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手指屈筋腱・伸筋腱断裂[私の治療]

No.5093 (2021年12月04日発行) P.45

河村健二 (奈良県立医科大学玉井進記念四肢外傷センター准教授)

登録日: 2021-12-04

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  • 手指の屈筋腱・伸筋腱断裂には,切創や挫創に伴う開放性断裂と,骨折や変形性手関節症,関節リウマチなどが原因となる皮下断裂がある。腱停止部断裂には深指屈筋腱が末節骨付着部で断裂するラガージャージ損傷,槌指変形の原因となる終止伸筋腱の断裂,ボタン穴変形の原因となる伸筋腱中央索の断裂がある。屈筋腱断裂,伸筋腱断裂ともに断裂部位による国際分類(Zone分類)が存在する。

    ▶診断のポイント

    手指屈筋腱断裂では深指屈筋腱と浅指屈筋腱の両方が断裂すれば,指の自動屈曲は不可能となるが,深指屈筋腱単独の断裂ではPIP関節の自動屈曲は浅指屈筋腱の働きにより可能であるため見逃されやすい。

    手指伸筋腱断裂は断裂部位によって症状が異なる。終止伸筋腱の断裂ではDIP関節が伸展不能となり,伸筋腱中央索の断裂では側索の働きによりPIP関節の伸展障害はすぐには生じないが,時間が経つと側索が掌側にすべり落ちてDIP関節過伸展,PIP関節屈曲のボタン穴変形を生じる。MP関節より中枢での伸筋腱断裂ではMP関節が伸展不能になるが,側索の働きによりDIP関節とPIP関節は伸展可能である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    開放性断裂の場合は速やかに腱縫合術を行うべきであるが,受傷当日の手術が困難な場合には創をよく洗浄して皮膚縫合を行い,数日以内に手術室で腱縫合術を行う計画をたてる1)。外来診察室での腱縫合は麻酔や手術器具が不十分なために,良質な腱縫合を行えないので厳に慎むべきである。

    開放性の手指屈筋腱断裂は指神経や指動脈の損傷を合併することが多く,屈筋腱縫合と同時に神経と動脈を顕微鏡下に修復する準備も必要である。受傷から1カ月以上経過した陳旧例や皮下断裂は腱の端端縫合が困難であるため,腱移植術か腱移行術を計画する。ボタン穴変形に対しては伸筋腱中央索の修復と側索の背側への引き上げを行う。終止伸筋腱の停止部断裂による槌指変形は,新鮮例には装具療法が適応されるが,陳旧例でスワンネック変形をきたすものには終止伸筋腱の再建術を行う。

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