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凍結肩(五十肩)[私の治療]

No.5103 (2022年02月12日発行) P.39

柴田陽三 (福岡大学筑紫病院整形外科教授)

登録日: 2022-02-14

最終更新日: 2022-02-08

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  • 1872年,DuPlayは肩の痛みと動きの制限を起こす病態をperiarthrite scapulo-huméraleと呼び,1934年にCodmanが同様な病態をfrozen shoulderと命名,日本語訳として肩関節周囲炎や凍結肩という用語が用いられている。凍結肩は原因不明の特発性の肩関節拘縮と定義される。引き起こす要因として糖尿病,甲状腺疾患,Dupuytren拘縮,喫煙の関与が指摘されている1)

    発生頻度は人口の2~5%と言われているが,糖尿病患者では20%ほどに発生すると言われている。その症状は肩関節の可動域制限と疼痛であり,3つの病期にわけられる。「急性期」は強い疼痛のためあらゆる方向への可動域が制限されるが,真の拘縮はないと言われている。運動時痛,夜間痛が特徴とされる。「凍結期」は肩甲上腕関節に限局した他動可動域制限である。疼痛は軽快傾向で,肩甲帯の動きで見かけの挙上や内外旋運動を行う。このため肩関節の挙上時にいかり肩になる。疼痛が軽減したために患者はよくなったと思っている場合がある。「寛解期」は可動域,疼痛の改善が生じてくる時期である。

    ▶診断のポイント

    肩関節に限局した疼痛(運動時痛,安静時痛,夜間痛)と可動域制限。肩関節が動かせる範囲内での,肩の筋力は保たれている。

    単純X線写真:正常もしくは時に骨萎縮を認める。

    MRI:腱板の連続性は保たれており,関節内,滑液包内に軽度の水腫を認めることがある。

    鑑別診断:①石灰性腱炎…単純X線写真で診断,②腱板断裂…MRIで診断,③頸椎症…腱反射,知覚障害などの神経学的所見による診断。

    凍結肩では動かせる範囲内での肩関節筋群の筋力は正常,上肢の腱反射も正常である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    保存療法が主体となる。

    【急性期】

    三角巾による患肢の安静,消炎鎮痛薬や睡眠導入剤の内服,関節内への注射療法などによって急性期の運動時痛,安静時痛を軽快させる。就眠時には肘の下に枕を挿入すると疼痛が軽減できる。これらの治療により通常1~2カ月で症状は軽快していく。

    【凍結期】

    急性期の疼痛が軽減してくれば,患肢の振り子運動,理学療法士による徒手矯正,腱板強化訓練を開始する。ホームワークとして,仰臥位になって両手の手指を組み,健側上肢で患側上肢を挙上させる。

    【手術療法】

    2~3カ月に及ぶ上記の保存療法を施行しても安静時痛,夜間痛,睡眠障害,日常生活動作の障害が改善しない重症例に対して,全身麻酔と持続斜角筋ブロックを併用した関節鏡視下全周性関節包解離術を検討する。

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