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臨床研究における利益相反と近時の課題 [J-CLEAR通信(44)]

No.4715 (2014年09月06日発行) P.38

児玉安司 (弁護士・東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座特任教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-27

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  • ┃古典的な「利益相反」概念

    「利益相反」は英米法で発展してきた概念であり,本人・相手方・第三者の三面関係を取り扱うことについての理解に困難があるため,医療界においても誤用や濫用が散見される。古典的な「利益相反」の概念から出発して,医療における産学連携や医師の信認義務などに関する新しい展開を整理していく必要がある。

    英米法の法律学辞典として著名な“Black’s Law Dictionary”(6th ed)の「利益相反」(conflict of interest)の項には,次のような説明がなされている。

    “Term used in connection with public officials and fiduciaries and their relationship to matters of private interest or gain to them.”

    public officialsは広く公的な義務を負う者を言い,典型は公務員である。fiduciariesは受認者と呼ばれることもあり,信認関係に基づいてもっぱら本人の利益を図る義務を負っている。典型は,患者に対する医師,依頼者に対する弁護士,被後見人に対する後見人などである。

    利益相反を考えるにあたっては,public officialsやfiduciariesがどのような義務を誰に対して負うか,その義務が第三者から受ける利益と衝突することがないか(利益相反:conflict of interest),利益相反をどのようなルールで処理するか(代表的なものは開示ルール,同意ルール,禁止ルールである)などの論点を検討していく必要がある。

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