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一次性巣状分節性糸球体硬化症[私の治療]

No.5119 (2022年06月04日発行) P.46

丸山彰一 (名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学腎臓内科学教授)

登録日: 2022-06-03

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  • 巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)とは,複数観察される糸球体の1個以上(巣状)に,糸球体中の50%以下の領域(分節性)で硬化を認める病理形態学的な診断名である。そのうち,動脈硬化,肥満,片腎など,ほかに原因があるものを二次性,明確な原因がないものを一次性と呼ぶ。一次性FSGSはネフローゼ症候群を呈し,発症当初は微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)と区別がつかないが,しばしばステロイド抵抗性の経過をとり,治療に難渋することが少なくない。発症には,液性因子の関与が示唆されている。MCNSと同一疾患か否かについては結論が出ていない。

    ▶診断のポイント

    治療方針が異なるため,二次性を除外することが重要である。ネフローゼ症候群を呈していないものは,二次性の可能性が高いと考え,原因検索を進める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    一次性FSGSはステロイドを中心とする免疫抑制治療が適応となる。一方,二次性FSGSは原疾患の治療が中心となる。一次性を疑い治療を開始したあと,反応が得られなかった場合,改めて遺伝性を含む二次性FSGSの可能性を検討する。特に,家族歴がある症例や,小児~若年者で治療に反応しない場合は,遺伝子変異の存在を疑う。遺伝子変異を認めるものは原則,免疫抑制治療に反応しない。一次性,二次性を問わず,補助療法としてレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬,ARB)を併用する。

    一次性FSGSには,病理分類であるコロンビア分類で様々な亜型が示されている。一般にtip variantは予後良好で,collapsing variantは予後不良と言われているが,現時点では亜型によって治療方針を変えることはない。

    初期治療としては,MCNSと同様に大量ステロイド内服治療を行う。「KDIGOガイドライン2021」では,最長16週間までの初期量維持が推奨されているが,日本のガイドラインでは,4週間時点で反応がみられなければ,難治性と判断して早期からの免疫抑制薬追加が推奨されている。特に高齢者においては,感染症による死亡例が報告されているため,過度の免疫抑制治療には注意を要する。

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