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アレルギー性結膜疾患[私の治療]

No.5070 (2021年06月26日発行) P.45

海老原伸行 (順天堂大学医学部附属浦安病院眼科教授)

登録日: 2021-06-28

最終更新日: 2021-06-23

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  • アレルギー性結膜疾患とは結膜を病変の主座とし,I型・Ⅳ型アレルギー反応が関与し,かつ何らかの自他覚症状を持つ疾患の総称である。上下眼瞼結膜に巨大乳頭や,角膜輪部結膜に腫脹・隆起・浮腫・トランタス斑などを認める増殖性アレルギー性結膜疾患である春季カタル・巨大乳頭性結膜炎と,それらを認めない非増殖性の季節性アレルギー性結膜炎・通年性アレルギー性結膜炎・アトピー性角結膜炎に分類することができる。

    Ⅰ.春季カタル

    上眼瞼結膜に巨大乳頭を認める眼瞼型,角膜輪部結膜の充血・肥厚・浮腫・トランタス斑を認める眼球型,その両方を認める混合型に分類することができる。年少者に多く,4歳くらいより発症し9~10歳にピークを認め,思春期に向かい寛解していく。

    ▶診断のポイント

    他のアレルギー性疾患を合併することは少なく,涙液中のIgE値は高値を示すが,血中IgE値は軽度上昇にとどまることが多い。自覚症状はかゆみ・充血・粘性眼脂・流涙・開瞼不全を認め,重症化し角膜障害を伴うと異物感・疼痛・羞明・視力不全を訴える。上眼瞼結膜に石垣状の巨大乳頭,角膜輪部結膜の腫脹・隆起・トランタス斑を認め,落屑様角膜上皮障害,遷延性角膜上皮欠損,シールド潰瘍,角膜プラークを認める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    免疫抑制薬点眼液(0.1%シクロスポリン点眼液,0.1%タクロリムス点眼液)を基盤点眼液とし,ステロイド点眼液,抗アレルギー薬点眼液を併用する。ステロイド点眼液を小児に使用するときには眼圧上昇を認めることが多く,注意が必要である。

    ▶治療の実際

    【寛解維持】

    一手目 :パピロック®ミニ点眼液0.1%(シクロスポリン)1回1滴2~3日に1回(点眼)のプロアクティブ療法(適用外処方),アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼)併用

    【軽症】

    一手目 :パピロック®ミニ点眼液0.1%(シクロスポリン)1回1滴1日2回(点眼),アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼)併用

    二手目 :〈処方変更〉タリムス®点眼液0.1%(タクロリムス)1回1滴1日2回(点眼),アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼)併用

    【中等症】

    一手目 :タリムス®点眼液0.1%(タクロリムス)1回1滴1日2回(点眼),アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼)併用

    【重症】

    一手目 :タリムス®点眼液0.1%(タクロリムス)1回1滴1日2回(点眼),アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼)併用

    二手目 :〈一手目に追加〉リンデロン®点眼液0.1%(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム)1回1滴1日4回(点眼)

    Ⅱ.季節性・通年性アレルギー性結膜炎

    わが国において最も罹患数の多い季節性アレルギー性結膜炎は,スギによる花粉性結膜炎である。国民の約40%程度が罹患している。季節性の抗原により症状が季節性に発症する季節性アレルギー性結膜炎と,通年性抗原または季節性抗原の重複によって1年中症状を認める通年性アレルギー性結膜炎に分類することができる。

    ▶診断のポイント

    既往歴,自覚症状(かゆみ・充血・眼脂・異物感・流涙),他覚症状(充血・浮腫・濾胞・乳頭)で80%以上診断が可能であるが,血液中抗原特異的IgE検査や涙液中総IgE定性検査などが補助診断となる。確定診断には結膜擦過物よりの好酸球検出が必要であるが,季節性アレルギー性結膜炎での陽性率は60%程度と低い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    患者のQOLを最も低下させる症状はかゆみなので,かゆみを軽減するために抗アレルギー薬点眼液を処方する。現在本国内で使用できる抗アレルギー薬点眼液は約10種類あるが,かゆみの軽減にはヒスタミンH1受容体拮抗薬点眼液のほうが肥満細胞メディエーター遊離抑制薬点眼液より即効性がある。作用点の異なる上記2種点眼液の併用も効果的である。症状の強いときは,低力価ステロイド点眼液を併用するが,眼圧上昇(特に小児)には注意を要する。毎年花粉性結膜炎に罹患し,症状が強く,かつその年の花粉飛散量が多いと予想されるときには,花粉飛散予想日の2週間程度前より点眼を開始する,抗アレルギー薬点眼液の初期療法が効果的である。しかし,無症状のうちより点眼を始めるので,十分なインフォームドコンセントが必要である。

    近年,わが国においてもスギ花粉症に対する舌下免疫療法が普及しはじめている。舌下免疫療法は眼症状にも効果がある。将来,抗アレルギー薬点眼液の使用期間の短縮や使用量の削減が期待される。セルフケア,予防も大切であり,結膜囊に飛入した花粉のwash outのための人工涙液・結膜洗浄点眼液や,花粉防御メガネ,抗原回避,洗眼,洗顔,花粉飛散数情報の利用などが推奨される。

    ▶治療の実際

    一手目 :アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼),またはパタノール®点眼液0.1%(オロパタジン)1回1滴1日4回(点眼)

    二手目 :〈処方変更〉アレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼),フルメトロン®点眼液0.1%(フルオロメトロン)1回1滴1日4回(点眼)併用
    またはアレジオン®LX点眼液0.1%(エピナスチン)1回1滴1日2回(点眼),リザベン®点眼液0.5%(トラニラスト)1回1滴1日4回(点眼)併用

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