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扁桃炎[私の治療]

No.5076 (2021年08月07日発行) P.39

原 浩貴 (川崎医科大学耳鼻咽喉科学教室主任教授)

登録日: 2021-08-09

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  • 急性扁桃炎は日常生活上,よく遭遇する疾患であり,ウイルスや細菌などの感染によって起こる。口蓋扁桃の炎症が強い場合には「急性扁桃炎」と呼ぶが,実臨床では炎症は扁桃のみでなく咽頭と扁桃の両方に生じていることが多いため,「急性咽頭・扁桃炎」と呼ばれることが多い。反復性扁桃炎や扁桃病巣感染症などの慢性扁桃炎では,口蓋扁桃摘出術の適応がある。

    ▶診断のポイント

    咽頭痛,発熱を主訴に受診した患者に対しては,まず詳細な問診,扁桃および咽頭の局所所見から感冒,インフルエンザを除外する。ついで局所を詳細に観察し,軟口蓋の点状出血,咽頭粘膜のびらん,アフタ性口内炎,歯肉炎,口唇炎などの多彩な粘膜病変を認めた場合には,ウイルス性感染を疑う。偽膜性咽頭・扁桃炎の様相を呈する場合には,細菌性のほか,青年では伝染性単核球症,成人では単純ヘルペス性咽頭・扁桃炎の可能性を考え,血液検査を行う。これらに当てはまらない場合には,急性咽頭・扁桃炎スコアリングシステム1)に基づいた急性咽頭・扁桃炎の重症度分類を行うとともに,溶連菌感染症の有無の判別を行い,抗菌薬治療を考える。

    扁桃病巣感染症や,1年に4回以上,2年間に5~6回以上の急性扁桃炎を繰り返す反復性扁桃炎の場合,手術適応の判断が必要となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性咽頭・扁桃炎では上述のスコアリングシステムに基づいて重症度を判定し,重症度別の抗菌薬治療を考えている。スコアリングは,症状スコア3項目と局所所見(咽頭・扁桃スコア)3項目の6項目からなり,合計点数から定量的に判定する(表)。


    またA群溶血性連鎖球菌(GAS)の診断には迅速抗原検査のほか,Centorの基準またはその基準に年齢補正を追加したMclsaacの基準も参考になる。

    【軽症例(スコア1~3)】

    原則として,抗菌薬を投与せずに,非ステロイド性抗炎症薬による対症療法や,咽頭処置,ネブライザー吸入,アズレンスルホン酸ナトリウムによる含嗽などの局所療法を行う。ただし,GAS陽性例は重症化しやすく,治癒も遷延化しやすいこと,また急性腎炎やリウマチ熱などの二次感染を引き起こす可能性があるため,中等症例に準じて治療を行う。

    【中等症例(スコア4~8)】

    アモキシシリン,セフジトレン ピボキシルやセフカペン ピボキシルなどのセフェム系抗菌薬を経口投与する。咽頭痛,嚥下痛が強い場合は細粒などの剤形の薬剤を処方するとよい。

    【重症例(スコア9~12)】

    セフジトレン ピボキシルやセフカペン ピボキシルなどのセフェム系抗菌薬,ガレノキサシン,レボフロキサシンなどのニューキノロン系抗菌薬が適応である。また,頸部リンパ節腫脹を伴う症例や脱水などがみられる症例では,半減期の長いセフトリアキソンなどを用いた外来での抗菌薬静注治療や,入院での抗菌薬静注治療も考慮する。

    慢性扁桃炎では,IgA腎症や掌蹠膿疱症などの扁桃病巣感染症や,1年間に4回以上,2年間に5~6回以上の急性扁桃炎を繰り返す反復性扁桃炎の場合,両側口蓋扁桃摘出術の手術適応がある。また,慢性単純性扁桃炎では,喫煙や飲酒,就労環境が原因となっていることがあり,その場合は生活指導が必要となる。

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