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多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン2020年暫定版[ガイドライン ココだけおさえる]

No.5093 (2021年12月04日発行) P.30

藤本 学 (大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学教授)

沖山奈緒子 (筑波大学医学医療系皮膚科講師)

川口鎮司 (東京女子医科大学医学部医学科膠原病リウマチ内科臨床教授)

森 雅亮 (東京医科歯科大学生涯免疫難病学寄附講座教授)

登録日: 2021-12-06

最終更新日: 2021-12-02

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  • 主な改訂ポイント〜どこが変わったか

    1 「治療」ガイドラインであった前ガイドラインから,今回は包括的な「診療」ガイドラインとして,診断に関する詳細な総論を巻頭に掲載した

    2 小児と成人を統一した新規診断基準を作成し,最近保険収載された筋炎特異的自己抗体も診断基準に含めた

    3 従来のCQを改訂するとともに,システマティックレビューを行ったCQを新規に追加した

    4 若年性筋炎を合わせた包括的な診療ガイドラインとなった

    総論:2015から2020へ

    多発性筋炎・皮膚筋炎は皮膚や筋に炎症性変化をきたす自己免疫疾患で,膠原病に分類されている。国際的には,封入体筋炎も含めた炎症性筋疾患という概念もあるが,わが国の難病政策においては,封入体筋炎は別に扱われることになっている。令和元年の医療受給者証保持者は約2万3000人である。

    筋症状としては,四肢近位筋や頸筋の筋力低下や,咽頭筋の障害による嚥下障害を呈し,間質性肺疾患もしばしば伴う。特に成人皮膚筋炎では悪性腫瘍を高率に合併することも知られている。

    多発性筋炎・皮膚筋炎は,膠原病内科・皮膚科・神経内科・小児科・呼吸器内科をはじめとする実に多くの診療科が関わる疾患であり,共通の認識を持って互いに連携しながら診療するのが望ましいことは言うまでもなく,そのコンセンサスの基盤となるガイドラインが必要とされていた。

    わが国における多発性筋炎・皮膚筋炎のガイドラインは,2015年に当時の厚生労働省難治性疾患政策研究事業,自己免疫疾患に関する調査研究班,多発性筋炎・皮膚筋炎分科会の上阪等会長を中心に,「治療ガイドライン」として初めてまとめられた。この治療ガイドラインでは,23個の実臨床に即したクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し,エビデンスに基づいて推奨と解説を作成し,当時では珍しく複数科の基盤学会の同時承認を得て日本語と英語で公開された。

    その後,いくつかの皮膚筋炎特異的自己抗体が保険収載されて臨床の現場で有力なツールとして用いられ,抗ARS抗体症候群〔抗合成酵素(抗体)症候群〕や免疫介在性壊死性ミオパチーなどの新しい疾患概念が広く認められるようになりつつあるほか,新しい治療薬のエビデンスも加わってきている。

    このような研究・診療における進歩は目を見張るものがあり,ガイドラインも新しい情報を盛り込んで改訂する必要性が高まってきたため,今回の「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン」1)では,より包括的な「診療ガイドライン」としてリニューアルされた。なお,更なる改訂作業が現在進行中であるが,少しでも早く臨床の現場に届ける必要があると考えたため,この2020年版を「暫定版」として先んじて公開することとした。

    全体の構成として,診断のための総論,従来の23個のCQの推奨・解説を改訂したもの,新規にシステマティックレビューを行った4個のCQ,という3つのパートからなっている。本ガイドラインは,自己免疫疾患研究班のホームページで全文が公開されているので,ぜひご活用いただきたい。

    多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン (2020年暫定版)

    自己免疫疾患研究班のホームページ

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