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胃MALTリンパ腫/消化管悪性リンパ腫[私の治療]

No.5077 (2021年08月14日発行) P.40

岩坪太郎 (大阪医科大学第2内科(消化器内科))

竹内利寿 (大阪医科大学第2内科(消化器内科)准教授)

樋口和秀 (大阪医科大学第2内科(消化器内科)教授)

登録日: 2021-08-11

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  • 消化管原発リンパ腫は消化管悪性腫瘍の中で1~8%と稀であるが,節外性リンパ腫の30~40%を占める重要な疾患である。組織型はMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫とびまん性大型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)が多く,近年は十二指腸・小腸の濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)の頻度が増加している。

    ▶診断のポイント

    悪性リンパ腫の確定診断には,生検による病理組織診断が必須である。組織診断困難例では,フローサイトメトリー,染色体分析,遺伝子解析,in situ hybridizationなどを行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療方針は,病変の範囲,組織型や臨床病期によって異なる。悪性リンパ腫の病期分類にはAnn-Arbor分類が用いられるが,消化管原発の悪性リンパ腫は節外病変が主体となるためLugano国際会議分類に準じて診断を行う。胃MALTリンパ腫の約90%はH. pylori感染による慢性胃炎を基盤として発症し,除菌治療により60~90%の例でリンパ腫の完全寛解(complete remission:CR)が得られる。

    胃MALTリンパ腫のH. pylori陽性に対する基本は除菌治療である。一部のH. pylori陰性例にはH. heilmannii感染が原因とされるものが含まれており,通常のピロリ感染診断法では陽性にならない。これらの症例にはH. pylori除菌療法と同じ治療法が有効である可能性が示唆されている。現行のガイドラインにもある通り,H. pylori陰性限局期の症例には放射線療法が推奨されているが,筆者らは患者への治療負担を考慮してH. pylori陰性例にも除菌治療を先行させることを提案する。また,除菌後寛解までに長時間を要する症例もあるため,リンパ腫が残存していても症状がなければ経過観察を行う。t(11;18)/API2-MALT1を有する症例は除菌療法に抵抗性のため,除菌以外の治療を考慮する。リンパ腫の残存が認められる場合には,MALTリンパ腫の残存の推移やDLBCLへの進展の有無を確認するため,繰り返し生検を実施することが重要である。胃原発以外の節外臓器に発生したMALTリンパ腫の至適治療方針は確立されていない。進行期に対しては,FLの治療方針に準じて,リツキシマブ±化学療法もしくは慎重な経過観察が推奨される。

    胃原発DLBCLに対する治療は化学療法が外科治療を含む治療法に比較して治療関連死が少なく,全生存期間で優れていることが示されている。また,化学療法に引き続いて放射線療法を行う胃温存療法では良好な生存期間に加え胃穿孔・消化管出血など重篤な有害事象の頻度が低いことが報告されており,現在の標準治療となっている。Lugano国際会議分類でⅡ2期以上が該当する進行期胃DLBCLに対しては,他臓器の進行期DLBCLと同様にR-CHOP療法6~8コースが推奨される。また腸管(小腸・大腸)原発DLBCLに対する至適治療方針は確立されていない。治療経過中に穿孔をきたした症例では予後が悪いことから,診断と治療を兼ねて外科的切除を行い,続いて化学療法が行われることが多い。

    消化管原発FLは十二指腸に多く,小腸にも病変が存在することが多い。FLは節性の病変がほとんどであるが,十二指腸FLは節性FLのvariantであり,ほとんどが十二指腸に限局する。無症状で臨床病期がLugano国際会議分類Ⅰ期であることが多く,積極的な治療を行うべきか,無治療経過観察(watchful waiting)とするべきか,統一された見解はない。節性FLに準じて治療方針を決定しているのが現状であるが,消化管原発の場合は放射線照射部位の固定が困難であることや,小腸に多発している場合があることから放射線療法は行われないことが多い。基本的にはslow growingな低悪性度悪性リンパ腫であることから,限局期の場合にはwatchful waitingが選択されることが多い。進行期の症例やDLBCLへの形質転化を認める症例は積極的に治療を行う。治療する場合はR-CHOP療法が推奨される。

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