麻疹ウイルスによる急性発熱発疹性疾患で,空気感染,飛沫感染,接触感染で伝播する。潜伏期間は10~12日で,修飾麻疹の場合は21日程度まで延びることがある。基本再生産数は12~18で,発症から数日間のカタル期(発熱,咳,鼻汁,咽頭痛,眼球結膜充血,眼脂など)の感染力が最も強い。カタル期の最後に1℃程度体温が下がるが,この頃,口腔粘膜に麻疹に特徴的なコプリック斑が現れる。翌日には再び高熱となり,耳後部付近から発疹が出現し,その後躯幹,四肢へ急速に拡大する。発疹期はカタル症状がさらに激しくなり,長期間,免疫抑制状態となる。
肺炎,脳炎は麻疹の二大死因であり,先進国でも致死率は約0.1%とされる。合併症を併発しなければ発症から10日程度の経過で発疹は色素沈着を残して回復するが,治癒後数年~10年程度たってから発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)1)はきわめて予後不良である。
発疹はやや盛り上がった融合傾向を示す紅斑で,健康皮膚面を残す。発熱,カタル症状,発疹を認めた場合,麻疹含有ワクチン接種歴と発症1~3週間前の行動歴を確認する。麻疹含有ワクチンの接種歴が0~1回あるいは不明で,流行国への渡航歴がある場合は,直ちに保健所に届出を行い,急性期のEDTA加全血,咽頭ぬぐい液,尿を地方衛生研究所に搬送する2)。麻疹IgM抗体は発疹出現後4日以降でないと陽性になっていないことが多いため,IgM抗体を確認してからの保健所届出は厳禁である。渡航歴がなくても,発症1~3週間前に発熱,カタル症状,発疹を認める人との接触歴の有無,国内麻疹発生動向を確認する。白血球(特にリンパ球)は減少し,LDH高値,CRPは陰性または弱陽性である。AST,ALT上昇から急性肝炎を疑われることもある。
特異的な治療法はなく,解熱鎮痛薬,鎮咳去痰薬,点眼薬,整腸薬,輸液などの対症療法のみとなる。
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