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(8)高度肥満─減量とリバウンド 食事療法・運動療法も焼け石に水。一時的な減量の効果,外科手術の適応は?[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.49

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

坂根直樹 (京都医療センター・臨床研究センター予防医学研究室長)

登録日: 2016-09-01

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  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    35歳,男性。派遣社員。
    子どもの頃から肥満気味で,成人してからも体重は増加し,25歳時には140kgとなった。教育入院した際には,ある程度の減量効果が得られるが,退院後はすぐにリバウンドを繰り返した。30歳頃より血糖上昇を指摘され,脂肪肝も認めていた。現在,空腹時血糖127mg/dL,HbA1c 7.2%である。管理栄養士から何回も減量に向けての食事指導が行われているが,効果はあまり認められていない。現在のところ,糖尿病合併症は認めていない。
    家族歴:糖尿病なし,父と母ともに肥満傾向。飲酒:家では飲酒しないが,飲み始めるといくらでも飲める。喫煙:喫煙歴なし。運動:膝の痛みのため,ウォーキングなどの運動習慣なし。食生活:1回の食事量はそれほど多くないが,いつも食べている食習慣がある。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    ▶食事指導しても効果がない
    ▶膝が悪くて,ウォーキングが困難である
    ▶自院では減量手術を行っていない

    医師や管理栄養士が熱心に食事指導しても,減量効果が得られない。教育入院で管理していると,ある程度の減量効果が得られるのだが,退院後はすぐにリバウンドしてしまう。それを繰り返している(ウェイトサイクリング)。
    高度肥満者で変形性膝関節症など整形外科的疾患を伴っており,ウォーキングなどの運動療法が困難である。体重を支えることのできる自転車もない。また,アクアウォーキングなどの水中運動を勧めても,「近くにプールがない」と訴える。
    自院では減量手術を行っておらず,減量手術の適応となるかどうかについて院内にコンサルトできる人がいない。病的肥満の手術は保険診療となるのか,自費になるのかもよくわからない。

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)食事指導があまり効果的ではない

    巷の健康情報により,様々なダイエット法に自己流で取り組んでいるが,長く続かない。フォーミュラ食[注]筋肉などから異化による蛋白質の崩壊を防ぎ,過剰なケトン体上昇を防ぐために調合された食品を含めた食事指導を用いても,減量した体重をなかなか維持することができない。

    [注]筋肉などから異化による蛋白質の崩壊を防ぎ,過剰なケトン体上昇を防ぐために調合された食品。

    (2)運動療法が実施不能

    体重があまりにも重いために,ウォーキングなどの運動療法が実施不能である。

    (3)外科療法の適応を検討

    欧米では,高度肥満症の治療法の選択肢として,減量手術が汎用されている。しかし,日本では減量手術の保険適用が限られている。

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