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健康診断では裸眼視力と矯正視力をどのように評価するか? 【裸眼視力のみの測定は避ける】

No.4842 (2017年02月11日発行) P.62

永田竜朗 (産業医科大学眼科学教室講師)

登録日: 2017-02-08

最終更新日: 2017-02-07

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  • 健康診断では「視力」として裸眼視力と矯正視力を検査するものと思われます。産業医として健康診断の結果をみる際に,そのいずれかしか検査していない健診事業者(健康診断を請け負う医療機関)を見かけます。「視力」とだけ記した際には矯正視力を意味すると解釈され,少なくとも矯正視力を省略してはならないと考えます。自前の眼鏡などがない場合に裸眼しか検査していないようです。問題があるように思いますがいかがでしょうか。

    (質問者:愛知県 K)


    【回答】

    労働安全衛生法第66条で,「事業者は労働者に対し,医師による健康診断を行わなければならない」ことが規定されています。健診内容については労働安全衛生規則第43条(雇入時の健康診断),第44条(定期健康診断)に書かれていますが,視力に関しては単に「視力の検査」としか記載されていません。このため,一般の健康診断においては,本人の眼鏡またはコンタクトレンズによる矯正視力(以下,自鏡視力)もしくは裸眼視力のどちらかだけを測っても法律上は問題ないということになります。

    眼科的には矯正視力は完全矯正視力のことを示し,実際は自鏡視力と異なっていることも多くあります。しかし,完全矯正視力を測定するには,眼科の専門的で時間がかかる検査を行わなくてはならず,健診という限られた時間で行うことは不可能と考えられ,実際の健診においては自鏡視力を矯正視力として記載している場合がほとんどです。

    遠見の裸眼視力もしくは自鏡視力が,左右それぞれの眼で一定水準(小数視力1.0程度)を確認できれば健診結果における判定としては問題ありませんが,確認できない場合には要精査とし,眼科受診を勧めます。よって,矯正するための道具(眼鏡やコンタクトレンズ)があるのに,裸眼視力だけしか検査しないことは,要精査率を不必要に高めることになるため,我々がそのような健診事業者から判読の依頼を受けた場合は,改善指導を行っております。

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