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忘れてはいけない疾患、忘れられない患者さん[プラタナス]

No.5089 (2021年11月06日発行) P.6

常深祐一郎 (埼玉医科大学皮膚科教授)

登録日: 2021-11-06

最終更新日: 2021-11-02

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  • 私が東京大学に勤務中に出会った患者さんである。患者さんは韓国出身で日本在住の方であった。発熱と体幹四肢の浮腫性紅斑で受診された。最初は多形紅斑や結節性紅斑などが疑われたが、病理組織で神経に沿った肉芽腫があり、ハンセン病が鑑別に上がり、国立感染症研究所ハンセン病研究センターの先生方のお力もお借りして、特殊染色やPCR検査でらい菌を検出し、ハンセン病と確定診断した。もともとハンセン病であったところにらい反応を起こしたと判断した。ステロイドと抗菌薬を開始した。振り返って患者さんを診察すると、足に多数の熱傷瘢痕があった。ハンセン病の神経障害によるわけであるが、神経障害を疑わせる所見を見つけていたとしても、ハンセン病は想起できなかったと思われる。

    皮膚スメアの検体採取や処理の方法も教えていただいたし、らい菌の染色には通常のZiehl-Neelsen法よりも変法であるFite法のほうがよいこと、病理組織における泡沫細胞などハンセン病特有の診断技術についても学んだ。患者さんの治療は長期に及び、ハンセン病特有の抗菌療法を経験できた。また、これを縁にハンセン病講座にも参加し、ハンセン病についてさらに理解を深め、ハンセン病の回復者の方とお話しをする機会も得た。ハンセン病の過去の歴史についても恥ずかしながら初めて詳細を知った。この過去は絶対に忘れてはならない事実である。

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