株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【他科への手紙】眼科→内科・脳神経外科

No.4815 (2016年08月06日発行) P.45

飯島裕幸 (山梨大学大学院総合研究部 眼科学教授)

登録日: 2016-11-16

最終更新日: 2021-01-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 内科の先生方は、多くの薬の禁忌疾患として緑内障が記載されていることを煩わしく思われているのではないでしょうか。緑内障が禁忌とされている薬のほとんどは抗コリン作用薬ですが、緑内障患者がこれら薬剤を使用しても、問題になることはほとんどないというのが事実です。

    抗コリン作用薬は、副交感神経支配である瞳孔括約筋を麻痺させて散瞳します。緑内障患者のうち、狭隅角眼と呼ばれることもある前房深度の浅い原発閉塞隅角緑内障眼では、角膜と虹彩の距離が近いために、散瞳すると急性で高度の眼圧上昇をきたし、緑内障発作と呼ばれる眼痛、頭痛、嘔吐などを起こすことがあります。散瞳によって、後房から前房に流れる房水が瞳孔で通過障害を起こす瞳孔ブロックを生じたり、虹彩根部が隅角をダイレクトに閉塞するプラトー虹彩機序で、隅角が全周性に閉塞するためです。

    しかし、実際は、このような眼の状態で自分が緑内障であることを認識している患者さんは、既に散瞳による眼圧上昇を防止するレーザー虹彩切開術治療を受けているか、あるいは眼内レンズ挿入術を受けています。後者は白内障に対する手術で、厚さ4mmの水晶体を薄い眼内レンズに置き換えることによって、瞳孔ブロックを生じにくくします。また、緑内障患者の多数を占める原発開放隅角緑内障や正常眼圧緑内障の患者さんでは、散瞳しても眼圧上昇することはありません。したがって「自分は緑内障で眼科にかかっている」という緑内障患者に抗コリン作用薬を投与して問題になることは通常ないというのが真実で、眼科医に問い合わせても「抗コリン作用薬の使用は問題ありません」との回答になることが多いのです。

    残り448文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top