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腰背部痛[私の治療]

No.5113 (2022年04月23日発行) P.44

西山 隆 (自衛隊中央病院救急科部長)

登録日: 2022-04-26

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  • 腰背部痛の原因は様々で,緊急度や重症度にも幅がある。まずは筋骨格系疾患と脈管を含む内臓疾患の鑑別をしながら,緊急性の高い重篤な疾患となる内科系疾患を見逃さないように診療を進めていく必要がある。

    ▶病歴聴取のポイント

    痛みの発生状況や部位,程度の確認とともに,初発症状なのか繰り返す慢性的なものなのかは診断の重要な手がかりとなる。腰痛の多くは緊急性の乏しい特発性腰痛症で,病歴から発症時の状況が明らかになることで,ほとんどは診断が可能となる。受傷機転のない痛みや体動を伴わない持続する痛みは,重篤な疾患が潜んでいる可能性を考慮する。特に,これに加えて突然発症のエピソードは血管系緊急疾患が示唆され,専門家への早期コンサルトを要する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    バイタルサインに異常がある場合や,感染症や血管系緊急疾患を示唆する身体所見を認める場合は,高度な画像検査を準備しながら診察を進める。身体診察では症状のある部位だけでなく,原則脱衣して,全身観察を行う。デルマトームの疼痛は神経根に一致した臓器障害を示す徴候と考える。高齢者の腰痛では転倒のような受傷機転がなくとも椎体骨折を疑う必要があり,胸椎から腰椎までの棘突起の叩打痛や脊椎起立筋付近の痛みを確認する。椎間板ヘルニアはL4/5,L5/S1が好発部位で,通常は片側性である。腹部診察において,腹部動脈瘤では拍動性の瘤の触知や血管雑音を聴取することがある。上部消化管疾患では上腹部の自発痛,圧痛を伴うことがあり,下腹部の圧痛では婦人科疾患を疑う。

    急性冠症候群と急性心筋梗塞症例の臨床研究では,発症時に胸痛の訴えは男女間でほぼ同じであるが,女性は男性に比べはるかに背部痛の訴えが多いと言われている。IRAD(急性大動脈解離国際登録)によると,大動脈解離では36%に背部痛を認め,23%の患者では背部痛あるいは腰痛のみを認める。

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