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口腔内細菌が関わる脳卒中の特徴や機序は?

No.5085 (2021年10月09日発行) P.50

上村昌寛 (新潟大学医歯学総合病院脳神経内科)

齊藤 聡 (国立循環器病研究センター脳神経内科)

登録日: 2021-10-06

最終更新日: 2021-10-05

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  • 細菌感染症と複数の神経疾患が関連していることは以前より知られていましたが,近年,口腔内細菌と脳卒中との関連が注目されています。脳卒中に関連する細菌種や脳卒中の臨床的特徴などについて,国立循環器病研究センター・齊藤 聡先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    上村昌寛 新潟大学医歯学総合病院脳神経内科


    【回答】

    【Cnm陽性Streptococus mutansと脳微小出血との関連が複数の研究から示されている】

    近年マイクロバイオームとヒトの疾患が,従来の我々の想像以上に密接な関係にあることが明らかになりました。体内に存在する常在細菌の数は数十兆個で,これらの細菌が有する遺伝子の数は百万個を超えると考えられています。ヒトが有するゲノム遺伝子数は数万個と言われているため,人体には我々固有の遺伝子をはるかに上回る量の細菌固有の遺伝子が存在することになります。その中でも口腔は,消化管と並び,最も多くの細菌種が生息する器官であり,約700種類の細菌が存在します。

    口腔内の様々な細菌と脳卒中との関連が既に示されていますが,近年,主要な齲蝕原性細菌のひとつであるStreptococcus mutansと脳血管障害に関する知見が相次いで示されました。S. mutansは硬組織(歯)に結合し,齲蝕(虫歯)の原因となりますが,通常軟組織には結合できません。しかし,Cnm蛋白を発現するS. mutansは,血管中膜の基底膜を構成するラミニンや4型コラーゲンへの結合能を有するという点が特徴的です。抜歯等の歯科処置は無論,ブラッシングやフロスの使用でも口腔内細菌は容易に血液中に侵入し,菌血症の原因となります。このcnm遺伝子保有株(Cnm陽性S. mutans)が血液中に侵入すると,脳小血管の基底膜と結合し,炎症を惹起し,血液脳関門の破綻や脳出血を生じると考えられています。

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