指数関数的感染拡大が起きてしまうと中国・武漢のように万単位の患者が発生し、たくさんの死亡者が出る。韓国もこれで苦しんだ。本稿執筆時点ではイタリア、フランス、スペインといったヨーロッパ諸国で同じことが起き、米国ではニューヨークが同じように苦しんでいる。急激な患者の拡大は医療を圧迫し、医療者を疲弊させ、医療リソースは枯渇する。それは結局患者のアウトカムにもネガティブに作用する。

急峻な感染ピークを押さえ込めば、これを回避できる。ただし。それは「感染ピーク」をきちんと把握できている場合に限る。ピークを把握できていなければ、それが高いとか低いとか、抑えているとか、抑えていないとかを論ずることはできない。

韓国と日本の検査数の違いが何度も議論されているが、意味のない議論だと私は思う。検査は感染者数の反映だ。その逆ではない。感染者が一気に激増した韓国では当然たくさんの検査を必要とした。日本ではそんな感染者の増加はない(執筆時点では)。必要ない検査はしなくてよい。ただ、それだけだ。問題は、東京などで感染者の数が増えていることだ。増えているならば検査も当然増やさねばならぬ。

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトには都の検査実施件数がグラフ化されているが、医療機関が保険適用で行った検査は含まれていない(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)。これによると3月25日の検査数は108件だ。一方、厚生労働省の資料によると同日行った保険適用分の検査数は民間検査会社で139件、大学で34件、医療機関で23件、合計196件だった。全国で、である(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000614793.pdf?fbclid=IwAR3zpt9tu9Hs2NXgSCYA8D7BSbxJVKivQKiieYgrX10zivm7IUtXHWYkMpk)。

では、東京都の真の検査数は何件だったのだろうか。3月25日の都の検査陽性者数は41人だった。私見だが、感染者がきちんと捕捉されているであろう、最低限の適切な検査数は、陽性者が検査数の10%未満に収まっている時だと考えている。とすると、25日の適切な検査数は東京都で410件以上ということになる。これでは全く足りていない。

感染ピークは抑えるべきだ。が、陽性者数を捕捉しきれず、「感染ピークが抑えられているかのように勘違いしている」状況は実に危険だ。それは将来のもっと巨大な感染ピークの予兆だからだ。

大事なのは事実だ。願望ではない。ピークを抑えたいという願望が、ピークという事実から目を背けさせる根拠となってはいけない。日本は大丈夫だろうか。

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緊急寄稿:アビガン開発者からの提言
白木公康 (千里金蘭大学副学長,富山大学名誉教授(医学部))
緊急寄稿(1) 掲載日時:2020年3月18日
緊急寄稿(2) 掲載日時:2020年3月25日
緊急寄稿(3) 掲載日時:2020年4月1日 共著:松本志郎 (熊本大学生命科学研究部小児科学講座准教授)


緊急寄稿(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察
緊急寄稿(2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療候補薬アビガンの特徴
緊急寄稿(3)COVID-19を含むウイルス感染症と抗ウイルス薬の作用の特徴
編集部より:上記は、弊社有料会員向け学術論文ですが、新型コロナウイルス対策として有益な情報であると判断し、閲覧制限を解除いたしました。どなたでもご覧いただけますが、内容は医療者向けであることにご留意ください。

COVID-19パンデミックによる抗菌薬使用量の変化
具 芳明 (国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)
掲載日時:2020年4月1日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴い、首都圏を中心にさまざまな活動の自粛が求められている(本稿は3月下旬に執筆)。COVID-19対策はもちろん重要であるが、薬剤耐性(AMR)対策はさらに長いスパンで考えていく必要がある。抗菌薬使用の増加はAMRの増加に直結する。パンデミックに伴う抗菌薬使用量の変化が後々のAMR対策の負荷に影響する可能性があり、決して無関係ではない。

パンデミックによる抗菌薬使用量の変化は、増加要因と減少要因が考えられる。まず、COVID-19が重症化した場合、急激に状態が悪化するため細菌感染症の鑑別を行いつつ抗菌薬が投与される可能性がある。したがって、重症患者の増加は抗菌薬使用の増加要因となる。また、国内での流行規模が拡大し軽症患者が多く受診することになると、「診断的治療」として抗菌薬を処方される機会が増えるかもしれない。それは本来避けるべきものではあるが、感冒をはじめとする急性気道感染症に対する抗菌薬処方がまだまだ多い現状や、他の疾患を診断するための迅速検査が感染対策の観点から行いにくいことを考えると、そのような抗菌薬処方の増加が懸念される。

一方、風邪症状での受診を控える呼びかけや、定期受診の間隔を空けるなどの動きがあり、そのため全体に外来受診患者数が減っている。受診数の減少は抗菌薬処方の減少要因となる。薬局サーベイランスによる抗菌薬処方件数をみると、2月〜3月下旬までは前年比で減少傾向となっており(http://prescription.orca.med.or.jp/syndromic/kanjyasuikei/)、現状の受診状況が続けば抗菌薬使用量が減少するものと予想される。また、今後COVID-19の迅速診断が実用化されれば、念のための抗菌薬使用が減ることが期待される。

本稿執筆時点ではCOVID-19の拡大を抑えようと懸命に取り組まれているところであり、先の状況は読めない。パンデミック対応が最優先の状況ではあるが、その状況によって抗菌薬の使用状況が大きく変化しうる。後々のAMR対策につなげるためにも状況を注視していきたい。

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日本はPCR検査を抑制しているのか?
岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)
掲載日時:2020年3月31日
パンデミックが続くなか、日本の新型コロナの感染数や死亡数に注目が集まっている。欧米諸国ほど、厳しい外出禁止等の措置がとられていないにもかかわらず、感染数も死亡数も少なすぎるのではないかと。日本は、特にオリンピックを控えていたこともあり「PCR検査を意図的に抑制し、感染者数を少なくみせかけているのでは」という憶測さえ呼んでいる。

世界中にパンデミックが拡大した今、各国の検査数、陽性者数そして死亡数のデータがネット上で公開されるようになってきたので国際比較を試みた。検査を抑制し、ハイリスク者のみに限定すれば、陽性率は高くなる。だとすると、人口当たりの検査数が少ない国ほど、検査の陽性率は高くなるのではないか?

Wikipediaに掲載された人口100万人当たりPCR検査数と検査陽性率との相関を国ごとにプロットしたのが下図である(時点は概ね3月26〜28日)。人口当たりの検査数は国によるバラツキが大きく、対数目盛りにしなければならなかった。回帰直線をひくと、予想通り、人口当たり検査数と陽性率との間には負の相関がみられた(決定係数は0.16程度と低いが)。回帰直線を延長し検査数が100万人当たり100万件(=全数検査)と交わるところが現時点での全世界の陽性率と考えられる。世界中の陽性率が高まれば、直線全体が上へ押し上げられてゆく。

興味深いのは、国情の似通った韓国の数値である。日本の検査数は人口100万人当たり226件で、陽性率5.3%、対して韓国は7502件で2.4%。陽性率だけで比較すると日本は韓国の倍以上だが、韓国はドライブスルーやウォークイン検査までやった結果である(両国のプロット間の傾きは概ね回帰直線に一致)。両国ともに、既に人口の0.1%弱程度陽性者がいると考えられる。

もはや、検査を増やしたり、陽性者の感染経路を調査するよりも、既感染者からの感染拡大による感染爆発を阻止するため国を挙げて取り組むべき状況にきている。

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新型コロナに関する一般社会の疑問と対応
勝田吉彰 (関西福祉大学社会福祉学研究科教授)
掲載日時:2020年3月31日
筆者は引き続き、COVID-19関連についてメディア対応を行っている。その中で、記者やテレビマンから問われた質問をいくつか、対応の一例とともに紹介する。彼らの準備過程で、街中の取材も行っているから、これらは一般庶民の持っている疑問をある程度反映していると思われる。

Q1.いつ収束するのでしょうか?
「神様にしかわかりません」というのが最も誠実な答えであろう。実際にその通り申し上げたことも何度かあるが、「感染して治癒した人が増え、世間に抗体が行き渡ったら、そこで盾になって感染拡大が収まってきます。およそ2年ぐらいでしょうか」と集団免疫を噛み砕いて説明する。

より短期的に当面、この“騒動”が収まるのはいつか?と聞きたい向きもある。やはり「神様しか〜」が誠実であろうが、筆者は「気温の上昇とともに、20℃台後半になったら予想感染者数がぐっと下がる可能性を指摘する論文が最近でています1)」「緯度・温度・絶対湿度の分析で、暖かくなればという論文も2)」と紹介することもある。preliminary evidence(予備的証拠)であると明記されているから、独り歩きしないようしっかり釘をさしながら。

Q2.大阪府—兵庫県の往来自粛要請は意味があったか?効果があったか?
3月20日からの3連休、大阪府民は兵庫県内に行かないようにと往来自粛要請が大阪府知事からなされた。当初、兵庫県知事が会見で不快感を表明することもあったが、要請自体はおおむね効果的に受け止められたようである。この自粛要請が効果ありやなしや? との問いかけも多数いただいた。武漢の封じ込めに関する報告はあれど3)、強制力のない要請についてのエビデンスはもちろんない。「人と人との接触回数が減るので、その部分は感染拡大の機会を減らすことはあるでしょう。ただ、このような『前例のない、初めて聞くこと』を首長が言語明瞭に表明することによるメッセージ性は大きいと思います。これは大阪の人が大阪の繁華街に出かけるのが減ったりといった、県境を越えた往来以外についても効果があったのではないでしょうか」と伝えている。(潜伏期からみて)実際の効果は1〜2週間後に、同様の要請のなかった首都圏と比較において明らかになるであろうと付け加えて。

Q3.嗅覚を失う症状があるのか?
阪神タイガース球団の藤浪選手が嗅覚脱失を訴えて受診し陽性確認されたことから、世間の関心が一挙に高まった。「確かにあります。米国の耳鼻科学会(正確には耳鼻咽喉頭頚部外科学会)は、嗅覚がなくなることを、新型コロナ感染のサインのひとつに盛り込むことを提言しています」「同学会のHPではこの件について大きくスペースを割き、その診察を経験した現場の医師が簡単に報告できるコーナーをつくっています4)。おそらく遠からず症例が集まって正式な論文も出てくるのではないでしょうか」と話している。余談であるが、このコーナーは会員でなくとも、米国外からでも簡単に入力できるので、読者諸賢も経験されたらお試しあれ。

Q4.特に避けるべきリスクは?
専門家委員会から提示されたクラスタのできやすい3条件。筆者は、子どもにも口ずさんでもらえる語呂合わせを、TVのパネルなどで採用いただいている。かみかみ。

:換気悪い

:密集(人ごみ)

:会話(至近距離)

:みんなで減らそう!

子どもも大人もこれを口ぐせにして、いま居るところが「かみかみ」じゃないかいつも意識してもらうという狙いである。専門家会議のメッセージを、咀嚼(かみかみ)して世間に広めるのも我々医療者の役割、という思いも込めている。

【文献】
1) https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.18.20036731v1.full.pdf
2) https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3550308
4) https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.16.20023770v1
3) https://www.entnet.org/content/reporting-tool-patients-anosmia-related-covid-19

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新型コロナウイルス感染症:子どものSOSと大人のストレスに対応を
小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科医長)
掲載日時:2020年3月30日
中国から始まったCOVID-19の流行は全世界へ広がり、日々感染者数、死亡者数の増加が報道され、欧米諸国では都市封鎖、外出禁止といった未曾有の対応が行われている。感染症としてのCOVID-19に焦点が当てられがちであるが、このように日々の生活が一変するような大きなストレス(精神的な面だけではなく、経済的な面もあるだろう)は、それに直面している家族に対し、大人だけではなく、乳児や幼児も含む子どもにも大きな影響を及ぼす。

子どもはこのようなストレスに対して様々な反応を示す。例えば、イライラして怒りっぽくなったり、いわゆる「赤ちゃん返り」のような行動の退行を示したり、おねしょをするようになったり、などである。「保育園で咳払いをして『コロナウイルス』と言う遊びをしていた」と言う相談があった。こういった遊びの変化もストレスに対する反応であろう。

これらの反応は子どもからのSOSである。このSOSに対して身近にいる大人は、その行動に対し怒ったりするのではなく、まず子どもに目を向け、寄り添い、子どもの言葉を聴き、子どもが安心できる環境をつくることが重要である。一緒にできる遊び(トランプやボードゲームなど)や運動をするのもよいだろう。

また、年齢に応じて正しい情報をきちんと伝えることも必要である。子どもは入ってくる断片的な情報を、誤った捉え方をして不安や恐怖が増強することがある。米国疾病予防管理センター(CDC)が子どもとCOVID-19について話す際の基本原則等についてページを作成しており参考になる1)

平時に家族機能が十分保たれている家族であれば、上記のような対応を取ることができるだろう。しかしながら、もともとの家族機能が脆弱な、もしくは様々なサポートを受けてなんとか家族機能を保ってきた家族においてこのような状況下ではその維持が難しくなってくる。そして、大人のストレスが弱い立場の子どもに向かう可能性が高くなる。すでに米国では重篤な子ども虐待が増加しているという報道もされている。このような時に、どのように子どもと家族を守っていくのか、既存のシステムでは対応ができない部分をどのようにカバーしていくのか、子ども家庭福祉に関わる専門機関は早急に対策を考えなければならない。

日本小児科学会は2020年3月13日に「普段と異なる状況下における子どもの安心・安全のために」として情報発信を行っている2)。また世界保健機関(WHO)は今回のCOVID-19流行に伴う子どものストレスへの対応についてのリーフレットを作成している3)。その他にも米国小児科学会等の海外の様々な団体が様々なリソースを公開しており参考になる。

我々も医療者として、そして家族の一員としてこれから起こるであろう大きな感染の流行に備えなければならない。

【文献】
1) https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/schools-childcare/talking-with-children.html 
2) https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=333
3) https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/helping-children-cope-with-stress-print.pdf
4)『感染症対策下における子どもの安心・安全を高めるために』(こども向け)動画版「子どものこころのサポート動画」

  第1回「子どもの一般的な反応・行動」 https://youtu.be/3F2sr_wx0qg

  第2回「見るポイント、聴くポイント」 https://www.youtube.com/watch?v=JjHKthKkJ8o

  第3回「周りの大人へもサポートを」  https://youtu.be/odnHUnJ1BAI 

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緊急寄稿:今こそ、アビガン®の使用を解禁すべき

菅谷憲夫(神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センターセンター長・小児科、慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)
掲載日時:2020年3月27日

緊急寄稿 COVID-19流行は緊急事態─今こそ、ファビピラビル(アビガン®)の使用を解禁すべき

新型コロナウイルス感染症:グレー・リノが暴れだした
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
掲載日時:2020年3月26日
新型コロナウイルス禍はあっという間に世界を駆け巡り、局地的な対応からパンデミックとして全世界的な対応が求められる局面となった。これまでの化石エネルギーを大量消費して、航空機や船舶でありとあらゆるところに移動し、洋の東西から取り寄せられた美酒や美食に舌鼓を打ち、「快適で」「豊かな」生活を送ってきた地球市民を震撼させている状況だ。残念ながら東京2020オリンピックの開催も延期となったことは止むを得ない選択だろう。

主に金融の世界に『ブラック・スワン Black Swan』という言葉と『グレー・リノGray Rhino(灰色のサイ)』という言葉がある。

われわれはスワンと言えば白い鳥だと思っている。黒鳥ブラック・スワンはあり得ないと思っている。その存在は見えにくいゆえに予見しにくいのだ。しかし、現実には存在する。したがって、発生する確率は低いが、発生すれば大きな影響を与える問題だとされ、主に発生の予測が難しい「金融危機」や「自然災害」を表す際によく使われてきた。

一方、図体の大きなグレー・リノはその存在に気が付いている。そして、草を食むおとなしいリノが一旦暴走すると、その攻撃力は凄まじく、誰も手が付けられなくなる。ここから転じ、われわれの視界の中にずっといたにも関わらず、普段はおとなしいゆえに「まぁ、大丈夫だろう」と軽視されてきたリスクや問題が爆発する場合に使われるという。

さて、今回のコロナ禍はどちらに当てはまるのか。われわれは、その存在に気が付いていたのか。コロナ禍の直前まで、目の前で議論されてきた環境破壊、海洋汚染、地球温暖化、そしてそれに伴う気象の変化はグレー・リノではなかったのか。根本的な問題の解決から目を逸らせ、経済発展のみを優先してきた西や東の超大国、その顔色をうかがう極東の島国の責任に対しての地球からのしっぺ返しだったのではないかと思われてならない。 

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産業医のための一般企業における新型コロナウイルス感染症対策(3月18日版)
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
掲載日時:2020年3月18日
産業医として企業を訪問される際には、現段階で以下の事項をお伝えする必要があると考えています。

1. 新型コロナウイルス感染症は、国内外で広がっている。高齢者への広がりをみせている地域もあり、死者が増加している。今後、国内で人口の多い地域は、いつ患者の爆発的増加(オーバーシュート)が起きてもおかしくないと考えて備えを。

2. 新型インフルエンザ等特別措置法の緊急事態宣言後に地域で感染拡大が見られた場合には、知事の権限で第45条に基づき、不要不急の外出自粛の要請や学校、興行場等の使用制限の要請等がなされる可能性がある。事業所のあるエリアが該当した場合にどう企業として動くのか。どういう業務は続け、どういう業務は減らすのか。何が社会機能維持に必要なのか。店舗は開くのか、閉じるのか。こうした頭の体操を今すぐにしておきたい。

3. 社会機能維持に関わる業態については、新型インフルエンザ等特別措置法の特定接種について定められた国民生活・国民経済安定分野が参考になる。新型インフルエンザ等対策特別措置法第二十八条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準に該当するかを確認するhttps://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78ab3693&dataType=0&pageNo=1。当面は特定接種の予定はないが、社会的使命として企業がこういう事業にあたるのかを確認しておく。

4. 社会機能維持に関わる業態においては、普段の感染対策と、感染者が社内や社員の家族に出た場合の対応などについて検討し、訓練までしておきたい。

5. 今後、流行は年単位で続くと考える。地域によって流行の波の時期や大きさは異なるが、集団免疫が得られるまでは、流行拡大を抑えるための措置として社会活動の低下や人と人の距離をあける対策が必要になる。

6. 人が集まる場を提供している事業者は、サービスのあり方や感染対策を整備したい。全国から人が集まるイベントを実施した場合に、感染が確認されると全国に広がる可能性があることから、今後も当面の実施は難しくなる可能性がある。換気が悪い、人と人との距離が近い、会話や発声がある─という3条件が揃う場は様々な対策を必要とする。

7. 海外渡航は、当面の間は、業務、個人的な理由も含めて控えることが必要である。

8. 職場での手洗いのタイミングや質がおろそかになっていないか確認する。 そのほかにもお伝えしたいことはあるが、文字数の関係で優先すべきところのみとした。これらは2020年3月18日の段階の状況に基づいた、筆者の専門的観点からの考えであることを申し添える。

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新型コロナウイルス感染症:「つくる/なる」(丸山真男)の区別から考えた対策
堀 有伸 (ほりメンタルクリニック院長)
掲載日時:2020年3月17日
私は、日本人の意識は深層において「右より」と「左より」の意識に分裂しているという仮説を持っています。今回の考察では、「右より」の意識における「前近代的、共同体的」側面と、「左より」の意識における「近代的、個人的」側面を踏まえた上で、丸山真男の日本人論にあった「なる(生成。四季が自然にめぐってくるようなイメージ)/つくる(制作。人為的につくられたもの、近代や自然科学)」の区別を、新型コロナウイルス感染症対策との関係で考えてみます。

日本人は「なる」に適応し、「つくる」方針を採用することにはとても慎重です(ただし、一旦「つくる」スイッチが入ると猛進するという特徴もあります)。今回の感染症対策でも、「ウイルスに対して多数の検査を行って実体を把握するなどの対策を徹底的に実行し、その封じ込めを目指す」という「つくる」精神に寄った戦略と、「感染力は強いが致死率が限定されているウイルスと共存しつつのコントロールを目指す」という「なる」精神に寄った戦略では、無意識的に多くの日本人が後者を選択していたのではないでしょうか。

感染力が強く制御の難しいウイルスと徹底的に戦わずに状況に合わせる日本の戦略は、ある程度奏功しているように思えます。しかし、問題点もあります。世界全体における新型コロナウイルス感染症への取り組みという視点では、日本からの貢献は少なく、「外国の基礎研究にただ乗りしている」という状況もあるのです。

もちろん「パニックや医療崩壊を防ぐ」ことは重要です。望まれているのは、高次の水準での「なる」精神と「つくる」精神の統合です。「なる」精神が優勢な日本社会にとって、「意図的に決断する」などの「つくる」精神を適切に包含することは、一つのチャレンジだと考えます。

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新型コロナウイルス感染症:指定感染症であることによる混乱の可能性
浅香正博 (北海道医療大学学長)
掲載日時:2020年3月10日
中国の武漢で始まった新型コロナウイルス感染症は中国本土を越えてわが国や韓国にまで波及し、さらに全世界に広がりを見せている。医療従事者の一人として私もわが国での新型コロナウイルス感染の広がりを憂えている。この感染症は無症候性キャリアの存在が明らかになった時点できわめて予防しにくい感染症となった。さらに1月28日、政府が本感染症を「指定感染症」に指定したことにより、医療現場では季節性インフルエンザの診療よりはるかに煩雑なものとなっている。

この感染症の診断はPCR検査によって行われている。PCR検査は感度については良好であるが、鼻咽頭粘膜などの検体採取部にウイルスが存在しない場合、感度をいくら上げても陰性と出る可能性が大きい。そのため検査陽性の場合は感染ありと断定できるが、陰性の場合は信用ができない可能性がある。PCR検査を希望者全員に行うことは感染者の数を著しく増やすことにつながると考えられる。この場合、無症状や軽度の症状の人もまとめて新型コロナウイルス感染症と診断されるので、指定感染症である以上、原則的には入院隔離措置が執られることになる。そうすると、感染症指定医療機関ではない一般の医療施設でも入院させざるを得ない状況になり、逆に院内感染を拡大させる可能性が増してくる。いつの日か、本感染症を指定感染症から解除する時がやってくると思われるが、そうなってくれると通常のインフルエンザと同様に軽症の場合は自宅待機を勧めることが可能になり、医療における混乱が生じる可能性は減少する。

個人的な意見になるが、これからの1カ月間の感染の動向により新型コロナウイルス感染症への基本方針が大きく変わる可能性が高いと考えている。新規感染者より回復者の方が多くなれば指定感染症の枠から外し、季節性インフルエンザと同じ診療方針で行えばよい。新規感染者がなお回復者を大きく上回っているのであれば、感染ルート探索のために全力を挙げ、個別の調査により感染源を完璧に絶たなければいけない。結果が前者であってほしいと強く望んでいる。

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COVID-19に際し、プライマリ・ケアが守るべきものを後輩と議論する
吉田 伸 (飯塚病院総合診療科)
掲載日時:2020年3月9日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大している。この原稿を執筆している2020年2月28日にも、政府から小中高一斉休校が要請され、医療現場・介護現場だけでなく、各家庭と教育現場も対応に追われている。

自らも恐慌に陥れば、プライマリ・ケアの専門家たる家庭医(総合診療医)の矜恃を見失う。我々はいま、誰のために、何をしなければならないのだろうか。知識欲旺盛な後輩専攻医と、当直診療の合間に議論を繰り広げた。彼はすでにあらかたのCOVID-19関連論文に目を通している強者である。彼の意見からは、ここまで数ヶ月の医学的知見が指し示す、この新しいコロナウイルス感染の病像と、それに合った対応が次々と列挙される。

私の意見はこうだ。“感染が国内に広がった今、誰の何を守るか?”である。これはけっこうはっきりしていて、自施設では、以下の方々の肺炎死の予防が最優先である。

・外来のかかりつけ患者。特に高齢・多併存疾患・免疫不全のある方々

・90余名の病棟患者

・300名の在宅患者(居宅・施設)

・60余名の透析患者

これら患者の住まいを城に見立て、安全に籠城できるように門を守るのである。門番は病院なら我々医療者、施設なら介護スタッフ、家なら家族である。

門の守り方は、これまで人類が経験してきたパンデミックとの戦いから得られた医学知見を活用し、わかりやすく伝える。城内にウイルスを持ち込ませない、門番が発症したら休む、門番が交代できるよう人員に余裕を持たせる、そして主たる患者に必要な物資と、通常に近いケアと、人とのつながりを届け続ける。それを城の状況に合わせて微調整する。プライマリ・ケアの長所は、個々の城と門番のステータスに精通しているところだから、門を守りやすい。

ちなみにこの原稿を書き始めてから、筆者は暫く咳が出ていたので診療を数日休み、自宅待機して部屋に籠もっていたが、やはりとても辛かった。予防対策では特に社会的な隔絶が起きるので、限定されたなかで残った人のつながりを確かめられるようなケアが大切だと強調しておく。

WONCA(世界家庭医機構)の会長である香港大学、Donald Li教授は、世界中の家庭医に、COVID-19の対策は「First in,Last out」であると呼びかけている1)。家庭医は最初にコミュニティで感染の予防指導と状況把握にあたり、ピークがすぎたあとにもコミュニティの身体的・精神的なダメージのアフターケアにあたる。ここにはきっと、顕在化する貧困問題も入るだろう。

簡単なわけはない、でもこれをやらねばならない。チームで。コミュニティとともに。

【文献】
1) WONCA News, Donald Li, January 2020, cited on 28th February, 2020.
[https://www.globalfamilydoctor.com/News/DonaldLiontheCoronavirus.aspx?fbclid=IwAR0ytJ4Go3KDeRqm0AIdiMGBbN53yt2UPbjKmygMaCTDvTzvUYMQqjVW_0Q]

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新型コロナウイルス対策の心構え:人同士の物理的な距離をとりながらも、関わりは続け、そして連帯すること
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
掲載日時:2020年3月9日
新型コロナウイルス感染症の今後の中長期的な予防策の一つが見えてきました。それは、「人同士の物理的な距離をとること」です。対策を難しくしている理由は、比較的元気な人が知らず知らずのうちに多くの人に感染させていることです。つまり、誰が集団に感染させているかがわからないのです。飛沫感染対策としては人と人の間を1m〜2mを空けることが必要となります。

個人のレベルでは、①換気の悪い密閉空間、②人が密集、③近距離での会話や発声─の3つが重なる場所は、流行を拡大させないために、今後も自粛を呼びかける必要があるかもしれません。懇親会や、観客も声を出すような室内でのコンサートなどが対象になります。影響を受ける企業や自営業者も多いことが想定されています。一方で、個人レベルの飛沫感染対策として様々な取組がなされています。ネットでの懇親会や、マラソンを各自で走ってタイムを報告するといった取組があります。

国レベルでは、9日から、中国と韓国からの日本への訪問者を対象に厳しい措置(2週間の待機要請など)が実施されています。これも人同士の物理的な距離をとるためです。ただ、対象は中国と韓国だけでいいのでしょうか。保健医療体制の脆弱な国において流行は容易に拡大しますが、感染者数は明らかになりません。アジアにはそうした国がまだまだあります。これらの国は高齢者が比較的少なく、影響は日本より少ないかもしれません。鎖国のような状況は現代では通常は考えられませんが、こうした国との間の往来も制限が続くかもしれません。

高齢者に接する人の数や時間を減らしたり、高齢者は人混みを避けるようにとの呼びかけも対策として含まれるようになってきています。要は高齢者に触れる機会を減らすことで感染機会を減らす取組です。ただ、高齢者施設で高齢者に触れないことは難しいですし、家族の絆の分断にもつながります。

私達の人間関係や行動を変えることが新型コロナウイルス対策となります。変わらなければ影響を受けるのは重症化リスクの高い高齢者です。次に影響が出るのは、医療を必要とするすべての人です。

今後も、様々な場所で小規模な集団感染がぼやのように始まる可能性があります。次第に火事が広がれば、地域の「緊急事態宣言」のような形で社会活動を低下させて、人同士の距離をさらに空けるということが行われます。

物理的な距離をとる一方で、我々は個人で、地域で、国を超えて連帯しなければなりません。距離をとるというのは心理的にも影響が大きいです。しかし、関わりすらも減らすという意味ではなく、距離はとるが、関わりを減らしてはいけません。個人でも、地域でも、国でも。新しい価値観と前向きな行動で、今後長く続くであろうこの流行に対応して行かなければなりません。

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新型コロナウイルス感染症:軽症者の早期受診を推奨すべきでない
山本啓央 (静岡県立こども病院総合診療科副医長)
掲載日時:2020年3月5日
No.5002「新型コロナウイルス感染症はSARSに類似(3)─中国ガイドラインを踏まえた診断・治療の提案」(菅谷憲夫)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して早期に診断する必要性を指摘されているが、これに反対する筆者の意見を述べる。

1)早期発見のメリット
基礎疾患の存在や高齢であることは重症化のリスク因子ではあるが、これらのリスク因子があったとしても、大多数は軽症で済んでおり、早期受診により重症化を予測することは不可能である。さらに、治療法が確立していない現時点で、重症化を予防する手立てはない。

また早期発見が感染拡大の予防につながると指摘されているが、現時点でのPCR検査の感度の低さから症例定義に用いるには限界があり、PCR検査の結果の如何にかかわらず、有症状者は自宅隔離する方がはるかに効果的である。

以上より、現時点で早期発見にメリットは見出せない。

2)受診の目安
未診断の無症候患者が相当数いる可能性は指摘されているが、それでもなお現時点で本邦でのCOVID-19の有病率はまだまだ低いものと推察される。発症早期においては、検査前確率として、COVID-19よりも普通感冒やインフルエンザの可能性の方がはるかに高い。世界保健機関(WHO)の報告書「Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019(COVID-19)」(https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf)など種々の報告でも、重症群は上気道症状が5〜7日程度あり、その後に肺炎に進展することが報告されており、これは普通感冒やインフルエンザといった比較的、有症状期間が短い感染症をスクリーニングする上で有用となりうる。COVID-19の検査前確率を上げる意味でも、37.5℃以上の発熱が4日以上持続するという厚生労働省の目安は妥当と考えられる。

また、肺炎への進行には発症から5〜7日間を要するため、4日以上の有症状期間を目安とすることは妥当と考えられるが、倦怠感や呼吸困難がある場合には有症状期間に関係なく受診するよう勧められており、4日間待機している間に受診のタイミングを逸し、肺炎が進行してしまうリスクは限定的と推察される。

3)最後に
軽症者の早期受診は、「医療体制の崩壊」「医療機関におけるクラスター形成」といったリスクも内在する。これらが現実となった場合、重症者の治療に支障が出るだけでなく、COVID-19以外で、平時には救命しうる疾患での死者が出てくることを危惧する。

軽症者には厚生労働省の受診の目安を参考にしながら、倦怠感や呼吸困難が出現した場合には速やかに受診できるよう準備を整えつつ、自宅で安静にしていただき、適切な受診行動に努めていただきたい。

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新型コロナウイルス感染症:患者の「不安」を解消するには
小田倉弘典 (土橋内科医院院長)
掲載日時:2020年3月4日
前回(No.5000「患者の『意思』を把握することの困難性」)、リスクをインパクトと確率の積で表現したが、実は患者はむしろ「恐ろしさ」「不安」と「未知性」の2因子が強い場合、その事象を「リスク」と感じることが従来のリスク認知研究から知られている。将来起こりうる事柄やその確率をすべて示しても、患者の理解は得られないだけでなく不安を増長すると考えられる。

患者の不安解消には、①今生じている不安がどういうものなのかに耳を傾け、②不安の対象はどの程度のものなのかを説明し、③それをどのような方法で制御できるのかを個別の事情に沿って考えるという、3つのステップが肝要と思われる。

現在新型コロナウイルス感染症に、患者も医療者も大きな不安を抱えている。①については、かぜ症状のある人にとっては「自分は感染しているのではないか」という不安の他に、「他人に移してしまうのではないか」が大きい。また診療所に通う一般の患者は「診療所に行くと感染してしまうのではないか」という不安を抱えている。一様ではない患者の不安をよく吟味することが第一歩である。その上で、未知性を補塡する目的で、②として「感染している可能性は高くないこと」「万が一感染していても約8割は軽症ですむこと」「高齢者は重症化のリスクが大きいこと」をお話する。一般の患者には「当院では動線を分けた誘導をしています」などの説明をする。そして③の制御法として「症状がこうなった場合は連絡を」「いつもより人にうつさない心がけを意識して、手洗い、マスク、規則正しい生活を」といった具体的方策を丁寧に説明する。

現状では、以上のような対話を通じて、通院する多くの患者は意外なほど冷静で整然としているのを感じる。日頃から何かあったらいつでも相談できる関係、あるいは場を作っておくことが大切であるし、そのための十全な備えや組織内のマネジメントも大切になってくることをこの危機において今更ながら痛感する。「対話」と「インフラ整備」、これらはいずれもプライマリ・ケアの原点であろう。

むしろ今問題なのは、マスメディア等の情報を過剰に捉えてしまい、不安障害に近い訴えをする人への対応である。また医療者が、上記のような患者の不安に加え、「自らの感染への不安」「自施設で感染疑いの人が出たら」といった自身へも含めた重層的な不安を抱えがちであることも指摘したい。

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新型コロナウイルス感染症:非常に厄介だが、対峙の方法はほぼ確立している
岩田健太郎 (神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)
掲載日時:2020年3月4日
新型コロナウイルス感染症に関する前回のコラム(「中国で流行している新型コロナウイルス感染症、あらゆる可能性を“想定内”に」No.4996、WEB医事新報2020年1月17日)は以下の言葉で閉じた。「我々医療者に必要なのは冷静であり続けること。しかし油断もしないこと。『分からないこと』に自覚的であり、曖昧さに耐えること。意外な新情報にも驚かないこと。つまり、あらゆる可能性を「想定内」にしておくことである」

わずか1カ月ちょっと前の言葉であるが、残念なことに想定していた最悪のシナリオに近い状況に世界は、そして日本は近づいてきている。

よく、「基本再生産数」R0という概念が感染力を表す際に用いられるが、これは新型コロナウイルスの、ウイルス学的特徴だけがもたらすわけではない。閉じた空間、クルーズ船やコンサート会場などではR0は6以上に跳ね上がり、堅牢な感染対策のもとではその値は非常に小さくなる。「このウイルスの基本再生産数は2から3で」という言い方が必ずしも妥当ではないのは、そのためだ。

新型コロナウイルスは、咳や飛沫でどんどん周囲の人々に感染していくような性格には乏しい。公共交通機関でのアウトブレイクがほとんど検出されていないことが、そのことを示唆している。逆に、密閉した空間で長い時間を共有すると感染が非常に起きやすいことも分かってきた。いわゆるクラスターである。 臨床症状は風邪のようなもので、8割は自然に良くなってしまう。そういう意味では怖くない。が、そこが怖いところでもある。インフルエンザと異なり、症状が軽微な本感染症では、多くの人々は罹患しながら外を歩き回ってしまう。症状の軽さこそが感染の広がりの原因になってしまう。

そして、8割が自然によくなるとは、2割はそうではないということを意味している。10人、100人程度の患者数であれば、日本の医療体制で対応は可能だが、中国・武漢のように万単位、それ以上の患者が発生すればそのインパクトは巨大となり、数千人規模の死亡者が出てしまいかねない。非常に厄介である。

非常に厄介ではあるが、本感染症との対峙の方法はほぼ確立している。①きちんとした手指消毒、②長時間の密閉空間共有の回避─だ。我々神戸大学病院感染症内科も毎日開いていたカンファレンスを止めて、変則的な診療体制にシフトした。医局員がみな感染者や隔離対象者になったら大変だからだ。リスクの分散も医療従事者にとって重要なテーマになる。 それでも、本稿執筆時点で中国はこの巨大な感染症危機を乗り越えようとしている。新規患者はどんどん少なくなり、生活も通常に少しずつシフトしてきているという。本感染症は封じ込め可能なことを、中国は示したのだ〔もっとも、世界保健機関(WHO)によると、3月3日時点で新規患者130例、死亡31例だから中国もまだ油断はできないのだが〕。

もちろん、日本に同じことができないわけがない。

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いまこそ「かぜ診療」を見直そう
具 芳明 (国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)
掲載日時:2020年3月3日
本稿を執筆している2月末現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内に広がり幅広い対応が行われています。医療を維持し乗り切るための正念場です。COVID-19はやや長めの経過をとることが特徴とはいえ、特異的な臨床症状があるわけではなく他の急性呼吸器感染症との鑑別は簡単ではありません。だからこそ、急性気道感染症の診療を今一度見直し、臨床経過や症状を丁寧に評価していく必要があります。

厚生労働省は2019年12月に「抗微生物薬適正使用の手引き第二版」を発表しました。これは2017年6月に発表した第一版(学童期以降の小児と成人が対象)に乳幼児編が加わったものです。タイトルからは薬のことだけ書いてありそうですが、外来における急性気道感染症と急性下痢症の診療の進め方が主な内容となっています。急性気道症状に対し、症状の経過から感染部位をしぼり、臨床診断に基づいて検査の必要性や抗菌薬の適応を判断していく流れはCOVID-19を意識した診療にも役立ちます。

かぜ診療は簡単なようで奥深いものです。それだけにポイントを押さえた診療を行っていく必要があります。急性気道感染症(感冒、急性咽頭炎、急性鼻副鼻腔炎、急性気管支炎)に対し、本来必要ないはずの抗菌薬が多く処方されていることが複数の研究で示されています。薬剤耐性(AMR)対策の基本軸のひとつは抗菌薬の不適切な使用を減らしていくことです。この分野も新たな知見が加わり、かつてとはずいぶん考え方が変わってきています。私が初期研修を受けた20年余り前には、急性副鼻腔炎や急性気管支炎はすべて細菌性だから抗菌薬を処方するようにと指導されました。しかし、これらはウイルス性のことも多いとわかってきましたし、急性副鼻腔炎は細菌性であっても軽症なら抗菌薬のメリットよりもデメリットの方がむしろ大きいことが示されています。かぜ診療をブラッシュアップするためにぜひこの手引きを活用していただければと思います。

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肺炎死亡の「正しい」恐れ方
岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)
掲載日時:2020年3月3日
日本人の死因で最も多いのはがん(悪性新生物)。これはおそらく小学生でも答えられる。では2位、3位は?となると、とたんに自信がなくなる人も多いのではないか?

正解は、2位は心疾患で、3位は2016年までは肺炎であった。2016年の死亡数は、1位の悪性新生物37万2986人、2位の心疾患(高血圧性を除く)19万8006人、そして肺炎は11万9300人で3位だった。ところが肺炎死亡は2017年に9万6841人に低下し、脳血管疾患(10万9880人)、老衰(10万1396人)に抜かれて5位に転落した。肺炎死亡は、人口高齢化に加えてその年のインフルエンザの流行状況によっても左右されるため、今後も順位は入れ替わりを続けていくことだろう。

少なくとも肺炎は、がんや心疾患に次いで多い死因であり、決して特殊なものではない。新型コロナウイルス関連肺炎による死者〇〇人という報道を見ると多くの人はパニックになる。しかし肺炎で生命を落とす人は年間約10万人もおり、自殺(約2万人)、交通死亡事故(約3700人)よりはるかに多いという簡単な事実を知れば、印象もずいぶん異なってくるだろう。

新型コロナウイルス感染症がいよいよ国内でも流行しだした。強力な感染力、潜伏期間が長い、無症候性ウイルスキャリアが存在する、重症化しやすい、等あらゆる点で新型コロナはインフルエンザよりはるかに強敵といえる。とはいえ、ウイルスそのものは新型でも、症状はインフルエンザと大きくは異ならず、肺炎も特異的ではないようである(むしろ、小児がインフルエンザに罹患した時に稀にみられる脳症などの中枢神経系合併症もあまり報告されてはいないようだ)。

肺炎死亡の2016年と翌17年の差は2万2459人にもなる。今後の流行と死亡数は予断を許さないが、もし2万人を超える死者が出たとしても数としては2016年に戻る程度ということになる。「今より2万人以上も肺炎死が多かった年に自分はどうしていただろうか」と自問することが、流行を前にしての「正しい」恐れ方といえないだろうか?

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新型コロナウイルス感染症:皮膚感染症から考える流行収束への道
大塚篤司 (京都大学医学部外胚葉性疾患創薬医学講座特定准教授)
掲載日時:2020年3月3日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大きな問題となっていますが、皮膚科領域でも感染症の流行がしばしば問題となります。代表的なものとしてトンズランス感染症があります。トンズランスは真菌の一種で、正式名称はトリコフィトン・トンズランス。このトリコフィトン属は白癬菌属というもので、水虫が同じ仲間に分類されます。トンズランスは、白癬菌(水虫菌と言い換えてもいいかもしれませんが)の中で、柔道やレスリング選手を中心に広がった感染症です。

トンズランスは10年以上前から、注意喚起されていました。私が皮膚科医になった2003年頃、高校生の柔道選手のフケと抜け毛が問題となりました。実はこれはトンズランス感染症で、体が擦れ合う格闘技選手同士でカビを移し合っていることがわかりました。この菌は頭に感染するとかゆみだけでなく脱毛を伴います。ただ、専門家以外は診断をつけることができず、病気が拡大してしまいました。さらに、脂漏性皮膚炎などの頭部湿疹と誤診してしまったケースも有り、感染が拡大しました。湿疹と誤診した結果、ステロイド外用剤を使用してトンズランス感染症が悪化したケースもあります。トンズランス感染症は診断さえつけば、抗真菌剤で治療が可能です。専門家の中で知識が共有され、柔道やレスリングをしている一般の方に病気の啓蒙をすることで流行は収まりました。

新型コロナウイルス感染症では、感染症を専門としない医師がマスコミに出演し、間違った情報やデマ、そして陰謀論を語ることで一般の方の不安を増長させています。こういう時こそ、私たち医師はEBMをもとに、論文から正しい情報を読み取り、一般の方に啓蒙していくことが大切ではないかと思っています。

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新型コロナウイルス感染症:エビデンスのない話にどう対応するか
勝田吉彰 (関西福祉大学社会福祉学研究科教授)
掲載日時:2020年3月3日
筆者は今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行開始早々から、地元テレビ局をはじめとしたテレビ出演や取材依頼に対応しながら、「エビデンスがない/ある」では片づけられない会話を多々経験した。「これは本当か?」と問われる場合もあれば、巷に流れるデマ特集の取材という形もある。

巷に広がる流言・噂の中には、明らかに事実ではない(けれど悪魔の証明は難しい)ものもSNSに存在し、「信じさせる力」を持つものもある。私は「妄想系」と「針小棒大系」に分けて説明している。いくつかの対応例とともに紹介する。

例1:エアロゾル感染するというが、通勤電車の端から端まで感染する?

飛沫感染と飛沫核感染の違いを解説するが、「コロナとインフルは、ブクブクに着ぶくれした状態で悪さが出来ます。しかし(飛沫の衣がとれて)、裸になってしまうとシュンと大人しくなってしまうのです。対して素っ裸でも元気に悪さが出来るのが麻疹です」と着ぶくれの動作など織り交ぜると理解されやすいようである。そして、通勤電車の端から端ではなく、半径2〜3m以内が要注意と確認する。

なお、エアロゾル感染の実例では重症急性呼吸器症候群(SARS)流行中に発生した厦門ガーデン事件1)を引用する。これは、老朽化した集合住宅の下水配管のクラックから噴出し、同方向の部屋住民に糞口感染が広がったもので、当時、北京で外務省医務官の職にあった筆者も大いに緊張したものである(すわ空気感染がどんどん拡大するのか…という雰囲気だった)。しかしその後同様事例は報じられず、例外的なものと理解されていった。「下水管がヒビだらけで汚水が飛散するボロアパートに貴方はお住まいですか?」と問いかける。

例2:新型コロナウイルスは26℃で死滅するから、その温度の湯を飲めばよい

これはSNSでかなり拡散しているそうである。他に56℃説もあると聞く。妄想系の最たるものだが、ここは「病気にかかったときに、発熱しますよね。あれはウイルスが生きにくい温度まで体温を上げてやっつけるのですよ。だから体温より低い温度でなくなることはあり得ません」と伝え、ついでに「では、何℃が良いかといえば、100℃です。100℃で5分煮沸します」と追加しても良い。

例3:コロナウイルスは太陽にさらされると死滅する

針小棒大系の流言・噂では、なかには例3のように、必ずしも害にはならないこともある。「ウイルスに対してこれひとつで完璧というものはありません。テストで80点の合格点をとるためには、こちらで5点、あちらで3点と積み上げていきますね。そうした、100点分の1点ぐらいな感じでしょうか」と前置きしつつ、例えば、窓を開けて布団を干すような行為は、部屋の換気など意味があるので継続していただくと良いだろう。

例4:コロナウイルスにはニンニク/ショウガ/唐辛子/コショウ/etcが良い

針小棒大系の流言・噂は、さまざまな「口から入れるもの」としても登場する。「エビデンスがない」で切って捨てるには少々もったいないものもあれば、有害なものもある。まずは、有害なものを見極めて明確に否定する。そして、前記の「80点の合格点をとるには1点の積み重ね」を話すとともに、「大金を積むと効果があるということは絶対にない」と釘をさす。“新型コロナに効果がある”などと謳う1錠1000円のサプリなどが登場することを心配している(あるいはひょっとして、すでに登場しているのであろうか…)。

例5:マスクはウイルス予防になる/ならない

一般社会にはマスクで予防「できる」「できない」両見解が入り乱れている。筆者が好んで紹介するのが、「外来における医療従事者のインフルエンザの感染予防効果において、サージカルマスクとN95マスクで有意差がなかった」とする米CDC・ジョンズホプキンズらの報告2)である。なぜか。「これは医療従事者というセッティングです。全員が正しく装着している前提なのです。でも貴方は鼻を出しておられますよね。その付け方ではこの知見に当てはまらないのです。まず鼻まで上げて、そして…」と、マスクの正しい付け方の話に持っていける点が利用価値である。

【文献】
1) Yu IT, et al:Clin Infect Dis. 2014;58(5):683-6. [https://academic.oup.com/cid/article/58/5/683/365793]
2) Outpatient study finds masks, respirators equally protective [http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/09/outpatient-study-finds-masks-respirators-equally-protective]

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新型コロナウイルス感染症:マスク不足を助長したTwitter
倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
掲載日時:2020年3月2日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内で発症し始めたあたりから、街からマスクが消えた。一部のパニックになった人たちが、買い占めに動いてしまったためだ。当院は、在庫があまり残っていない状態だったため、窮地に立たされてしまった。

オイルショックが思い浮かぶ。1973年、原油高騰により当時の中曽根康弘通商産業大臣が紙の節約について呼びかけたことにより、トイレットペーパーがなくなるかもしれない、とパニックに陥る現象が起こった。当時はSNSなどなかったから、それがデマであるという情報が浸透するまでに時間がかかってしまった。

こんなバカみたいな騒動は、令和時代の現代では起こらないだろうと思っていた。しかし、今回COVID-19発生時にマスク買い占めが起こった。マスクは一般の人たちが外を歩く上で感染を予防する疫学的エビデンスはないのだが、あたかも毎日使用するのが当然であるかのように、全員がマスクに殺到してしまった。これを助長したのはSNSだと思う。そして、マスク増産によってトイレットペーパーの原材料が不足するというデマまで流れた。主婦の間でLINEやTwitterを媒体にして、瞬く間にデマ情報が拡散されていった。これにより、オイルショックの再来とも言える、トイレットペーパーの買い占めがふたたび起こったのだ。冷静に考えればマスクの原材料とトイレットペーパーの原材料はまったく別なのだが、そのような情報の正しさを確かめることなくパニックに走ってしまうのは、むしろ現代のSNSの情報量が豊富すぎるからなのかもしれない。

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新型コロナウイルス感染症:軽症者に外来でPCR検査を行ってはいけない理由
川口篤也(函館稜北病院総合診療科科長)
掲載日時:2020年3月2日
国内の新型コロナウイルス感染症患者数は、2月29日12時時点で、チャーター便、クルーズ船の患者を除いて197例となった(厚労省ホームページ)。ここにきて国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、市中感染のフェーズに入ったと言わざるを得ない。そのような中で政府は3月中を目処に新型コロナウイルスのPCR検査を保険適用にすることを発表した。これは一見朗報と捉える向きもあるが、個人的にはむしろ感染を拡大させることを危惧している。確かに、入院中の肺炎患者でもPCR検査が断られた事例(検査件数の上限があるためやむを得ないこともある)がなくなることや、保健所を通さずに医師が疑った場合に迅速に検査に進めるというメリットはある。しかし、入院の必要のない軽症者に対して外来でPCR検査をすることには現時点で以下のデメリットばかりが目立つ。

①検査希望の外来受診者が増えて、医療機関内で感染が拡がる。

②発熱者外来を設置したとしても、検査希望者が殺到すれば、発熱者外来受診者間で濃厚接触が起こる(発熱者を十分な間隔で隔離できる施設を持つところはほとんどない)。

③検査をする人はN95マスクも含めた個人防護具(PPE)の装着が必要(現在PPEの在庫は十分ではなく、すぐに足りなくなったり、そもそも用意できないクリニックも多数ある)。

④一回検査をする毎に適切な手順でPPEを脱ぐ必要があるが、少しでも不適切な手順があると感染のリスクが上がる。

⑤上記に人員を割くことができ、PPEも十分に用意できるところは限られ、結果としてさらに感染症指定医療機関やそれに準じた病院への業務負荷が起こる(そのような病院では入院でも重症患者の治療にあたっており、かなりの業務負荷がすでに起こっているし、現在学校の休校で出勤できる職員数も減っており、余分な人員がある医療機関はほとんどない)。

⑥新型コロナウイルスのPCR検査の感度はそれほど高くない(おそらく70%を下回る…確定の数字ではない)ため、結果が陰性だった患者が新型コロナウイルス感染症ではないと思い、自宅療養を続けずに職場などで感染を増やすリスクが増す。

以上より、PCR検査が保険適用となっても、検査対象は感染確定者の濃厚接触者、(入院を要する)肺炎患者に絞って検査するのが妥当と現時点では考える。

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新型コロナウイルス感染症:どうしていま、「風邪をひいたら自宅安静が大切」か
中山久仁子(マイファミリークリニック蒲郡院長)
掲載日時:2020年3月2日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の一般的な経過は、日本でも地域的な感染が見られるようになり、一般診療所や外来に感冒症状で受診された患者さんが、COVID-19なのか、そうでないのか、迷う場面がこれから増えてくると思います。「初期には鑑別ができない」、これがCOVID-19の特徴です。

COVID-19の臨床経過は、感染から約5日間(1〜12.5日)の潜伏期を経て、発熱、呼吸器症状(咳、喀痰、鼻汁など)などが出現。一部の患者さんでは嘔吐、下痢などの消化器症状を呈し、それらの症状が比較的長く、約7日間持続するという特徴があります。さらに、発熱の程度に比して、強い倦怠感を訴えることが多いのも特徴です。

普通の風邪やインフルエンザあるいは急性胃腸炎は、発症から3〜4日目までが症状のピークで、その後改善傾向となるのが一般的で、COVID-19との違いは、症状が普通の風邪にそっくりであるものの、症状の経過期間が長いという点です。COVID-19は、その後、症状が1週間前後続き、約8割は自然に軽快して治癒し、約2割は肺炎を合併します。ただし、基礎疾患がある場合は、経過の早い段階で肺炎に至ることもあるため、要注意です。

さて、このように初期には診断が難しいので、一般の方にお伝えしたいことは、今後、感冒様症状がある時は「自分は、COVID-19かもしれない」と、慌てずに自覚しておくことが大事だということです。ほとんどのCOVID-19は軽い風邪症状で治りますし、特別な治療薬はありませんので、バランスの良い食事を摂り、しっかり休養して体力を高めておくことが大切です。もう一つ大切なことが、症状が軽い期間でも、他の人に感染をうつすということです。自分が肺炎にならないために、そして人にうつさないためには、風邪症状のある数日間は自宅でしっかり安静にして過ごしましょう。少しでも「風邪かな?」と思ったら、仕事はすぐに休みましょう。

患者さんから「COVID-19かもしれないのに自宅安静なんて、症状が辛くても病院にも受診してはいけないなんて不安」と聞かれますが、初期の症状は軽いので自宅安静できます。むしろ自宅安静できないほどに症状が強い時は、それは COVID-19の重症または他の病気の可能性もあるので、早めに受診しましょう。

「『風邪かな?』と思ったら、自宅安静」。自分にとっても、他人にとっても大切なことです。

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新型コロナウイルス感染症:精神科病院の懸念と対応
平川淳一(平川病院院長、東京精神科病院協会会長)
掲載日時:2020年2月28日
新型コロナウイルスが世界を襲っている。ダイアモンド・プリンセス号の封じ込め作戦は逆に感染の温床となった印象もある。しかし、あの約3700人もの乗客、乗員がそのまま上陸していたら、到底、対応は困難であり、瞬く間に破綻したと思われる。苦渋の決断ではあるが、正しい対応であったと評価するしかないと思う。

精神科病院は豪華客船ではないが、閉鎖病棟はまさしく船室と同じ閉鎖環境である。そのうえ、患者の多くは清潔保持ができず、咳エチケットもできず、人によってはスタッフに向かって咳やくしゃみを吹きかけるように病状をアピールする場合もある。ノロウイルスなどが一旦はやると、次々に感染し、収束するまでに1カ月以上かかる場合もあり、本来の治療どころではなくなる。また、スタッフも感染し出勤停止になるため、もともと一般科より少ないスタッフが減り、さらに少人数で対応しなければならなくなる。少ない人数での長期戦は非常に消耗する。それでもノロで死亡する可能性は低いので、まだ気が軽い。インフルエンザもワクチンやタミフルの予防投与などを行い、拡散を防げる時代になったので、これもなんとかしのげるようになった。

そこに今回の新型コロナウイルスである。感染力が強く、無症状の潜伏期から感染力があり、一旦治ってからも、再燃し、肺炎を起こす。治療法も確立されておらず、高齢者や合併症を持っていると命の危険があるという。こんなウイルスが精神科病院に入り込んだら、たいへんなことになる。とにかく、面会者には病棟に入らないでもらい、職員には徹底して持ち込まないように出勤時には検温し、37.5度を超えた場合は出勤をさせない。また、精神科には必要な社会復帰のための外出訓練も遠慮してもらう。手洗いの方法を指導し、アルコール依存症患者にも、エタノールの消毒薬を勧める。外来患者には、熱があったら、なるべく外出は控え、呼吸困難などがあれば一般科の病院に行くようにお願いしている。

現在の精神科病院は、入院から外来に移行途中の患者が多く、入院患者と外来患者が接触、混在する場所が多い。特に1カ所しかない喫煙場に患者が集中する。ここがまさしく感染の温床となる。精神科の患者はなかなか禁煙してもらえない。なんとか早く収束して、安心できる日が来てもらいたいものである。

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新型コロナウイルス感染症:オンライン医療相談・オンライン診療を地域住民に提供すべきだ
黒木春郎(外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)
掲載日時:2020年2月27日

新型コロナウイルス問題で医療現場は大混乱だ。規模の大きな病院等では疑い例の受け入れ態勢の構築が、私どものような地域の診療施設は住民の不安解消と健康保持のための具体的提案が迫られている。

地域での問題を2点に整理する。一つは、「コロナ感染かも」という不安を抱えた患者さんに対するケアとフォローである。もう一つは、慢性疾患等で診察や処方を必要としている人たちが感染を避けるために通院自粛している事態である。

私はこの両方の課題ともに、オンライン医療相談ないしオンライン診療が役に立ち得ると考える。

私の診療所がある千葉県いすみ市では、市長の英断により2020年2月27日から、新型コロナに関するオンライン医療相談費用に対して市による全額助成がスタートする。市内2カ所の医療機関が相談を担当する。心配のある人は医療機関のオンライン診療システムにアクセスして予約を取り、医師とテレビ画面を通してやり取りをする。医師からは患者個人へ医学的なアドバイスを行う。

もう一つの、通院自粛に関しては、保険診療の規定にある「電話等再診」を利用して処方箋を出すことができる。電話等再診の「等」とは、テレビ電話を含むと解される。感染リスクが高い(と懸念される)診療所の待合室で時間を過ごすこともなく、自宅でオンライン診療を受け、処方を受けることができる。これについては2020年2月25日に発表された政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」の8ページに、「風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、電話による診療等により処方箋を発行するなど、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制をあらかじめ構築する」と記載されている。これまで疾患別に制限を受けていたオンライン診療の、緊急時における実質的な制限撤廃である。

基礎自治体独自の方策と、国の通達に則った積極的な解決策を、ぜひ、地域医療の現場から実効性のあるものにしていきたいと切望する。(2020年2月26日記)

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「産業医のための一般企業で伝えておきたい新型コロナウイルス10の知識」
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念されています。感染拡大を防止するために、これまで明らかとなった新型コロナウイルス感染症の特徴を踏まえ、産業医が知っておくべき10の対策をお伝えします(2020年2月26日版)。

1. 感染者の半分ぐらいはほとんど症状がない。感染者の約30%は入院が必要ない「軽症」だが、発熱、だるさ、咳、食欲不振などの症状はそれなりにある。高齢者(特に70歳以上)が感染すると症状が重くなり、死亡リスクも高い。高齢者以外は死亡リスクは低い。

2. 感染拡大の場の傾向が明らかになってきた。腕を伸ばせば届くくらいの近距離で、一定時間の会話をし、多くの人が集まるところの感染リスクが高い。飲み会、立食パーティー、カラオケ、病院などが代表例。

3. 接触感染により広がる傾向があり、手洗いが特に重要。出勤時、外出時、食事の前に30秒程度石鹸を用いた丁寧な手洗いを「全員」が行う。

4. 今、一番恐れられている事態は、高齢者の重症患者が多数出ること。100人の高齢者の施設で感染が広がると(広がりやすい)、30人程度が発熱などの症状、そのうち10人程度が入院、そのうち数人が重篤な肺炎となるような事態が想定される。

5. 医療機関に感染対策が必要な重篤な肺炎が数人入院すると、医療提供が困難になる。人工呼吸器が不足する可能性もある。通常なら助けられる脳梗塞、心筋梗塞、交通事故などの対応も難しくなる。

6. 今は、できるだけ感染者の数を減らして重症者を増やさないことが大事。しかし、今後の見通しは不明で、社会活動の自粛をいつまで続けるのか判断が難しい。流行は年単位で続く見込みであるため、地域での流行をモニタリングする。

7. 企業で最も大事な対策は、①発熱者や症状のある人は職場に絶対に来させない。②職場に着いたら全員が手を洗い職場を汚染しない。③流行が確認された地域ではテレワークや時差出勤を配慮できるように体制の整備をする(または今から実施する)。④症状のある人(発熱者も含め)の人数を確認する、職場で熱を測定できるようにする。⑤事業継続計画を作成し、実行できるようにする。

8. 感染して発症するまでの潜伏期間は2日〜7日程度、長い場合は14日程度。同居の家族が感染したなどの濃厚接触者は、最後に症状のある人に接触してから潜伏期間が自宅待機になる可能性あり(最長21日とも考えられる)。

9. 症状があって(感染して)休んだ後に、復帰において医療機関に「陰性であることの証明」は求めない。陽性でも、検査の限界で陰性となっている可能性もある。発熱後(感染後)どのくらいたって職場に復帰させるかの根拠はない。念のため解熱後48時間ぐらいは空けたい。

10. 治療薬やワクチンは過度な期待はできない。まずは予防が重要。ただし、怪しい対策グッズには手を出さないようにしたい。

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「新型コロナウイルス感染症:一般医療機関向け、診療継続計画ワークブックの紹介」
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

政府は25日、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定しました。新型コロナウイルス感染が広がる中で、今後地域で患者数が大幅に増えた状況になると、一般の医療機関でも診療が求められるようになります。

通常必要となる医療とともに新型コロナウイルスによる重症例の対応をバランス良く行うためには計画作りが必要です。私は、そうした計画作りを行うためのワークブック「いまからできる!一般医療機関のための新型コロナ地域感染期の診療継続計画づくり」(A4版12頁)を作成しました。もともとは、新型インフルエンザを想定したものですが、考え方は同様です。今すぐ、特に病院では診療継続計画作りの議論が必要です。

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「新型コロナウイルス感染症はSARSに類似(3)─中国ガイドラインを踏まえた診断・治療の提案」
菅谷憲夫 (神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センターセンター長・小児科、慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)

SARS-CoV-2

新型コロナウイルスの正式名称は国際ウイルス分類委員会(ICTV)によりSARS-CoV-2と決定された。感染症名はCOVID-19であるが、ウイルス名に注目すれば、この感染症が、SARSの類縁疾患であることは明白で(SARSのウイルス名はSARS-Coronavirus)、これを季節性インフルエンザと比較してきた日本のマスコミ報道は本質的に誤りであった。それが国民、医療関係者の認識を誤らせ、さらに政府の対策が遅れた原因となった可能性がある。COVID-19はインフルエンザに比べ、はるかに重い疾患であることは間違いない(No.5001「COVID-19はSARSに類似(2)」参照)。COVID-19の国内での流行も本格的に始まった今、本稿では診断と治療の問題点を述べ、中国で公開されているCOVID-19診断治療ガイドラインについても説明する。

COVID-19患者の早期診断を

2月17日に厚労省からCOVID-19を疑った場合の受診の基準が、「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」として明らかにされた(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596905.pdf)。そこでは、風邪症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く人、倦怠感や呼吸困難のある場合は、帰国者・接触者相談センターに相談することを指示している。高齢者や基礎疾患のある場合は、2日を目処とした。

上記の受診基準は、患者がパニック状態となって病院を受診して、診療が混乱することを防ぐために作られたものと思われる。しかし、受診基準の医学的根拠が示されていない。はたして4日間受診を待っても重症化しないという医学的根拠があるのだろうか。PCR検査によるCOVID-19確定診断がすぐにできないにしても、早期に臨床診断をして、患者に対して、適切な指示を与えることが重要ではないだろうか。

現時点で日本では、発熱や咳嗽のある患者はインフルエンザや他のウイルス性感冒の可能性が高いと考えられるが、多くの発熱患者はCOVID-19を心配して強い不安感を持つと思われる。この状況で、4日間経過を見るような受診基準は、早期診断の機会を失い、発症5日目以降にCOVID-19と診断された場合に、肺炎が進行し重症化する危険性もある。特に問題なのは、周囲への感染である。発症後4〜5日間に、診断のつかないままに、家族や会社、学校で感染が拡大する危険性が高い。今、臨床で最も重要なのは、COVID-19が疑われる、軽症例をいかにピックアップするかである。筆者は、蔓延を防止する意味でも、早期にCOVID-19疑い例なのか、あるいは他の疾患の可能性が高いのか、医師が診断して、家庭での過ごし方を指導すべきと考えている。

SARS-CoV-2 流行期に酸素投与が必要な重症例は直ちに入院となり、優先的にPCR検査も実施されるので診断は容易である。

中国のガイドライン

中国では、『A rapid advice guideline for the diagnosis and treatment of 2019 novel coronavirus(2019-nCoV)infected pneumonia』として、国際的な基準に基づいたガイドラインが発行されている(Jin YH, et al:Mil Med Res. 2020;7(1):4.)。https://doi.org/10.1186/s40779-020-0233-6

日本の医療関係者にも有用なものと考えられるので、以下に紹介する。

 1. 疑い例

中国ガイドラインでは疑い例の臨床所見として、早期では、発熱と胸部X線またはCTでの肺陰影、白血球数の正常または減少、リンパ球減少が挙げられている。

軽症例の定義では、発熱が38度以下、呼吸困難や喘息がないこと、さらに咳もない場合があることが記載されているので、軽症例の診断はかなり難しい。筆者も、発熱がなく、咳もほとんどなかったが、胸部X線とCTで明らかな肺炎像を認めた1症例を経験した。

これから日本では、発熱、咳などを主訴として来院した患者には、まずインフルエンザ迅速診断を実施し、陽性であればノイラミニダーゼ阻害薬で治療することが基本となる。これは厚労省の「相談・受診の目安」でも、“現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等に御相談ください”と記載されている。しかし、多くの人々は、発熱しても4日間は受診を待つような指示と誤解している。

問題は、インフルエンザ陰性例がCOVID-19疑い例か、という点である。中国ガイドラインでは胸部X線(CTがベター)と血液検査が必要となる。肺に陰影があり、白血球減少、特にリンパ球減少を認めた場合は、COVID-19の疑い例となる。ここまでの検査は、ほとんどの病院で可能であり、疑い例を見つけ出すことができる。また胸部X線で正常であれば、その時点ではCOVID-19は否定的であり、多くの発熱患者は安堵して自宅で静養することができる。

小児、特に乳幼児では、発熱、咳嗽は日常的な症状であり、この症状で必ずしも胸部X線や血液検査を行う必要はないと筆者は考えている。しかし成人では、発熱、咳嗽で来院した患者では、胸部X線は必須の検査かもしれない。

 2. 軽症疑い例のホームケア

中国ガイドラインでは、疑い例は隔離が必要となる。入院隔離が望ましいが、軽症の場合は、家庭での隔離も考慮可能とされている。

中国ガイドラインでは、軽症疑い例のホームケアの注意点が列記されている。興味深いのは、strong recommendationとして、患者は個室で生活するが、共用部分であるトイレやキッチンは常に窓を開けておくこと、また患者と接する時は、家庭内でもN95マスクを使用するように指示している点である。このように、早期に疑い例を見つけ出して、場合によっては、自宅で経過観察するのは合理的な対応であるし、家庭での注意点をstrongまたはweak recommendationとして示しているのは優れた対応である。

 3. COVID-19の除外診断

疑い例では、他のウイルス性肺炎との鑑別が必要となる。中国ガイドラインでは、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、 アデノウイルス、RSウイルス、ライノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎などが示されている。

 4. 治療

確定診断例は当然であるが、疑い例も原則として、入院して隔離する。重症例はICUに収容する。strong recommendationとして、酸素投与は当然であるが、high flow nasal oxygen therapy(商品名:ネーザルハイフローTMなど)、非侵襲的換気療法によっても呼吸不全が改善しない場合は挿管し、人工呼吸器を装着する。さらに、低酸素血症が改善しない場合は、strong recommendationとして、体外式膜型人工肺(ECMO)で治療する。

 5. 抗ウイルス薬

現時点では、RCTで証明された抗ウイルス薬治療はない。しかし、weak recommendationであるが、α-インターフェロンの吸入療法とロピナビル・リトナビルの経口投与が記載されている。日本国内でも、ロピナビル・リトナビルは商品名カレトラとして、10年以上前から抗HIV薬として使用され、COVID-19の入院例にすでに使用されている。十分なエビデンスではないが、後ろ向きコホート研究やケーススタディなどにより、重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)の治療で、重症化防止に一定の有効性が認められている(Chan KS, et al:Hong Kong Med J. 2003;9(6):399-406.)。

中国ガイドラインによると、最近のシステマティックレビューでは、早期治療ではロピナビル・リトナビルの有効性が期待できるというが、中国語の文献のため、筆者は確認できなかった。

インフルエンザでも、ノイラミニダーゼ阻害薬の有効性は早期治療が原則であり、ロピナビル・リトナビルを使用する場合も、重症肺炎に進行すると効果は期待できないと考えられる。最近、抗インフルエンザ薬、ファビピラビル(商品名:アビガン)をCOVID-19に使用する動きもあるが、これもインフルエンザの経験からは早期治療が原則と考えられる。このような薬物治療の観点からすると、厚労省の発表した“4日間は自宅待機”という受診基準は早期治療の機会を失する可能性がある。

おわりに:国の受診基準は許容できない

SARS-CoV-2感染症(COVID-19)は、日本でも流行拡大期に入ってきた。政府は2月25日に決定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」の中で、感染拡大を防ぐため、地域で患者数が大幅に増えた状況では、症状が軽い場合は自宅で療養を求める方針を発表した。筆者は、国のCOVID-19を疑った場合の受診基準が、風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合としたのは、医学的に根拠が示されていないだけでなく、重症感染症の受診制限となってしまうと危惧され、臨床家から見ても、患者の立場でも、とても許容できない基準であると感じている。 

ご意見・ご感想はこちらより

2020年2月24日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(128~139例目)

2020年2月23日報道資料
▶80代男性死亡:横浜港で検疫中のクルーズ船に関連した患者の死亡について

2020年2月20日報道資料
▶厚生労働省職員1名及び内閣官房職員1名が感染:クルーズ船に関連した新型コロナウイルス感染者について
▶80代2名死亡:横浜港で検疫中のクルーズ船に関連した患者の死亡について

2020年2月19日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(60~69例目)
▶陽性確認は延べ3011名中621名:横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第13報)
▶国内外の発生状況:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月19日版)

2020年2月18日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(54~59例目)
▶横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第12報)
▶国内外の発生状況:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月18日版)

「COVID-19はSARSに類似(2)─インフルエンザに比べはるかに重い疾患」
菅谷憲夫 (神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センターセンター長・小児科、慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)は国内での流行も危惧される状況になった。国内での人から人への感染が進行しているにもかかわらず、日本政府が中国からの入国を禁止しなかったことは、COVID-19の感染性、重症度を過小評価した重大な失策と考えられる。すでに水際対策の段階は越えて、日本各地にウイルスが蔓延している可能性がある。

 常識に反した報道

日本のマスコミが一貫して、重症度は低いと報道してきたことも、わが国の対策の遅れに影響したと考えられる。国内初のCOVID-19死亡例が報告された2月13日以後も、依然としてマスコミで流れているのは、COVID-19は季節性インフルエンザ程度の感染症であり、恐れることはないという論調である。これは明らかな誤りである。
常識で考えても、季節性インフルエンザ程度の致死率、重症度の疾患であれば、世界保健機関(WHO)が非常事態宣言をすることはないし、中国が莫大な経済的な損失にもかかわらず、大規模な都市封鎖を実施するわけがない。米国、シンガポール、台湾等では、中国からの入国禁止を実施しているが、常識で考えれば、季節性インフルエンザ程度の感染症でこのような対策がとられるわけがない。

 COVID-19と2009年ブタインフルエンザ(H1N1pdm09)

死亡率は現時点で、中国全体では2%程度であるが、湖北省を除いた中国では、0.2%と10分の1程度に低下する。2009年のブタインフルエンザのパンデミックで、日本では2000万人以上の患者発生があったにもかかわらず、わずか200例の死亡者しか報告されていない。死亡率は0.001%、10万人に1人に過ぎない。湖北省を除いた中国のCOVID-19の死亡率0.2%は、2009年のH1N1パンデミック時の日本の死亡率に比べて200倍高い。

 COVID-19とスペインかぜ

世界史上、最大の死亡者が出た感染症は、1918年のスペインかぜ(インフルエンザのパンデミック)であった。この時の死亡率は、欧米や日本では1〜2%程度であった。日本では、当時の人口5400万人の約半数が罹患した。内務省の1917〜19年までの報告では、2380万人が罹患して、38万9000人の死亡が報告された。死亡率は1.6%である。現時点でのCOVID-19の死亡率は、中国全体で2.2%であるが、前回(No.4998「新型コロナウイルス感染症はSARSに類似、厳重な警戒が必要」)に書いたように、「それをもって、COVID-19の死亡率が低いと報道されているのは誤りである。1918年の悪名高いスペインかぜの死亡率は、欧米諸国や日本では、1〜2%であった。COVID-19の死亡率は、スペインかぜ並みに高いと報道するのが、医学的に正しい」ということになる。

 COVID-19、日本の重症例(厚労省ホームページ2月14日)

2月13日に日本で初めて死亡例が確認されたが、日本国内の発症例30例でみると、3.3%(1/30例)の死亡率となる。さらに、ICUに収容されて人工呼吸器で治療されている重症例も、札幌、和歌山などから報告されているので、重症化しやすいことが示唆されている。横浜のクルーズ船の218症例では、現時点では死亡例は出ていないが、少なくとも2例のICU入院患者が報告され、他に8例の重症者がいる。ここでも、重症化しやすい感染症であることが明らかで、季節性インフルエンザと同等の重症度とは思えない。2月14日現在、日本の全症例248例では死亡1例で、率にすると0.4%となる。
スペインかぜでも、少なくとも80%の患者は普通の、いわば軽症のインフルエンザの経過であったと言われている。日本国内で40万人近い死亡者が出たスペインかぜであっても、80%の患者では軽症であった。COVID-19で軽症が多いのは不思議なことではないし、安全安心情報ではない。軽症の患者群から、感染が拡大するからである。WHOの推測ではCOVID-19感染者のうち、①82%が軽症、②15%が重症、③3%が重篤と報道されている(https://www.bbc.com/news/health-51048366)。
3%の患者が重篤になる感染症を、季節性インフルエンザと同等とすることはできない。

 COVID-19と季節性インフルエンザ

季節性インフルエンザでの死亡は、ほとんどが高齢者である。日本の人口動態統計でインフルエンザ死亡をみると、インフルエンザ患者数が多かった2018年には3240人の死亡数であり、その年の患者数は、約1500万〜2000万人と報告されているので(https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1718.pdf)、それを分母にすると、0.016〜0.022%の死亡率となる。湖北省を除いた中国の死亡率0.2%は、日本の季節性インフルエンザの10倍の死亡率となる。ただし、この0.2%は、中国政府による、徹底的な外出禁止、映画館、劇場、食堂の閉鎖、都市全体の封鎖により患者発生を抑え、医療体制を十分に整えて達成された数値である。現状の何ら対策のない日本では、さらに高い死亡率になる可能性がある。

 COVID-19と医療従事者の院内感染

COVID-19がインフルエンザと比べ、はるかに深刻な疾患であることの明白な証拠は、高い院内感染率である。中国の国家衛生健康委員会(National Health Commission)は、2月14日、COVID-19により、これまでに医療従事者6人が死亡したと発表した。日本でも多数の医療従事者が毎年インフルエンザに罹患しているが、死亡例は、全国でもほとんど聞いたことがない。 武漢の大学病院でのCOVID-19患者138例の入院例の中で、57例(41%)が院内感染であることが、最近、JAMA誌に報告された。驚くべき事に、院内感染で入院した57例中40例、全体の29%(40/138例)は医療従事者であった(Wang D, et al:JAMA. 2020.)。https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2761044
高い医療レベルの大学病院でも〔ICU患者の一部を体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)で治療している事が記載されている〕、高率に医療従事者が院内感染して入院していることから、COVID-19を季節性インフルエンザ程度とみることは危険であるし、医療関係者にとって誤情報であるとも言えよう。

 おわりに:オリンピックは大丈夫か?

現在、日本国内でもCOVID-19の流行が始まりつつある深刻な状況を迎えている。ノイラミニダーゼ阻害薬のあるインフルエンザと、診断キットも治療薬もないCOVID-19とは、国民、特に医療関係者の不安感は比較にならない。特に、JAMA誌に掲載された院内感染の報告のインパクトは強く、今後、国内で流行が拡大すると、多くの病院が院内感染により、機能が低下する可能性も考えられる。
先日、国際的に高名なインフルエンザ学者と話した際に、彼は、東京オリンピック開催は危ういという意見であった。夏になると、コロナウイルス、そしてCOVID-19は流行の勢いを失うからオリンピックは大丈夫という意見に対して、日本が夏になると、ブラジルやアルゼンチンなど南半球諸国は冬になり、そこで活発化するCOVID-19の流行が、選手団、観客と共に東京オリンピックに持ち込まれるのではないかという、インフルエンザ専門家らしい意見であった。オリンピックを無事に開催するためには、日本国内の流行を抑えるだけでなく、南半球での流行状況を観察して綿密な対策が必要となる。

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2020年2月17日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(神奈川県、和歌山県、愛知県)
▶国内外の発生状況:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月17日版)
▶陽性確認は延べ1723名中454名:横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第11報)

2020年2月16日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(東京都、愛知県)
▶横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第10報)

2020年2月15日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生(43例目)について
▶新たに67名の陽性確認:横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第9報)
▶和歌山県で新たに3名が感染:型コロナウイルスに関連した患者(38、39、40例目)の発生について

2020年2月14日報道資料
▶患者搬送の自治体職員1名が感染:新型コロナウイルスに関連した患者の発生について
▶5自治体より6名の感染報告:新型コロナウイルスに関連した患者の発生について
▶宿泊施設に宿泊中の第3便145名中陽性は1名:新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の検査結果について
▶国内外の発生状況:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月14日版)

「新型コロナウイルス感染症による『隔離』処遇が適切に行われることを願って」
堀 有伸(ほりメンタルクリニック院長)
新型コロナウイルス感染症が注目を集めています。精神科医の立場から一つ気になるテーマを見つけました。医学的な名目で行われる、人間の「隔離」処遇についてです。
現在、横浜港には大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が検疫のために停船を指示され、その中には約2700人の乗客と約1000人の乗務員がいるそうです。船内での感染の拡大が危惧される状況で、乗客の中の約1400人は日本以外の国の住民であるため、アメリカをはじめとした諸外国は、自国民にどのような処遇が行われるかを注視している状況と聞いています。
「隔離」は社会防衛と個人の人権が激しく葛藤を起こす事態であり、医学的な評価・介入はもとより、法的・社会的な面を含めた総合的な判断と実践を求められる措置です。しかし残念ながら日本社会には、この「隔離」を不適切に使用してしまった過去があります。精神科病院への精神障害者の長期入院の問題です。詳細は割愛しますが、1955年に約4万4000床だった精神科病床は、その後、精神科病院において患者が職員の暴力によって死亡するような事件が問題となったのにもかかわらず、1993年には約36万床にまで増加しました。最近は相当に短くなったものの、以前には数十年という単位で入院した患者さんも珍しくありませんでした。この精神科病院への長期入院の問題は十分に検証されないまま、現在に至っています。
私は日本社会で「隔離」が不適切に行われやすい背景に、日本社会での人間関係の特徴があると考えています。「外の人としてよそよそしく接する」か、「身内の上下関係に巻き込んで下に見る、あるいは上として仰ぎ奉る」かのどちらかに傾きやすく、基本的人権を尊重するというグローバルな形式を重んじて対等な関係を構築することが苦手です。
私は日本社会がこの弱点を乗り越え、今回のような「隔離」処遇が適切に行われることを願ってやみません。

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「新型コロナウイルス感染症:『怪しい民間療法』と『不安・恐怖』は表裏一体」
大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)
新型コロナウイルス感染症の話題が、連日テレビのトップニュースで報道されている。そして、国民感情としては、パニックとまではいかなくても浮足立っている状況になっているのではないだろうか?
このように国全体が不安に襲われているような状況に際して、きまって便乗してくるのが、怪しい民間療法である。「ニンニクを食べると感染予防になる」「ゴマ油を塗ると予防できる」など根拠のない大量の情報が拡散している現状を、世界保健機構(WHO)は「インフォデミック(Infodemic:情報の伝染という意味のinformation epidemicを短縮した言葉)」と指摘している。
今回、なぜインフォデミックのような状況が起こるのか、そして解決策はあるのかについて考えてみたい。
まずは、民間療法で商売をする立場の視点で考えてみる。健康に良いとされる商品の販売方法にはパターンがあるとされる。①ものごとを白黒つける・単純化する、②感情を揺さぶる(不安・恐怖)、③都合よく願いを叶える商品の販売─といったものである。具体的には、「年をとると免疫力が下がる(①単純化)」「免疫力が下がると病気になる(②不安・恐怖)」「このサプリを飲んで免疫力をアップして病気知らず!(③都合よく願いを叶える)」となる。そもそも「免疫力」という言葉そのものが医学用語ではないのだが、商業用にキャッチーなフレーズとして広く受け入れられている現状がある。そのほかにも「アンチエイジング」「腸活」など類似のフレーズは枚挙にいとまがない。つまるところ、多くの民間療法は、人の不安や恐怖といった感情と抱き合わせで販売されている。そこで、新型コロナウイルス感染症の報道が繰り返され、国民の多くが不安や恐怖に襲われている今のような状況は、商売をする側からすれば絶好の機会になるわけである。
次に、情報の受け手であり消費者にもなりうる立場で考えてみる。行動経済学分野におけるプロスペクト理論では、人は損失を回避する傾向(損失回避バイアス)があり、危機的状況に置かれるとリスクテイカーになることが指摘されている。新型コロナウイルス感染症に関して言えば、国民の多くが、少しでも感染を避けるための行動をしやすい傾向にあり、不確かな情報であっても試してみようという傾向(リスクテイカー)に陥っている可能性がある。
では、民間療法側に有利で国民側に不利な状況における解決策はあるのだろうか? 筆者自身、「怪しい民間療法にだまされないためには、これだけ注意すれば大丈夫!」といった特効薬のような解決策は残念ながら持ち合わせていない。ただ、解決策の一つになるのではないかと期待していることはある。
2017年に東京都が報告した「健康と保健医療に関する世論調査」によると、健康や医療に関する情報の入手方法は「テレビ」が78%と圧倒的な割合を占めている。つまり、テレビを通じて、新型コロナウイルス感染症に関する正確な情報がわかりやすく解説され、世の中に出回っている不確かな情報に関する注意喚起が繰り返し伝えられることで、怪しい民間療法に騙される国民が減るのではないかと考える。地味で退屈な報道になってしまう(視聴率もとれない)かもしれない。しかし、視聴率重視で国民の不安を煽るようなセンセーショナルな報道は、怪しい民間療法に騙される国民を増やすことに加担しているということにもなりかねない。他人任せの解決策になってしまうが、メディアの矜持に期待したい。

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2020年2月13日報道資料
▶20代男性 渡航歴なし:新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(30例目)
▶50代男性 医師:新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(29例目)
▶70代男性 渡航歴なし:新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(28例目)
▶80代女性 死亡:新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(27例目)
▶宿泊施設に宿泊中の第2便199名は全員陰性:新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の検査結果について
▶検査陽性は延べ713名中218名:横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第8報)

「新型コロナウイルス:国内の次の『Xデー』に備える」
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
新型コロナウイルスについて、国内での次の「Xデー」に備えておかなければならない。
日本国内で、中国に渡航または居住していた方との接触がない方の新型コロナウイルスの感染が確認されたら、それはその方の住んでいる地域において感染が拡大している可能性を示唆することになる。この段階で国内での対策は一段階レベルが上がる。
そうした場合に何がその地域で起きるのか。2009年の新型インフルエンザ流行の際には、その地域において祭りなど人の集まるイベントの中止、学校の休校が行われ、さらに感染者への不合理な批判なども聞かれた。 国内で、新型コロナウイルスの検査態勢の拡充を求める声もあるが、こうした事態が起こりえることも我々は想定しておかなければならない。
そして、2009年の新型インフルエンザ流行時の対応と今回が異なるのは、日本が世界からどう見られているか─という点である。すでに、日本の感染者の数はクルーズ船の感染者も含めると中国本土以外の国と比較すると最も多い国である。こうしたことから、中国本土を対象に入国制限などを行っている国々が、日本国内での感染者確認により日本も入国制限の対象にする可能性があることを危惧している。日本の状況は、より正確に海外へも発信しなければならない。
いつまで対策を強化するのかも課題だ。感染症対策は、感染力と、感染した場合の重症度で評価することとなる。報道によると、日本では、クルーズ船の174名を含めると203名の感染が検査で確認された(2月12日時点)。日本の医療レベルの治療を受けた場合に死亡率がどうなるかという情報を多くの先進国が注目しているところである。
また、国内での感染例が確認された場合に、現在の「水際対策」をどうするのかも柔軟に見直す必要が出てくる。対策を厳しくすることはそれほど難しくないが、緩和するのはとても難しい。2009年の際には国会で議論になったことが思い出される。
Xデーに備えて、実際に、その地域でイベントの中止や学校の休校をするのか。出張の中止などをするのか。トラックの運転手などがその地域に行くことを拒否するなどして物流が滞ることがないのか。この段階から議論しておかなければならない。
この後、新型コロナウイルスの話題がいつまで続くかはわからないが、東京五輪・パラリンピックまではくすぶると予想される。冷静で確実な対応を実施して、世界に日本の力を発信したい。

2020年2月12日報道資料
▶国内外の発生状況一覧:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月12日版)
▶ホテル滞在中の第1便帰国邦人197名は全員陰性:新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の検査結果について
▶新たに39名の陽性を確認:横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第7報)
▶検疫官1名が新型コロナウイルスに感染

2020年2月11日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(25例目)
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(24例目)

2020年2月10日報道資料
▶横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第6報)
▶新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月10日版)

2020年2月9日報道資料
▶横浜港で検疫中のクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第5報)

2020年2月8日報道資料
▶横浜港に寄港したクルーズ船内で確認された新型コロナウイルス感染症について(第4報)

2020年2月7日報道資料
▶新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月7日版)
▶新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人等の状況について

識者コメント及び報道資料一覧(新着順)

「産業医のための新型コロナウイルス対策:一般企業でも『まん延期』の話をしよう」
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
そろそろ、この段階で、新型コロナウイルスの感染が国内の多数の地域で確認される「まん延期」となった場合の一般企業の対応として、手洗い等の職員個人の感染予防策に加えて、追加で検討すべき感染対策ご紹介します。

 1. 自宅待機させるべき職員の基準

新型コロナウイルスは軽症者が多く、検査もインフルエンザのように簡易キットがあるわけではないので判断が難しくなりそうです。重症者で検査に至り新型コロナウイルスが陽性となった場合には、濃厚接触者は潜伏期間などを勘案して休みにするでしょうか。一方で、有給にするのか、それとも会社指示とするのかなどは2009年の新型インフルエンザ流行時と同様に議論になるところです。2009年は一時的に同居家族にインフルエンザ感染があった場合には職員の出勤を停止とした企業もありました。濃厚接触者は誰か、自宅待機の日数は何日なのかは悩ましいです。
また、くれぐれも企業として新型コロナウイルスの陰性証明や治癒証明などを医療機関に求めたりしないように、衛生委員会などで確認してください。

 2. 時差出勤などの対応の実施

満員電車やバスの車中は感染者がいた場合には感染リスクがやや高くなります。満員電車やバスに乗車することを不安に思う職員もいるでしょう。今後、時差出勤やテレワークを許可するかどうかを考える必要があるかもしれません。これは事業所の近隣地域で感染が確認された場合、特に初期には必要となる対策かもしれません。ただ、実際にこの対策を行うには「この部署はいいけど、あの部署はだめ」という不公平感なども課題になりそうです。

 3. 地域において流行を拡大させる事業の自粛や縮小

すでに感染者の出ている奈良県などでは、観光客の激減が報告されています。かつて、2009年の新型インフルエンザでは初期に流行が確認された神戸市では「神戸まつり」を中止にし、さらに学校の閉鎖が行われました。もし事業所のある地域で感染拡大が明らかになった場合に、こうした感染を拡大させるようなイベントなどの事業の中止ということも想定しておくことは必要です。また、学校の閉鎖があれば小さな子供がいる親は出勤できなくなる可能性もあります。
大事なことは、これらの措置を行うにしても「いつ止めるか」ということも考えて始めることです。また様々な副次的な影響も考慮して意思決定する必要があります。

【参考】
▶ 和田耕治, 他:新型インフルエンザ発生時に企業に必要な感染対策に関する意思決定とそのための情報. 産衛誌. 2012;54:77-81. [https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/2/54_wadai11005/_pdf/-char/ja]

(著者注:22020年2月6日朝の情報を基にしています)

「新型コロナウイルス水際対策はこのままでいいのか、いつまでやるのか」
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
クルーズ船での検疫が話題になるなど水際対策への取材がヒートアップしています。おそらくテレビとしては取材しやすいのでしょう。2009年の新型インフルエンザ流行時の水際対策を超える対応になってきていますが、この対策をいつ緩和するのか考えないといけない時期です。
以下は2010年6月10日に厚生労働省の新型インフルエンザ(A/HlNl)対策総括会議で示された水際対策への教訓です。

①国は、ウイルスの病原性や症状の特徴、国内外での発生状況、諸外国における水際対策の情報等を踏まえ、専門家の意見を基に機動的に水際対策の縮小などの見直しが可能となるようにすべきである。
②水際対策の縮小などの判断が早期に可能となるよう、厚生労働省および国立感染症研究所は、海外における感染症発生動向の早期探知や発生国における感染状況等の情報収集・分析が可能となるような仕組みを構築することが必要である。
③入国者の健康監視については、検疫の効果や保健所の対応能力等も踏まえて効果的・効率的に実施できるよう、感染力だけでなく致死率等健康へのインパクト等を考慮しつつ、健康監視の対象者の範囲を必要最小限とするとともに、その中止の基準を明確にするなど、柔軟な対応を行えるような仕組みとすべきである。
④水際対策の効果については、検疫により感染拡大時期を遅らせる意義はあるとする意見はあるが、その有効性を証明する科学的根拠は明らかでないので、さらに知見を収集することが必要である。また、専門家などからの意見収集の機会を設けるべきである。
⑤「水際対策」との用語については、「侵入を完壁に防ぐための対策」との誤解を与えない観点から、その名称について検討しつつ、その役割について十分な周知が必要である。

日本も含めて、多くの国が今後水際対策をどのように緩和していくのかシナリオを考えなければなりません。おそらく緩和できるのは、日本国内で数百の症例が確認され、重症度なども確認されてからになるでしょう。しかし、現在は軽症例が多く、新型コロナウイルスの検査が身近な医療機関では実施できませんので確認が難しそうです。そのため、国内で感染が広がり、水際対策の効果が限定的と示唆されるのは、肺炎患者でコロナウイルスの検査が陽性とわかり、中国との関連がなかったという症例が出た時となるでしょう。
水際対策だけで医療者が疲弊することがないように適正なリソースの配分をお願いしたいところです。
(著者注:2020年2月5日までの情報を基にしています)

2020年2月5日報道資料
▶国立国際医療研究センター:当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者3例の報告
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(21例目)
▶新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(20例目)
▶新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月5日版)
2020年2月4日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(19例目)
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(18例目)
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(17例目)
▶新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月4日版)

「新型コロナウイルス感染症はSARSに類似、厳重な警戒が必要」
菅谷憲夫(神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センターセンター長・小児科、慶應義塾大学医学部客員教授、WHO重症インフルエンザガイドライン委員)
2020年1月になって、中国武漢での2019 Novel Coronavirus(2019-nCoV)の流行が大きな問題となっている。しかし、日本政府の対策は遅れ、国内での人から人への感染が明らかになった時点でも、中国の感染地域からの団体観光旅行を放置したのは、2019-nCoVの感染性、重症度を過小評価したと考えられる。日本では、コロナウイルスの重症感染症である重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の患者発生がなく、全く経験のなかったことも原因である。
日本のマスコミは、2019-nCoVの重症度は低いと報道してきた。典型的には以下のような報道がされてきた。例えば、「専門家らは、人から人への感染は限られていると指摘し、国内で感染が広がる危険性はほぼないと冷静な対応を求めている」とか、「国内の人は特別な対策は必要ない。手洗いやマスクなど、インフルエンザの予防策を取れば足りると話す」などである(1月20日時事ドットコムニュース)。このような論説が国内で流布したことは、わが国の対策の遅れに影響したと筆者は感じている。国民は、マスコミの断片的な報道に惑わされ、SARSクラスの重症感染症流行の危機的状況にあることを理解しないままに、国内で感染患者が続発している(2月2日現在)。
医療関係者は、確実な論文を基に、コロナウイルスについて理解、判断すべきであると考え、いくつかの論文内容を解説したい。

 Lancet論文

最近、Lancet誌に、本年1月2日時点での武漢の2019-nCoV入院41例の詳細な報告があった。この論文の最も重要な内容は、武漢の2019-nCoV感染症は、臨床的に、かなりSARSに類似していると指摘している点である(Chaolin Huang, et al:Lancet. 2020.)。 https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S0140-6736%2820%2930183-5
言い換えれば、中国では、SARS類似疾患が大流行しているので、武漢のような大都市を封鎖してでも制圧を目指しているのである。中国が共産党政府だから、強制的な大規模な対策を取っているのではない。
論文で取り上げた入院患者41例は、全例が肺炎であった。平均年齢は49歳で、32%の患者が基礎疾患を持っていたが、高血圧も含まれ、日本で報道されているように、高齢者や重いハイリスク患者だけが感染、重症化するわけではない。
死亡者は6例で致死率は14.6%(6/41)であったが、これは、今後、確定診断法が普及して軽症例も明らかになれば、低下していくものと思われる。現在は数%であるが(2.2%、259/11791、2月2日現在)、それをもって、2019-nCoVの致死率が低いと報道されているのは誤りである。1918年の悪名高いスペインかぜ(インフルエンザのパンデミック)の致死率は、欧米諸国や日本では、1〜2%であった。2019-nCoVの致死率は、スペインかぜ並みに高いと報道するのが、医学的に正しい。
2019-nCoV症例はLancet論文ではSARSと似た症状を呈すると報告され、41例中13例(32%)がICU入院となっている。日本では、今のところ重症例が出ていないが、今後、日本でも症例数が増加するに従い、呼吸不全など重症例が出てくると思われる。マスコミ主導で、手洗い、マスク着用により、2019-nCoV感染が防げるような報道がされているが、そのような医学的な根拠は全くない。現状では、治療薬のないSARS類似の重症感染症と認識することが重要である。
初発症状は、発熱(98%)、咳(76%)、筋肉痛、全身倦怠などである。発症後8日で、22例(55%)が呼吸困難を訴えている。ICU入院や人工換気までは、発症後10.5日であり、急性感染症としては、比較的に長い経過で重症化することがわかる。日本では、病院へのアクセスが良いので、多くが発症早期に診断されると思われるが、早期症状が軽症であっても油断できない。
検査所見では、ウイルス感染の特徴である白血球減少症、リンパ球減少症が報告されている。プロカルシトニンは正常であった。入院時の肺炎が、細菌性ではなくて、ウイルス性であることがわかる。本論文では、2019-nCoV感染症の高率のICU入院率、致死率がSARSに類似していることが繰り返し述べられている。
医療関係者への感染も認められ、本論文では、2019-nCoV感染症患者の診察には空気予防策が必要で、N-95マスクなど個人用防護具の装備が強く勧奨されている。サージカルマスク着用だけの診察は危険である。現時点では、陰圧室を備えた環境での診療が、医療従事者への感染を防ぐために必須と筆者は考えている。なお本論文では、抗ウイルス薬の併用を治験していることが述べられている。

 NEJM論文

New England Journal of Medicine誌にも、武漢の2019-nCoV肺炎の疫学的な検討論文が発表された(Qun Li, et al:N Engl J Med. 2020.)。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001316
2019年12月から本年1月の最初の425例を対象としている。患者の年齢は59歳(中央値)で、潜伏期間は平均5.2日(95%CI:4.1〜7.0)と報告された。また感染力を示す基本再生産数(Basic reproduction number、R0)は、2.2 (95%CI:1.4〜3.9)であった。
基本再生産数は今回、マスコミでも取り上げられているが、SARSやインフルエンザに近く、ワクチンや治療薬がない現在は、国内で流行が起きれば、多数の患者が発生することになる。マスク着用、手洗いを勧奨することは良いのだが、それで感染拡大を防げるという報道は誤りである。
さらに、同じNew England Journal of Medicine誌に、ドイツから潜伏期に感染した症例が報告されている。33歳の健康ドイツ人が1月24日に咳、発熱があり、一時39度まで発熱したが、26日には回復し1月27日に仕事に戻った。この時点で、2019-nCoVと診断された。この患者は1月20日、21日に上海から来たビジネスパートナーと会社で会った。ビジネスパートナーは、この会合時は無症状であり、翌日、ドイツから上海へ帰国の機内で発症し、1月26日に上海で2019-nCoVと確診された。1月28日には、ドイツで、さらに3名が発症した。
潜伏期といえども、発症の前日であり、感染性があるのは十分に理解できる。さらに2019-nCoVが強い感染力を持つことに驚かされる。上海からのビジネスパートナー(Index case)から、4名のドイツ人が発症している。また33歳のドイツ人の検体からは、仕事に戻った時点でも、108/mLと高濃度のコロナウイルスが検出されている。単純には比較できないが、成人のインフルエンザのウイルス排出に比べて、100倍か1000倍はウイルス量が高濃度である。臨床的に回復しても、かなりウイルスは残存し、感染性は残る可能性がある。

 まとめ

世界保健機関(WHO)が、緊急事態を宣言するかどうかを検討した23日の会合で緊急事態を宣言しなかったことは、世界に対して、2019-nCoVは重大な感染症ではないという誤解を生み、各国の対策が遅れたのは残念であった。結局、1月30日、WHOは2019-nCoV流行を緊急事態と宣言した。 武漢の病院の状況を見ると、患者があふれ、まるで、新型インフルエンザの大流行を想像させる。実際、中国での2019-nCoV流行による混乱を見ると、1918年のスペインかぜ大流行と似た事態となっている。100年後の現代、医療体制の整備された中国の大都市でさえ、SARS類似の感染症が蔓延し、治療法も予防法もないとすれば、結局、スペインかぜ当時の混乱が再現されている。
米国でのスペインかぜ流行時、1918年10月から多くの都市で、学校、映画館、劇場、バー、教会までも閉鎖され、商店の開店時間も制限、集会も禁止された。衛生当局は、特に有効な対処法がないので、道路に消防車から絶え間なく水の散布を試みた。多くの町で、マスクを着用しないとバスなどの公共の交通機関には乗車できず、サンフランシスコではマスク着用を義務とし、従わない場合は逮捕された。全ての病院が満床となり、廊下に患者があふれ、多数の医師、看護師がインフルエンザに罹患した。患者を収容できないので、各地で、教会などの大きな建物は臨時の病院となった。これらの光景は、今、武漢周辺で実際に起きていることでもある。
中国では、2019-nCoVに対して、大規模な、そして徹底した都市の封鎖、外出禁止などが実施されている。ワクチンや治療薬がないからである。もしもインフルエンザ並みの感染力があり、SARS類似の重篤な疾患が流行すれば、わが国でも、手洗い、マスク着用だけではなく、感染地域からの入国禁止、集会、イベントの禁止など、強力な政府主導の対策が必要となるであろう。
スペインかぜでは、世界中で封鎖が実施されたが、大流行を抑えることはできず、世界で数千万人が死亡した。筆者が注目しているのは、武漢や中国各地で実施されている封鎖、外出禁止で2019-nCoV流行を抑えることができるかどうかである。 

「新型コロナウイルス対策:そろそろ、医療機関で『まん延期』の話をしよう」
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
新型コロナウイルスに関する報道や対策はどんどん過熱しているようです。個人レベルでは、この世の終わりのように不安になっている方もいるようです。
そうしたなか、皆さんの医療機関では、国内での感染拡大に備えた対応の準備は進んでいるでしょうか? 指定感染症の施行が前倒しになり、2月1日からとなりました。「指定感染症だから感染症指定医療機関に送ればよいので、うちは関係ない」と思われていないことを願います。
まだ国内の感染例は、見かけ上は「追えている状況」ですが、検査できる施設は地方衛生研究所または国立感染症研究所に限られますし、軽症例も多いことから実際には追えていない状況を想定した方がよいでしょう。指定感染症だからと軽症の患者を入院させることによる感染防護の効果は限定的です。しかし、最近の報道を見ているとそうせざるをえないような雰囲気が出ていることに危惧をしています。読者の皆さんも軽症例にPCRなどの検査を行うというのは意味がないと思いませんか?
香港では、医療機関の職員が一斉に休業して抗議をしているという報道もあります。医療機関での対応において医療職はなんとか説得できても、事務職やその他の職種は不安があるという声も聞きます。今一度この段階から、国内での流行が見られて、感染者が増えた場合には医療機関で受け入れる可能性や基本となる感染対策を見直していただければと思います。
まん延した場合の対策の目的は、新型インフルエンザと同様に次の様になります。
「感染拡大を可能な限り抑制し、国民の生命および健康を保護する。具体的には、感染拡大による流行のピーク時の患者数等をなるべく少なくして医療体制への負荷を軽減するとともに、医療体制の強化を図ることで、患者数等が医療提供のキャパシティを超えないようにして、必要な患者が適切な医療を受けられるようにする。そして、重症者数や死亡者数を減らすこと」です。
新型インフルエンザでも、感染が拡大する前は患者を入院させ、感染拡大の抑制を考えますが、ある程度感染が広がった場合の対策の主眼は、「重症者の治療」、つまり死亡者を減らすということになります。この段階ではすべての医療機関が対応することが求められます。
武漢からの帰国者や、現地での大変な状況、そして各国の入国拒否などの報道に目を奪われ過ぎず、自分自身の医療機関でどうするか、ぜひ1度は会議を行ってください。
併せて、中央法規出版『新型インフルエンザ(A/H1N1)─わが国における対応と今後の課題』https://www.chuohoki.co.jp/topics/info/2001291648.html(無料公開)と、内閣官房サイトの過去のパンデミックレビューは、今後の動向を見通す際の参考になるでしょう。https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_index.html

2020年2月3日報道資料
▶新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年2月3日版)
▶新型コロナウイルス感染症に対応した医療体制について
▶新型コロナウイルスに対するワクチン開発について(第2報)
2020年2月1日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連した患者(14、15例目)及び無症状病原体保有者の発生について
2020年1月31日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の状況について(1月31日)
▶新型コロナウイルスに関連した無症状病原体保有者の発生について
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(13例目)
▶中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について(令和2年1月31日版)
▶中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎に関する世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言
2020年1月30日報道資料
▶新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の状況について
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(12例目)
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(11例目)
▶新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(10例目)
▶中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について(令和2年1月30日版)
▶新型コロナウイルスに関連した患者(9例目)及び無症状病原体保有者の発生について
▶新型コロナウイルスに関連したチャーター便に係る帰還邦人の検査結果について

「新型コロナウイルス:産業医のための一般職場における感染リスク対策」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
国内での感染例や、潜伏期間であっても感染させるという報道を目にして、医療従事者と比較して感染リスクが低いはずの一般の職場からの問い合わせが多くなっています。今回は、産業医のために一般の職場における感染リスクと対策についてご紹介します。これを基に、職場でどう対応するかは衛生委員会で審議いただくのがよろしいかと思います。
職場における感染リスクは、感染者の有無によって決まります。潜伏期間の人でも他の人に感染させるという情報がありますが、現在の中国を含めた感染の拡大において、こうした人が全体の感染拡大にどこまで影響したかは不明です。また、これを考え始めると対策ができなくなるのでいったん横に置いておきましょう。
職場の感染リスクは次の2つの段階に分かれます。
1. 発熱や咳などの症状がある人の入室を制限できるか
2. 従業員や訪問者との対人距離を1〜2m、保てるか

それにより表のように感染リスクを4段階に分けることができます。クラスⅠからクラスⅣの順にリスクが上がります。その上にあるのがクラスⅤで、これはあまり想定されていませんが、発熱した人の近くでお世話する場面です。



職場において発熱や咳があったら休めるように、または発熱はないが少しだけ咳が出るならマスクをきちんと着けて咳エチケットを行うと職場での感染リスクはほとんどありません。事務職場ですとクラスⅡでしょうか。こちらもほとんど感染リスクがありません。客先でも、相手が元気そうでしたら感染リスクはないと判断できる場面がほとんどです。
不特定多数を相手にする職場であればクラスⅢやⅣになるでしょう。しかしながら、発熱や咳をしている方とどのくらい接することがあるでしょうか?一般的には、発熱があると、外にはあまり出てきません。「そうした人がいつ目の前に来るかわからないから」という理由でマスクを仕事中ずっと着けてもいいのですが、予防効果は限定的です。職員がどうしてもマスクを着けたい場合には着用を許している企業が多いようです。バスの運転手さんやガイドさんはクラスⅣに該当します。また満員電車も同様です。
クラスⅤは、もし万が一、発熱者に対応するようなことがあるとしたら、その時はお互いにマスクを着けて対応し、帰宅を促したりすることになるでしょう。接触する時間も減らしましょう。
マスクを購入することが困難になってきています。また、今後もこの流行は規模の大小にかかわらず数カ月続くと予想しています。
衛生委員会では、職場でリスクの高いところを特定して、職員の心情や不安に寄り添ってバランスの良い対策を検討してください。なお、マスクの在庫も減っていますので、会社が職員にマスクを配布して着用させるとなると、マスクがなくなった時にまた不安になります。中長期的な視点も取り入れながら対策を考えてください。
(著者注:2020年1月30日の朝の情報を基にしています)

「医療機関での患者同士の感染を防ぎ、通常の医療を維持する体制を」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
1月28日に奈良県在住の日本人で新型コロナウイルスの感染が確認されました。この方は武漢からの訪問者と接したことと肺炎を発症したことで検査に至り、確定診断されたものと思われます。
ニュースでは「無症状の潜伏期間に他人に感染させる可能性」が報じられています。このような情報を基にすると、「対応ができない」「対応しても意味がない」と思考停止に陥る可能性があるのですが、まずは発症している人からの感染拡大を防ぐことが重要になります。
特に重症化のリスクを抱える人が集まる医療機関においては、インフルエンザの流行が続いていることもあり、より一層強化した患者の誘導や空間的な分離を行い、他の患者に感染させないようにしたいものです。場合によっては、電話で事前に連絡をして受診をしてもらう体制が必要になるでしょう。また、発熱患者などの受付から会計、さらには処方までを優先しつつ、感染対策ができる対応も必要になるでしょう。
また、咳をしている患者にはマスクを装着するように促したり、場合によってはマスクを提供することも必要になるでしょう。もちろんマスクの院内での在庫の確認も大事です。
今後、このような感染の拡大が報告されると、重症化リスクと言われる基礎疾患を抱えた患者の中で感染が心配な人は医療機関の受診をためらう可能性があります。慢性疾患で、ある程度落ち着いているならば長期処方をしておくなどして診療の負担を少し減らしておく準備も選択肢としてあがります。
今後の想定は、武漢や中国となんら接点がない人が感染者として特定されることです。
通常の手術や検査などの医療を維持しながら、新型コロナウイルスにも対応する体制が求められようとしています。医療機関での診療継続計画を今一度見直したいものです。自身の医療機関が地域で新型コロナウイルス感染者に対してどういう役割なのかを地域に周知することも必要になるかもしれません。
2009年の新型インフルエンザ流行時の対応をまとめた書籍『新型インフルエンザ(A/H1N1)─わが国における対応と今後の課題』(和田耕冶・編、中央法規出版)が中央法規出版のホームページで1月30日から無料公開される予定です。今回は、新型インフルエンザではないですが、当時の対応はこれから起こりえることを想像するのにお役に立つと思います。
(著者注:2020年1月29日の朝の情報を基にしています)

「新型コロナウイルス:医療従事者の万が一を補償する労災補償制度」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
中国における医療従事者の感染や医師の死亡が報道されています。患者の多くは軽症という報告もされていますが、今後感染者に対応する可能性のある医療機関の職員や医療従事者は不安でしょう。今回は、診療による感染、そして死亡という万が一を補償する労災補償制度について改めて確認します。
民間病院と公的病院に対応する労災補償制度がわが国にはあります。原則としてアルバイトを含むすべての労働者に適用されます。雇用契約がないとこの制度は使えないので学生やボランティアには適用されません。
労災保険法に規定される労災補償制度には、感染症による業務上疾病の要件に、患者の診療で感染したということが含まれています。これまで、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)は日本で報告はないので、これらの感染症により労災補償制度が使われたことはありません。2009年の新型インフルエンザ流行時の場合には、2009年5月11日に事務連絡が出て、「医師、看護師等が患者の診断もしくは看護により、新型インフルエンザに感染し発症した場合には、原則として保険給付の対象となる」と示されました。しかし、その後は市中でのインフルエンザ感染が当たり前になり、診療行為による感染かどうかの判断が難しかったので、実際にどの程度が請求、認定されたかはわかりません。
労災補償では、治療費だけでなく、死亡した場合の補償もなされます。補償額はそれまでの年収と、配偶者や子供の有無により異なります。 例えば、2010年当時に試算をした額を参考までにお示しします。
死亡前1年間の給与が月収30万円と賞与80万円であった場合は、独身の方の場合は遺族に1500万円程度が支払われると計算されました。同じ給与で、配偶者がいて、子供がいない場合は、一時金300万円、年金として毎年約180万円と計算されました。また、労災補償にも上限があり、月収100万円、賞与250万円の方で子供2人がいた場合には一時金300万円、年金として毎年約640万円(このぐらいの額が上限に近い)が遺族に支払われるようです。
亡くなった場合には、遺族が労災申請を行わなければならず、医療機関は書類などの作成に協力することになります。また、認定は労働基準監督署によりなされます。自動的に支払われるものではありません。
なお、注意が必要なのは、経営者である開業医や医療機関の院長は原則として労災保険の対象とならないということです。しかし、一定の要件を満たせば労災保険の特別加入制度があるようです。経営者や管理者は、自分自身が労災保険の対象であるかは各自でご確認ください。

【参考文献】
▶ 和田耕治, 他:新興・再考感染症などに感染した場合の労災補償制度. Medical Asahi. 2011;7:34-7.

「新型コロナウイルスのツイート・パンデミック、正しいだけでなく“適温”の情報を」
倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)
新型コロナウイルス(2019-nCoV)の情報は、SNSを通じて瞬く間に世界に拡散された。2002年からの重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行時にはこのような現象はなかった。SNSによって恐怖が煽られるようになったのは、2014年のエボラウイルス感染症流行の頃だと思う。
恐怖の扇動で得をする人間がいるとは思えないのだが、たとえば「武漢から発熱症状のある旅客が、関西国際空港の検疫検査を振り切って逃げた」などのデマが今回拡散され、ニュースになった。また、今回の騒動とは関係のない中国の映像を流してハッシュタグで関連づけた悪質なデマもあった。問題になっているパンデミックは、新型ウイルスではなくデマツイートではないかと錯覚するくらいだ。我々医療従事者は、こうした不適切な情報のスーパースプレッダーになってはいけない。
今回の感染症、確かに公衆衛生学的には注視する必要はあるが、それを差し引いてもマスメディアは騒ぎすぎではないだろうか。各局トップニュースで取り扱い、他国の感染者や死者が増えるたびに速報ニュースを流していく。エボラウイルス感染症の時と同じく、おそらくブームが過ぎれば彼らは報道をピタリとやめる。
サージカルマスクだけでなく、N95マスクが一般人に飛ぶように売れる事態は、現在の過熱報道によるところが大きい。重要なのは、正しいだけでなく“適温”の情報を流すことではないだろうか。

「産業医のための新型コロナウイルス対策:春節後に中国から戻った労働者の感染対策の考え方」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
春節が終わると、中国に帰国していた職員や留学生などが日本に戻ってきます。多くの人は日本で何らかの仕事をしています。
「中国から日本に戻った労働者を自宅待機にすべきか」という課題が企業で話題になっています。留学生のいる学校でも同様のことが話題になるでしょう。
こうした判断に必要な情報は、①潜伏期間、②感染者がどの時期にウイルスを排出し他人に感染させるのか、③軽症や発症していない人はウイルスを排出するのか―の3点です。
①については、潜伏期間は平均7日前後で、2日から12日という報告があります。また、1月21日現在、国立感染症研究所は、濃厚接触者は14日間の観察が必要としています。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9323-ncov-200121-1.html
②については十分な情報がありません。
③は、発熱などの症状がないけども感染している人がいるという報告もあります。こういう人がどのくらい他の人にまで感染させているかはわかりません。報道によると、発熱など発症していない人が感染を広げているという話があるようです。インフルエンザでは、発症1日前からウイルスを排出していることが確認されていますが、今のところ咳などがなければ周りの人に感染を広げているエビデンスはありません。麻疹などでは潜伏期間に感染を広げていることは指摘されていますが、麻疹と同様に感染を広げることは今のところ考えられていません。
以上のように十分な根拠がない中での意思決定はなかなか難しいですが、一方でできる対策の選択肢はそんなにありません。
中国から日本に戻った方への対策を軽い対策から重い対策へと3段階にわけてみました。
A:中国で肺炎などの患者と接した可能性を確認。その可能性がなければ、発熱や咳などの症状を確認。症状がなければ出勤いただく。
B:Aを実施して、さらに出勤時は念のためマスクを着用させる。または別室で作業をさせる。
C:潜伏期間を参考に、帰国後数日は自宅待機とする。
どの対応を取るかは企業の姿勢次第です。ただ、いずれにしても「中国から帰国した」ということで差別の対象にならないように配慮すべきです。BやCの対策を行うにしても、本人や周りに十分納得できるように話をする必要があります。
Cの対策を実施したとしてもおそらく生活では外出するでしょう。重症急性呼吸器症候群(SARS)の際には自宅待機できない人はホテルにこっそり泊まったという話もありましたが、対策として疑問が残ります。
感染リスクはゼロにはなりません。そのためリスクは分散させる必要があります。もし何かのきっかけで感染が広がった場合には、その前の対応がどうであったか、また、その事実がわかった後にどう対応したかによって批判は変わります。
行動経済学者のダニエル・カーネマンは、「我々のリスク認知は、比較的小さなリスクを過大評価し、大きなリスクを過小評価する傾向がある」としています。バランスの良い対応をできるだけ考えたいものです。
(著者注:2020年1月26日朝までの情報を基にしています)

「新型インフルエンザの教訓から学ぶ新型コロナウイルス関連肺炎の診療体制」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
国内での新型コロナウイルスの診療体制が今後議論の対象になるでしょう。臨床像や治療に関しての情報はまだ不足しています。重症度については海外からの情報があったとしても国内での事例がある程度蓄積されないと、確信には至らないでしょう。
2009年の新型インフルエンザ流行時の対応においては、発熱相談センターと呼ばれる電話によるトリアージや医療機関の調整が行われました。しかし、想定と違って、例えば大分県では初期の67日間の相談件数6156件のうち、発熱などの症状がある受診の相談は1割だったという報告があります。電話の対応の負担はかなり重く、保健所などでは本来の業務ができないということもありました。また、「発熱」という名称を途中でインフルエンザ相談センターと変えた自治体もありました。電話相談は、ある一定の効果はあったかもしれませんが、もう少し工夫が必要です。
国内での流行の初期は、入院勧告がなされるでしょう。感染症指定医療機関は居住地から遠いこともあるため、患者の負担が大きいです。また、軽症だった場合には入院させるのかといったことも議論になるでしょう(1月24日現在は検体採取の後は軽症なら自宅において感染予防策ができることを担保したうえで自宅安静となっています)。初期は特にPCR検査をし、場合によってはダブルチェックなどが必要となり、長い時間の待機も必要になるかもしれません。中国の方だと言葉の問題があり、不安になったり、トラブルにもなるかもしれません。
臨床の先生方にとって最も関心が高いのは、重症例です。新型インフルエンザ流行時においては海外から検査値や画像を含めた詳細の入手は困難でした。そのため当時は、厚生労働省の研究班が国内での重症例を集め、臨床医に共有をしました。もちろん重症例だけでなく、臨床像を早く共有できる体制の必要性が当時から指摘されています。今回も同様のニーズがあるはずで、対応を今から考えておきたいものです。 冬期は入院のニーズが高い時期です。こうした時期ですので、感染者がどんどん入院できる状態にはないため、自宅待機ということも考えなければなりません。家族がいる場合には、流行の初期には自宅待機による感染リスクが懸念され、こっそりホテルに移動するといったこともありえるかもしれません。受診の際にタクシーを使ってよいのかという課題もいまだ残っています(タクシー運転手の感染リスクのため)。
あとどのくらいの時間が残されているかわかりませんが、できるだけ教訓を生かしながらの検討が求められます。

【参考文献】
▶和田耕冶,編:新型インフルエンザ(A/H1N1).中央法規,2011.(絶版)

(著者注:2020年1月23日深夜の情報を基に執筆しました)

「新型コロナウイルス:地域の医療機関での話し合いと中国の方に受診方法をわかりやすく」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
新型コロナウイルスは、今のところ感染症法において対象になっていません。そういうこともあってか、地域においてどこの医療機関が(例えば感染症指定医療機関など)対応するかといったことも決められていないようです。
重症急性呼吸器症候群(SARS)の時は、2003年4月に新感染症(人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状または治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの)になりました。その後、ウイルスが特定された同年6月に指定感染症(定義一部省略:当該疾病のまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの)になり、同年11月5日より感染症法の改正に伴い、第一類感染症(現在は二類)としての報告が義務づけられるようになりました。
新型コロナウイルスに関しては、こうした法的な手続きには時期尚早ということもあるのでしょう。しかし、法令による動きがないこともあってか、自治体などでの対応が十分になされないことが実感されています。皆さんの地域ではどうでしょうか?

 自治体や国が主導して受診方法の情報提供を

中国からたくさんの観光客が来ていますが、新型コロナウイルスの拡大に備えて、もし具合が悪くなったらどこに受診したら良いかの誘導もそろそろする時期ではないかと感じています。特に、中国語の通訳となると人材が不足しています。春節ですから、中国からの留学生は中国に帰国して、アルバイトも不足となっています。
自治体や国が主導して、①中国語での医療機関の受診方法、②症状がある場合の咳エチケット、③事前の電話の後の受診(なかなか言葉ができないと難しいが)─などの情報提供をすることはできているでしょうか。検疫の強化がよく話題になっているようですが、潜伏期間の限界を考慮すると、こちらの方が重要と考えます。
また、中国語による受診や具合が悪い場合の相談体制を構築できないでしょうか。かつて新型インフルエンザが流行した時に受診にあたって電話相談を自治体が実施しましたが、すぐにパンクしたことは考慮すべきです。
最近AIによるチャットなどもあるようですが、そうしたものでできないものでしょうか。きっと東京五輪・パラリンピックの際にも役立つ経験になると思います。
(著者注:2020年1月23日早朝の情報をもとにしています)

「産業医のための新型コロナウイルス関連肺炎対策」
和田耕(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
新型コロナウイルスのヒトからヒトへの感染が確認されました。2020年1月22日現在の情報を基に、企業ではどうした対応が今後求められるのかについて産業医向けに解説をします。なお、今後の展開により、早期に状況が変わり得ることをご承知おきください。
私は2019年1月に武漢を訪問した経験があります。武漢は地下鉄が9路線もある大都市で、東京や大阪への直行便もあります。今後も、国内外で感染例が確認されるでしょう。
こうした状況に備えて企業にはいくつかの意思決定が必要になり、そこには産業医の支援が求められます。

(1)国内事業がメインの企業

従来のインフルエンザ対策と同様に、①発熱など具合の悪い従業員は休ませる、②手洗い、③不特定多数が多い場所ではマスクの着用─が対策として挙げられます。接客業ではマスク着用を禁止する動きもあるようですが、国内での感染などがさらに確認され、不特定多数と業務で接触するような場合には、一時的にはマスク着用を許可することも良いでしょう。ただし、マスクの効果を過信してはいけません。

(2)海外に出張者や駐在員がいる企業

特に中国にいる場合にはなかなか難しい対応が求められます。春節ということもあり、多くの日本人の駐在員や出張者は帰国しています。春節が終わり、また中国へ行くとなると、本人も家族も不安になることもあるでしょう。
現地に工場があって従業員がいるとなると、春節明けは発熱者の確認なども必要になるでしょう。春節の間に中国や世界で感染が拡大した場合に、従業員が少しでも安心できるような対策の選択肢を検討する必要があります。
現段階では、感染性も重症度も不明なことが多いです。新型インフルエンザのように、パンデミックのような形で世界に広がりうるのかはまだわかりません。重症度も、従来のインフルエンザと比較してどのくらいかによって深刻度は変わるでしょう。もう少し症例が集まるとわかるでしょうが、海外の情報だけでは十分ではありません。
2009年のインフルエンザの流行のように、初期の感染者は企業名などが出ることがあります。メディアやネットなどの勢いをコントロールすることは難しいです。感染症だけでなく、風評被害なども考慮する必要があります。経済への影響、そして来たるべきオリンピックへの影響は最小限になればと願います。また状況をみて、更新します。

【参考文献】
▶ 和田耕治, 他:新型インフルエンザ発生時に企業に必要な感染対策に関する意思決定とそのための情報. 産業衛生学雑誌. 2012;54:77.
[https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/2/54_wadai11005/_article/-char/ja/]

「新型コロナウイルス感染症とスーパー・スプレッダー」
矢吹 拓(国立病院機構栃木医療センター内科医長)
本稿を執筆している2020年1月21日現在、中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスによる感染者が断続的に報告されている。なかには重症者・死亡者も含まれており、日本国内でも中国から帰国した輸入感染者が確認されている。普段毒性が弱いとされているコロナウイルスが突然変異して猛威を振るう事態は、2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)に次いで3回目である。過去には動物を媒介した重症化と流行が確認されているが、今回も重症化リスクが懸念され、ヒト-ヒト感染の可能性が指摘されている。
ウイルスの流行時期に、感染を一気に蔓延させる要因のひとつがスーパー・スプレッダーである。スーパー・スプレッダーとは、病原体に感染したホストのうち、通常予測される以上の二次感染例を引き起こすホストのことである。例えば、保菌者として腸チフスを拡散した「腸チフスのメアリー」が有名で、彼女は家政婦として給仕した家族に腸チフスを感染させ、その生涯を通して50人前後の感染者や死者を出したという。「腸チフスのメアリー」は長期間にわたって感染を拡大させたが、単回の接触で多くの患者にウイルス感染を拡げてしまうホストもスーパー・スプレッダーである。例えば、韓国ではMERS感染の83.2%が5件のスーパー・スプレッダーから蔓延したとされている。スーパー・スプレッダーのリスク因子は明らかにはなっていないが、宿主・病原体・環境要因が関連しており、さらに宿主の行動が重要ではないかと推察されている。
感染源として個人が特定されることは、プライバシーや人権の問題はあるが、流行拡大が起きないためにも、スーパー・スプレッダーの特徴を明らかにすることは重要である。感染流行のいち早い収束を祈るばかりである。

「新型コロナウイルス(2019-nCoV)案件、今後の注目点〜北京におけるSARSの対応経験から」
勝田吉彰(関西福祉大学社会福祉学研究科教授)
筆者は前職の外務省医務官時代の2003年に、SARS(重症急性呼吸器症候群、severe acute respiratory syndrome)のアウトブレイクに見舞われた北京で、日本国大使館医務官として情報収集や在留邦人へリスクコミュニケーションの任務にあたっていました。まったく未知のコロナウイルスが現れて何が起こる可能性があるのか─。当時と比べて今後の注目点を紹介します。なお、本稿の執筆時点(1月19日)から掲載までの数日間のタイムラグで答えが出ていたり異なる展開になっている場合も考えられますが(それぐらい速く事態は展開します)、ご了解下さい。

(1) スーパースプレッダーが現れるか否か

1人の感染者から、より多くの健常人に感染させる“スーパースプレッダー”。この出現の有無で、感染者数はもとより報道量もガラリと変わります。これまでのコロナウイルス案件、SARSやMERS(中東呼吸器症候群、middle east respiratory syndrome)ではスーパースプレッダーの出現で社会の雰囲気が変わりました。『香港のメトロポールホテルで医師が…』『内蒙古自治区で航空機客室乗務員が…』など、今でも紙面が記憶に残る出来事です。
今回の新型コロナウイルスでは、本稿執筆時点では家族内感染が疑われるのは2例のみで、世界保健機関(WHO)の声明も「限定的なヒト-ヒト感染の可能性が示唆される」にとどまるところから始まっていますから、過去のコロナウイルス案件同様のスーパースプレッダーの出現があれば、一般社会の雰囲気の「変化率」はより大きなものになると思われます。

(2) 医療従事者の感染が現れるか否か

ヒト-ヒト感染の指標になるのが「家族内感染」と「医療従事者の感染」です。現時点では、少なくとも医療従事者の感染は報じられていません。今後「医療従事者の感染」が出現する事態になれば、これも大きく社会の雰囲気を変える事態になります。SARSではこれが頻繁に発生して現場は悲壮感に満ち、中国政府は現地メディアを通じて「白衣戦士に敬礼を!」と士気鼓舞に努めていました。

(3)外国籍/著名人の感染者が現れるか否か

もうひとつ当時の北京で雰囲気が大きく変わるきっかけになったのが、「国際労働機関(ILO)要人の感染・死亡例」でした。今回も著名人・芸能人の感染が発生すれば雰囲気は一変するでしょう。

(4)春節の移動ラッシュ(春運)はどう出るか

春節期間中に増えるインバウンド旅行客による感染持ち込みに関心が集まっているように見受けられますが、実際のところ焦点はそこではありません。国内メディアが心配する、航空機で来日する中流層以上よりも深刻なのは、庶民層の帰省列車でどう拡大するか、です。筆者は北京駐在中に一度、それを経験して鉄道趣味誌に投稿するというもの好きな経験を持ちます。
異様な高密度が発生するポイントは以下の3つです。①切符売場の争奪戦、②候車室(列車ごとにわかれた待合スペース)、③車内(1列5人掛けのボックスシートに詰め込まれた出稼ぎ労働者、無座と表示された立席切符で通路まで埋まる車内)、さらに彼らが持ち込む巨大な荷物には家禽を含む食糧が入っています。この中で、どこまで拡大するのか、固唾を呑んで春節を注目しています。

「中国で流行している新型コロナウイルス感染症、あらゆる可能性を“想定内”に」
岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)
2019年12月以降、中国の湖北省武漢市で肺炎が流行し、これが今まで知られていなかった新しいタイプのコロナウイルス(novel coronavirus〔2019-nCoV〕) が原因と判明した。当初59名と報じられた患者数は本稿執筆時点(2020年1月17日)で41名と訂正され、2名が死亡に至っている。12名は回復して退院した。死亡者のうち1名は60代の男性で、心筋炎を合併したという(国際感染症学会メーリングリストProMedによる〔https://promedmail.org/〕)。もう1名の死亡例についても心筋炎や多臓器不全が認められたと言われる一方、結核を併存していたという報告もあり詳細は不明である。この他、タイと日本で1名ずつ輸出症例が発見されている。763名の濃厚接触者が追跡され、そのうち644名は問題なしとされて観察解除となり、119名は未だ観察中だ。
中国の肺炎といえばSARS(重症急性呼吸器症候群、severe acute respiratory syndrome)を思い出す。2002年から2003年にかけて、中国の広州を中心に流行した死亡率約10%のウイルス感染症だ。私は2003年から北京の診療所でSARS対策に従事した。SARSはマンション、ホテル、病院内でヒト-ヒト感染が多発し、医療者の罹患も多かったために北京市内での診療は極度の緊張をもたらした。
当時の中国はまだ医療制度も診療体制もしっかりしておらず、SARSの情報公開が不十分で実態把握に苦労した。この時の反省を受けて中国では疾病予防対策センター(中国CDC)を充実させ、感染対策の質を高めてきた。現在では世界保健機関(WHO)などからも高い信頼を得ている。今回の肺炎でも新型コロナウイルスの遺伝子配列情報は即座に世界に公開され、タイや日本での診断の一助となった(日本経済新聞電子版1月16日)。
このウイルスはどこからやってきたのか。詳細は本稿執筆時点では不明だが、武漢の海鮮市場と多くの患者に関連が高く、ここがウイルスの発生源ではないかと疑われている。中国当局は海鮮市場をただちに閉鎖し、新規の患者は発生しなくなった。ヒト-ヒト感染も起きているであろうことが推察されるが、どのくらいの感染力があるのかは現時点では不明である。ざっくり言えば感染力、致死力などいずれもSARSほどのインパクトはなさそうだが、プレマチュアな断定は禁物だ。 
現時点では「分からないこと」がたくさんあるなかで、我々医療者に必要なのは冷静であり続けること。しかし油断もしないこと。「分からないこと」に自覚的であり、曖昧さに耐えること。意外な新情報にも驚かないこと。つまり、あらゆる可能性を「想定内」にしておくことである。

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