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「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」改訂のポイント

No.4890 (2018年01月13日発行) P.46

荒井秀典 (国立長寿医療研究センター病院副院長)

登録日: 2018-01-09

最終更新日: 2018-01-09

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    2017年に改訂となった「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」の改訂点を述べる

    今回,危険因子の評価における脂質異常症,動脈硬化性疾患の絶対リスクと脂質管理目標値,生活習慣の改善における食事療法と薬物療法において,clinical question(CQ)を作成しシステマティック・レビュー(SR)を行った

    リスクの評価は吹田研究を採用し,10年間の冠動脈疾患の発症を予測するツールを作成した

    家族性高コレステロール血症や急性冠症候群など,二次予防での高リスク病態においては,現在のLDL-C 100mg/dL未満よりさらに厳格なLDL-Cの管理,すなわち70mg/dL未満を提言した

    1. ガイドラインの変遷

    動脈硬化症の主たる危険因子としては,加齢,性別,家族歴といった介入できない因子以外に,糖尿病,高血圧,喫煙,および脂質異常症などの介入可能な病態がある。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」1)では,冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患をいかに予防するか,について包括的なリスク管理を行うことを提唱しているが,管理の主たるターゲットとして脂質異常症を扱っている。

    1987年に日本動脈硬化学会において高脂血症に関するコンセンサス・カンファレンスが開催され,高脂血症の診断基準値が提案された。

    97年には「高脂血症診療ガイドライン」が作成され,その後,久山町研究などの疫学研究やJ-LITなどの観察研究が発表されるに従い,わが国でのエビデンスもそろってきたことにより,2002年に危険因子を考慮した「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版」が作成された。

    その後,5年ごとに改訂を行ってきたが,12年に発表した「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」では,それまで健常者に対する相対リスクで評価してきた動脈硬化リスクを,絶対リスクで評価することとした。これにより,危険因子が複合した場合の重要性が高く認識されることとなった。

    今回の改訂にあたっては,現在のガイドラインの主流をなすクリニカル・クエスチョン(clinical question:CQ)の導入を行い,よりupdateな情報が含まれている。

    2. 主たる改訂のポイント

    1 クリニカル・クエスチョンとシステマティック・レビュー

    危険因子の評価における脂質異常症,動脈硬化性疾患の絶対リスクと脂質管理目標値,生活習慣の改善における食事療法と薬物療法の項では,CQを作成しシステマティック・レビュー(systematic review:SR)を行った。

    2 絶対リスクの算出

    2012年版に引き続き,リスクの評価は絶対リスクで行うこととしたが,2012年版で絶対リスク算出に用いたNIPPON DATA80ではなく,吹田研究が最も本ガイドラインのリスク算出に向いていると判断し,採用した。

    3 高リスク病態の追加

    動脈硬化リスクを広く集めようという観点から,高尿酸血症,睡眠時無呼吸症候群も考慮すべき病態として取り上げた。また,冠動脈疾患の既往,糖尿病,脳血管障害は,その管理状態や合併症の有無,重積する危険因子により,より積極的な加療が必要となる症例が存在する病態である。それゆえ,どのようなケースにおいてさらに強化した管理を必要とするか,を詳述した。

    4 二次予防における高リスク病態での厳格なLDL-C管理

    家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)や急性冠症候群など,二次予防での高リスク病態においては,現在のlow-density lipoprotein cholesterol(LDL-C)100mg/dL未満よりさらに厳格なLDL-Cの管理を提言している。

    5 家族性高コレステロール血症の記載の拡充

    新薬の登場,小児FHへのスタチンの適応拡大などに伴い,FHの診断・治療の記載を詳細に行い,治療法に関してはフローチャートを用いている。

    6 エビデンスレベルと推奨レベル

    前回のガイドライン同様,各章の冒頭にステートメントを記載し,エビデンスレベル,推奨レベルを付けた。

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