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ネフローゼ症候群の治療薬開発のために今後の研究に必要なもの【ポドサイト障害・糸球体硬化の程度,残存ポドサイト数を判定する新規バイオマーカー】

No.4903 (2018年04月14日発行) P.56

阿部高明 (東北大学大学院医工学研究科・医学系研究科教授)

淺沼克彦 (千葉大学大学院医学研究院腎臓内科教授)

登録日: 2018-04-17

最終更新日: 2018-04-10

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  • 原発性または先天性ネフローゼ症候群の原因は腎臓の糸球体足細胞(ポドサイト)の構造的および機能的異常が関与することが知られています。しかし,臨床の現場ではネフローゼ症候群に対する治療はステロイドや免疫抑制薬が主体であり,特異的な治療薬が乏しいのが現状です。ネフローゼ症候群に対する特異的治療薬を開発するためには,今後どのような研究が必要なのでしょうか。またはどのような研究が不足しているのでしょうか。千葉大学・淺沼克彦先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    阿部高明 東北大学大学院医工学研究科・医学系研究科教授


    【回答】

    ネフローゼ症候群は,腎臓から大量に蛋白尿が漏出して低蛋白血症となり,全身に浮腫が出現する疾患群で,血液濾過装置である糸球体の構成細胞である糸球体足細胞(ポドサイト)の障害によって引き起こされることがわかっています。ポドサイトは様々な理由によって障害を受けますが,どのような原因でネフローゼ症候群が起こったとしても,蛋白尿とポドサイトの形態変化は共通して起きる現象です。そして,ポドサイト障害が持続していると,ポドサイトは糸球体基底膜から尿中へと脱落し,通常分裂・再生能を有さないとされるポドサイトの脱落部から糸球体硬化が起こると考えられています。硬化糸球体数が増えてくると,腎機能は低下し慢性腎臓病(CKD)は進行していきます。

    ネフローゼ症候群では,原発性ネフローゼ症候群の場合,ほとんどがまずステロイドや免疫抑制薬による治療を行います。現在は,ステロイドや免疫抑制薬であるシクロスポリンなどは,ポドサイトに直接作用し保護する作用を有しているとの報告があります。世界に先駆けてわが国で医師主導治験が行われ,2014年に小児頻回再発型ネフローゼ症候群に対して薬事承認された抗CD20抗体(リツキシマブ)は,本来B細胞に作用する免疫抑制薬ですが,直接ポドサイトに作用すると保護的に働くとする実験結果が示されています。様々な既存薬剤がポドサイトに保護的に働くことがわかっていますが,様々な原因で起きるポドサイト障害に対し,どのような状況でどのような薬剤が有効であるのかは,いまだよくわかっていません。

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