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基底細胞癌[私の治療]

No.5116 (2022年05月14日発行) P.46

帆足俊彦 (日本医科大学医学部付属病院皮膚科准教授)

登録日: 2022-05-14

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  • 基底細胞癌とは毛包間表皮や毛包の基底細胞を由来とし,毛芽細胞に分化した癌腫である1)。基底細胞癌は皮膚癌のうちで最も多い。顔面発症例が71%である。また,わが国では88.0%が有色素性であるが,白人では有色素性は6%であり,臨床所見が大きく異なる。基底細胞癌は局所浸潤能が高いものの,局所治療で90%以上の症例が治癒する。局所再発を起こすことはあっても,所属リンパ節転移を起こすことはほとんどなく,遠隔転移を生じることはさらに稀である。

    ▶診断のポイント

    様々な形態をとるが,典型例(結節型)は漆黒調の小結節の形を示すことが多い。診断にはダーモスコピーが非常に有用である。黒色小結節が中央ないし辺縁に集簇している像(large blue-gray ovoid nests:大型青灰色卵円形胞巣,multiple blue-gray globules:多発性青灰色小球)が観察される。また,様々に拡張した毛細血管が交通している様子(arborizing vessels:不規則に分岐する樹枝状血管)がみられる。しばしば病変中央部が潰瘍化する。ほかに表在型(境界明瞭な扁平な局面),斑状強皮症型(明らかな腫瘤形成傾向を示さず,光沢のある紅色ないし白色の浸潤を触れる局面)等がある。

    臨床診断が難しい場合は皮膚生検を行い,病理組織を検討する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    基底細胞癌は,低リスク群と高リスク群にわけられる1)2)。要約すると,低リスク群とは,境界が明瞭で,病理組織学的にも浸潤性の低い(病理組織で結節型,表在型)群である。高リスク群とは,境界が不明瞭で,病理組織学的にも浸潤性の高い(病理組織で浸潤型,斑状強皮症型,微小結節型)群である。

    【外科的治療】

    手術療法は,わが国では以前より最も有効であると考えられている。可能であれば,治療の第一選択として強く勧められる。

    【放射線療法】

    手術療法を選択しない場合の根治療法として,放射線療法が選択できる。切除後の機能面や整容面が問題になる場合,患者の全身状態や患者の希望のため手術療法を選択しない場合に選択される。また,切除後の断端陽性例や神経浸潤例に対する術後療法として施行されることもある。

    【保存的療法】

    低リスク群については,手術療法を選択しない場合の根治療法として,保存的療法も選択できる。液体窒素を用いた冷凍凝固,外用薬である5-FU(フルオロウラシル)軟膏,イミキモドクリーム,腫瘍部に光線感受性物質を作用させ,励起光を当てることで発生する熱エネルギーを利用する光線力学的治療が挙げられる。これらは手術療法より優れることはないものの,一定の効果は得られている1)。現在,保険適用になっているのは,冷凍凝固,5-FU軟膏のみである。

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