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嚥下障害[私の治療]

No.5089 (2021年11月06日発行) P.45

上羽瑠美 (東京大学医学部附属病院摂食嚥下センター/耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授)

登録日: 2021-11-08

最終更新日: 2021-11-01

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  • 嚥下の5期(認知期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期)が,様々な原因で障害されることにより生じる。原因疾患には,脳血管障害や神経・筋疾患,薬剤性障害などがあり,そのほか摂食障害や精神疾患がある。2019年の厚生労働省人口動態統計では,誤嚥性肺炎は死因の6位となり,近年では加齢に伴う嚥下障害が増えている。

    ▶診断のポイント1)2)

    嚥下障害は原因疾患により治療や対応が異なるため,背景疾患の把握が重要である。

    腫瘍性疾患や炎症性疾患などにより通過障害をきたす器質的嚥下障害と,解剖学的異常はないが食塊の搬送機能に異常がある機能的嚥下障害がある。

    上述した嚥下の各期の障害状況を適切に評価する。嚥下障害の評価では,嚥下障害スクリーニング,嚥下内視鏡検査,嚥下造影検査,高解像度嚥下圧検査,嚥下CTなどの検査を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    嚥下障害の治療のためには,「嚥下の5期」のどこがどのように障害されているかを十分に評価することが重要1)2)である。まず,詳細な問診,精神身体的評価を行い,機能的障害の有無をあらかじめ推測した上で,口腔・咽頭・喉頭の診察をする。問診で食事中のむせや鼻咽腔逆流,痰の増加,食事時間の延長,体重減少,反復する肺炎などがある場合,嚥下障害を疑う。口腔・咽頭・喉頭の診察では,感覚障害の有無や運動機能を評価する嚥下障害のスクリーニング検査として,反復唾液嚥下テスト(30秒間に唾液嚥下が3回以上できるかどうか)や水飲みテスト,フードテストを行うとよい。問診・診察の後,以下の嚥下機能検査を行う。

    嚥下内視鏡検査:早期咽頭流入,嚥下反射惹起,咽頭残留,喉頭流入,誤嚥の有無を評価する。簡易的で被ばくがないという利点がある一方,準備期や口腔期が評価できず,水分などでの挙上期型誤嚥が十分評価できない。

    嚥下造影検査:食塊の咀嚼や移動と舌・軟口蓋・咽喉頭の動きの評価が可能。準備期,口腔期,咽頭期,食道期を評価できる。誤嚥の可能性がある患者に対しては,硫酸バリウムより非イオン性ヨード系造影剤を用いるほうが安全。

    嚥下圧検査:嚥下時に発生する嚥下関連筋群の収縮圧力を,上咽頭(軟口蓋)から食道まで部位別に連続して,1度の嚥下の動作の中で同時に測定することが可能。嚥下時の鼻咽腔閉鎖機能や,嚥下時の食道入口部開大の評価に有効。

    嚥下CT検査:嚥下時にCTで数秒程度撮影し,嚥下時の咽頭・喉頭の動きや構造を三次元で確認する検査。全体的な嚥下動態の立体的な評価ができ,嚥下時の声門閉鎖状況を確認できる。

    全身状態および嚥下機能を評価したら,嚥下の各期の障害状況に応じた治療方法を検討する。治療には,口腔ケア,摂食環境調整,食事指導,嚥下訓練,手術治療などがある。

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