株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

腎・尿路・性器結核[私の治療]

No.5085 (2021年10月09日発行) P.45

石川清仁 (藤田医科大学腎泌尿器外科講座病院教授(感染対策室))

登録日: 2021-10-09

最終更新日: 2021-10-06

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 尿路結核とは腎臓,尿管,膀胱で発症する結核症の総称である。肺結核の先行感染後に結核菌が血行性に腎実質へ移行し,乾酪肉芽を形成し,腎結核となる。腎内で組織破壊が進み,結核菌が尿路に播種することで尿管,膀胱結核となる。発症頻度は2019年新規尿路結核登録患者が51例,性器結核が18例で結核総登録患者の0.35%と0.12%にすぎないが,ここ数年横ばいで推移している1)。膀胱癌治療中のBCG感染は0.6%に発症する。

    ▶診断のポイント

    尿路結核に特異的な臨床所見はなく,腎結核では発熱など全身症状や側腹部痛の頻度は低く,腎内に病変が限局している間は尿沈渣異常以外の所見に乏しい。2008年の海外文献では,尿路性器結核にみられる症状と頻度は,蓄尿症状(50.5%),血尿(35.6%),腰痛(34.4%),全身症状(21.9%),無症状(6.4%),また片側の無機能腎(26.9%),腎不全(7.4%),萎縮膀胱(8.6%),精巣上体腫瘤(48.9%)という報告がある2)

    画像診断では,腎の石灰化,腎盂腎杯の虫食い像,拡張変形,腎盂腎杯移行部狭窄,尿管狭窄などの特徴的所見があり,腎盂や融合した空洞内に膿が充満し,さらに膿出・石灰化して漆喰腎となる。腎結核が腎外に溢流すると腸腰筋などに直接進展し,後腹膜に冷膿瘍をきたす。膀胱鏡所見は定型的病変として周囲淡紅色の粟粒大円形結節や辺縁が深くえぐれた潰瘍性病変が観察されることもあるが,発赤,粘膜浮腫,膀胱壁肥厚などの非定型的病変や無症状のことも多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    結核の主たる治療は化学療法である。腎癌疑いで腎摘後に腎結核と判明し,その後の精査で残存する結核性病変が確認されない場合でも,結核の自然史を考慮すれば通常の化学療法を行うべきである。さらに,抗菌化学療法の基本は「感受性のある抗結核薬を必ず複数同時に併用することで薬剤耐性を誘導することなく完遂する」ことにある。

    なお,治療期間は尿路結核でも通常の肺結核同様とされ,腎臓に結核病巣があるという理由で延長する必要はない。化学療法を延長しても壊死物質の吸収が促進されるというエビデンスはない。

    残り1,250文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top