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アニサキス症[私の治療]

No.5115 (2022年05月07日発行) P.49

大川清孝 (大阪市立十三市民病院顧問/淀川キリスト教病院消化器内科顧問)

登録日: 2022-05-09

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  • アニサキス症は,中間宿主であるサバ,イカなどを生食することで経口感染し発症するアニサキス幼虫移行症である。最終宿主はクジラ,イルカなどの海産哺乳類であるが,人体では長期に生きられず3~4日で死滅する。罹患部位により胃アニサキス症と腸アニサキス症に分類され,胃が93.2%と最も多く,小腸2.6%,大腸0.29%である。主な症状は腹痛であり,虫体が消化管壁に刺入することに対するアレルギー反応と考えられている。症状によって劇症型と緩和型に分類できる。劇症型は感作されている人に生じる局所即時型アレルギー反応で,虫体刺入部を中心に浮腫と好酸球浸潤が起こる。病理学的には消化管全層に好酸球とリンパ球浸潤を主体とした蜂窩織炎を示すが,そのため急性腹症で発症する。緩和型は,初回感染であり症状に乏しく,検診の内視鏡検査などで偶然発見される。虫体に対する異物反応により膿瘍を形成し,次第に鎮静化し肉芽腫へと移行し,粘膜下腫瘍の形態を呈するが,1~2カ月で自然消退する。

    ▶診断のポイント

    本症の診断には,魚やイカなどの生食の有無に関する詳しい問診が最も大切である。大部分を占める胃アニサキス症は摂食後約2~8時間以内に発症し,周期性の激しい心窩部痛をきたし,悪心・嘔吐を約半数に認める。アニサキス症が原因でアナフィラキシーや蕁麻疹をきたす場合があり,注意が必要である。病歴と症状で胃アニサキス症を疑えば,上部内視鏡検査を施行し,胃壁に刺入するアニサキスを発見することで診断できる。

    小腸アニサキス症は,摂取数時間~数日後に腹痛および悪心・嘔吐や腹部膨満感などの腸閉塞症状を示すことが多い。虫体が刺入した部位で粘膜下層を中心に好酸球の浸潤を伴う著明な浮腫が起こり,腸管壁が正常の3~5倍に肥厚して管腔が狭窄するためと考えられている。小腸アニサキス症は,腹部CTで,①限局性全周性の小腸壁肥厚と内腔の狭小化,②口側の小腸の拡張と鏡面形成を伴う液体貯留,③腹水,などがあれば疑うことが可能であるが1),確定診断は難しい。

    大腸アニサキス症は,摂取1~7日後に腹痛を起こすことが多く,下痢はみられるが,悪心・嘔吐は少ない。腹部CTで限局性腸管壁肥厚や腸重積がみられることが多く,時に腫瘤像がみられる。大腸内視鏡検査で刺入した虫体や粘膜下腫瘍がみられて診断がつくことが多い。内視鏡診断困難例では補助診断として抗アニサキス抗体のペア血清の測定を行うが,発症直後は陰性のことが多い。

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